市原隼人が映画『おいしい給食』で見せた役者魂 10kg減量「じゃないと動けない」、最もハードな意外なシーンとは?

俳優の市原隼人(37)が主演する劇場用映画第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』(綾部真弥監督)が5月24日公開される。2019年にドラマから始まった人気シリーズで、80年代の中学校を舞台に、給食を食べることに情熱を注ぐ中学教師、甘利田幸男を演じる。市原が作品への熱い思いを語った。

インタビューに応じた市原隼人【写真:冨田味我】
インタビューに応じた市原隼人【写真:冨田味我】

『おいしい給食 Road to イカメシ』は「絶対に面白くなると確信しました」

 俳優の市原隼人(37)が主演する劇場用映画第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』(綾部真弥監督)が5月24日公開される。2019年にドラマから始まった人気シリーズで、80年代の中学校を舞台に、給食を食べることに情熱を注ぐ中学教師、甘利田幸男を演じる。市原が作品への熱い思いを語った。(取材・文=平辻哲也)

『―Road to イカメシ』は昨年10月に放送がスタートしたドラマの続編。前2作は架空の町を舞台にしてきたが、シーズン3では実在の地名、函館が登場。1989年、函館に赴任することになった甘利田が、自由奔放な発想で独自の給食道を歩む生徒、粒来(つぶらい)ケン(田澤泰粋)と食のバトルを繰り広げる。

「劇場版3弾ができたのは、熱望していただいた作品ファンのみなさまのお気持ちの賜物。そのお気持ちに恩返しをしたいと思いました。本当に役者冥利に尽きます。シリーズにおいて初めて函館という地名が出てきて、舞台も冬になり、『私は極端に寒がりだった』というモノローグから始まる脚本を読んで、これは絶対に面白くなると確信しました」

 そんな中悩んだのは、第3弾を作る意義だった。

「今回、甘利田はどう変わっていくべきなのか、と悩んだのですが、たどり着いたのは、変わらないことこそが甘利田の良さだということ。どんなに時代が変わっても、変わらず人が潜在的に求める生きる本質を、甘利田を通して見出すべきだと思いました。小さなお子様からご年配の方までがしっかりと楽しめる王道のエンターテイメントを創り、唯一無二の世界観の中で社会への力強いメッセージを込めたいと思いました」

 甘利田は生徒以上に給食を愛する中学教師。食事前には“給食ダンス”を踊り、自分よりおいしい食べ方をする生徒には子ども以上に嫉妬する。給食シーンでの演技、心の叫びもパワーアップ。市原のコメディアンぶりが面白い。

「僕は、人を笑わせたいのではなく、人に笑われたいと思い演じていましたが、キャパオーバーです。給食を食べながら常に血管がもうブチ切れるんじゃないかということを何度も繰り返しながら、毎日ヘトヘトでした。ナレ―ションの動きに合わせて、ここでこう芝居して、リアクションを取って、と、全体を事前に構築して現場に入らなければならないので、撮影中は眠れないです」

 甘利田役は毎回、気力、体力を使うそうで、今回も10キロ体重を落として、撮影に臨んだ。

「この作品、甘利田幸男だからです。たくさん動かなくてはいけないので、細い体じゃないと動けないんです。『おいしい給食』の後は、また別の作品であえて体を大きくしていました。今は映画の取材もあるので、5キロ落としたんですが、役者って、面倒くさい職業ですよね(笑)。大変だなと思いながらも、落とすことで動ける量、精神状態も変わってくる。体作りは基本であり、体が資本だと思っています」

 一番ハードなのは、給食シーンのまとめ撮りだ。

「少なくとも3セット分くらい食べながら、いろいろな食べ方や動きを何回も撮影します。尺の関係で使われていないものも多いですが(笑)。それに関しては全く文句ないです。シーズン1の時に綾部監督に使われなくてもいいから挑戦させていただきたい、と伝えました。『おいしい給食』は原作もないオリジナルですし、スタッフ、出演者が一丸となって現場を生ものとして新たなものを生み出す可能性に満ちあふれている。だから、精一杯、その可能性を追求しましょう、と話しましたので」

 撮影は昨年3~5月。生徒役の子役とは密にコミュニケーションを取って撮影に臨んだ。

「貴重な青春思春期の2か月をいただくわけですからね。オーディションで選ばれた生徒たちには『本気で泣いて、本気で笑って、本気で悔しがって、物事の根源を大切にし続けることで見えてくるものがあるので、それを考えながら過ごしてください』『この作品は誰に何のために何を伝えるべきなのかを考えながら、自分の存在意義を見出してください』という話をさせていただきました」

生徒たちとのやり取りに「僕も涙が止まりませんでした」

 生徒役の俳優はシリアスなシーンでは息が止まるくらいの緊張感を見せるが、カットがかかると、ペンギンの群れのようにモニター前に集まり、笑顔で話し合っているという。函館ロケでは地元の子どもも参加し、中には「将来は映画、ドラマを制作する仕事に携わりたいです」と話す子もいた。

「子どもたちの笑顔を見るのが大好きなんです。全編撮り終わった時に、スタッフの方が作ってくれた卒業証書を全員に渡すんです。僕が『本当に頑張ってくれて、ありがとうございます』と言うと、子どもたちも泣いていて。作品に懸命に向き合ってくれていたんだ、いい絆で結ばれたんだな、と思うと、僕も涙が止まりませんでした」

 函館ロケでは、撮影前に生徒役の俳優と函館山に登ったことも印象に残っている。

「肩書き、役者だということも忘れて、みんなでキャッキャ笑いながら、記念撮影をしている時間が愛おしくて。こんなに子供たちを笑顔にさせてくれる函館って素晴らしいな、というのが第一印象でした」

 ただ、自身は楽しむ時間はなかったそうで、「函館ロケが全て終わって、東京へ戻る移動日に早起きして、朝市で海鮮を食べ、更にまた別のところで海鮮を食べ、ラーメンを食べて、函館のソウルフード『ラッキーピエロ』を食べ、アイスを食べ、短い時間で北海道の食を沢山頂きました。道民性もそうですが、豊かな土地と豊かな食で溢れているので、改めて日本の宝だと感じました」。

『おいしい給食』シリーズの甘利田幸男は当たり役の一つになった。今後もライフワークとして続けていくのか。

「毎回やりきった! という想いで全てを尽くしているので、次のことは考えていません。甘利田のような先生はなかなかいないですね。一見荒々しく、一見傲慢にも見えるんですが、子供たちのことをすごく見ている。昔はご近所や地域全体に育てられたりしていたものが今はそのような付き合いがどんどんなくなり、大事なものを失いかけているんじゃないかと思います。『おいしい給食』は昭和から平成になる1989年を舞台に、いろんな人間物語がたくさん散りばめられていて、人と人が向き合っている人間模様が大好きです。甘利田だけではなく、登場人物全員が主役だと思っています」と熱弁が止まらなかった。

□市原隼人(いちはら・はやと)1987年2月6日、神奈川出身。2001年、『リリイ・シュシュのすべて』で初主演。主な出演作に『偶然にも最悪な少年』 (04年)、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、『太陽は動かない』 (21年)などがある。昨年、『商魂 TRADE WAR』で台湾ドラマに初出演。

次のページへ (2/2) 【写真】市原隼人のインタビュー別カット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください