歌舞伎界初の2人体制へ 25年5月に尾上菊五郎襲名、菊五郎はあっさり「お前、継げよ」

歌舞伎俳優の尾上菊五郎、尾上菊之助、尾上丑之助が27日、都内で行われた『八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露会見』に出席した。菊之助が八代目尾上菊五郎に、菊之助の長男・丑之助が六代目菊之助を名乗り、2025年5月の歌舞伎座『五月大歌舞伎』から約1年かけて襲名披露公演を行う。当代の菊五郎はこのまま七代目菊五郎を名乗り、今後、音羽屋では七代目菊五郎、八代目菊五郎と親子で菊五郎を名乗り活動していく。

『八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露会見』を実施【写真:ENCOUNT編集部】
『八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露会見』を実施【写真:ENCOUNT編集部】

「菊五郎同士が舞台でバッティングするかもしれません」

 歌舞伎俳優の尾上菊五郎、尾上菊之助、尾上丑之助が27日、都内で行われた『八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露会見』に出席した。菊之助が八代目尾上菊五郎に、菊之助の長男・丑之助が六代目菊之助を名乗り、2025年5月の歌舞伎座『五月大歌舞伎』から約1年かけて襲名披露公演を行う。当代の菊五郎はこのまま七代目菊五郎を名乗り、今後、音羽屋では七代目菊五郎、八代目菊五郎と親子で菊五郎を名乗り活動していく。

 菊五郎は、「『八代目ができたのに、七代目はどうするんだ』という言葉もあると思いますが、わたくしも52年間名乗らせていただいた名前を今さら変える気はなくて、七代目菊五郎のまま歌舞伎人生の幕を閉じたいと思います」と説明。「たまには菊五郎同士が舞台でバッティングするかもしれませんが、その時は七代目、八代目と呼んでいただきたい」と会場を笑わせ、「八代目菊五郎には、わたくしができなかった時代物、世話物、新作とどんどん挑戦してもらって、菊五郎の名前をもっともっと大きくしていってもらいたい」と期待した。

 襲名の話は、菊之助が『木下グループpresents新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』の公演を終え、報告に行った23年4月に、菊五郎から持ち掛けたという。22年から脊柱管狭窄症と座骨神経痛をわずらっている菊五郎は、「舞台も休み休みやっていたので、菊五郎という名前はいつも元気で働いていないといけない。息子に頑張ってもらおうと。わたくしも、病気に負けないで一生懸命治そうと思っております」と、きっかけを語った。

 菊五郎は「1年くらい前ですかね、『お前、継げよ』って。そういう感じでサバサバした感じでした」と襲名を伝えた当時の様子を語った。自身が七代目菊五郎を襲名する際は、中村歌右衛門や十七代目中村勘三郎など数々の大御所俳優や経済界の重鎮が並ぶ前で相談があったといい、「父が『この度、せがれの菊之助に菊五郎を継がせようと思いますが、みなさん、どう思われますか』と聞いて、みなさんが拍手をしてくださって、それで菊五郎を継がせていただくことになりました。本当に“重い儀式”でございましたが、最近はこういうふうに、『お前、継げよ』です。ちょっと軽すぎたかもしれません」と、振り返った。

 松竹によると、同じ名跡が並ぶことは近代の歌舞伎界では初。菊之助は「父が七代目のままでいるということは、歌舞伎界でもなかったことだと思いますので、これはどういう風に受けとめればいいのか戸惑いました」と明かした。「菊五郎以上の名前は音羽屋にはありませんし、父にぴったりの名前。父が健在な限りは、自分は菊之助を名乗っていこうと思っていました。でも父が『八代目』と言ってくれたので、その言葉に従います。『菊五郎の名前を絶やさない』という父の思いが強かった。七代目、八代目が並び立つ舞台ができれば」と語った。

 52年間名乗り続けている名前について菊五郎は、「だんだん自分のものになってきちゃうんですよね。これからあと何年で名前が変わるというのが寂しくて。七代目菊五郎で幕をしめたいなぁと思い、他の名前を継ぐことは考えませんでした」と、強い思いを明かした。これから菊五郎を名乗る菊之助については、「今のままどんどん成長していただければ。年とともにいろんなものがついてきますから。それがまた面白い」と背中を押した。

 菊之助は音羽屋の特徴について、「お客さまを大切にしている。お客さまにどうしたら喜んでいただけるかを、歴代の菊五郎は考えてきた」と説明。「特に三代目菊五郎(1784年~1849年)は、鶴屋南北と組んで次々と新作を生み出しました。五代目菊五郎(1844年~1903年)は、お家の芸である『新古演劇十種』を制定しました。五代目菊五郎から時代物、世話物を得意とした家になりまして、六代目菊五郎はリアルな芝居を追求し、舞踊の名人でもありました。その流れを父が引き継ぎ、とにかくお客様の目線に立って、お客さまに楽しんでいただける演劇を作ることを大切にしています」と語った。また「わたくしが菊五郎になった暁には、なかなか(公演で)かからない『新古演劇十種』を復活していきたい。復活した上で、次の菊五郎につなげていければ、というのがひとつの目標です」と夢を語った。

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