【虎に翼】仲野太賀「思い出すだけでつらい」 優三と寅子に沈痛「そんな経験なかった」
俳優の仲野太賀が、NHKの連続テレビ小説『虎に翼』(月~土曜午前8時)の取材会に出席し、演じる佐田優三や作品への思い、さらに主演の伊藤沙莉とのコンビネーションなどを語った。作品は、伊藤がヒロイン・佐田(猪爪)寅子を演じ、日本で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性の実話に基づく骨太なストーリーと事件や裁判が解決される爽快感も味わえるリーガルエンターテインメント。
主人公・寅子の夫の佐田優三を熱演
俳優の仲野太賀が、NHKの連続テレビ小説『虎に翼』(月~土曜午前8時)の取材会に出席し、演じる佐田優三や作品への思い、さらに主演の伊藤沙莉とのコンビネーションなどを語った。作品は、伊藤がヒロイン・佐田(猪爪)寅子を演じ、日本で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性の実話に基づく骨太なストーリーと事件や裁判が解決される爽快感も味わえるリーガルエンターテインメント。
仲野が演じる優三は、両親を早くに亡くし、弁護士だった父に憧れ、働きながら高等試験(司法科試験)を目指すが、なかなか合格できない苦労人。猪爪家に書生として下宿していた縁もあって寅子と夫婦に。これまでにも仲野と伊藤は他の作品で夫婦を演じたことがある。朝ドラでのコンビネーションはどうか。
「沙莉ちゃんとは、あうんの呼吸といいますか、打ち合わせをしなくても芝居のしやすい方。僕がどんな表現をしてもすべて受け入れてくれます。とにかくコンビネーションがよく、隣に沙莉ちゃんがいるだけで安心します。沙莉ちゃんだからこそ思い切り飛び込めます。絶大な信頼を置いています」
優三を演じる上で心掛けていることも聞いた。
「優三の持つ柔和で温かい空気感を大事にしたいと思って演じてきました。寅ちゃんは猪突猛進、まっすぐに物事に向かっていく人。優三は対照的に頼りない一面もありますが、彼の中にも太い芯があるように表現できたらいいと考えました」
物語では優三と寅子の幸せに戦争が影を落としていく。
「出征のシーンが近づくにつれて台本を読むと胸が苦しくなりました。家族のいなかった優三が寅ちゃんと結ばれ、本当の家族を手にすることができ、愛する娘もできます。法律の道には進めなかったけれど、彼が心の底から手に入れたかったものは、家族だったんだろうなと思いました。そんな中、戦況が悪化していくので、台本を読み進めるのがつらかったですね」
ここで朝ドラ自体の話も尋ねてみた。仲野は2013年の『あまちゃん』以来の朝ドラ。現場で朝ドラらしさを実感したことはあるだろうか。
「一つの役にじっくり向き合えて自分の中で役が育っていく感覚は朝ドラならでは。現場の空気もとても良く、1年以上も一緒に作品を作る仲間なのでスタッフ、キャストも温かいです。スタッフには、このヒロインを絶対に支えていくという懐の深さを感じますし、沙莉ちゃんを中心に、このドラマ、このチームで朝を盛り上げるぞ、という空気を感じます」
伊藤の座長ぶりも聞いてみた。
「現場での佇まいは尊敬の一言。素晴らしいです。沙莉ちゃんがいるから現場が明るくなります。朝ドラの現場は過酷だと思いますが、沙莉ちゃんはキャリアがあるので、地に足がつきまくっている頼れる主役。言う事なしです。沙莉ちゃんは思ったことを素直に口に出しますが、全く嫌な気がしません。それが、率直で素直な言葉なのでいろんな問題をスムーズに解決し、風通しのいい現場を作ってくれています。真ん中に沙莉ちゃんがいると、我々もリラックスできますし、それは座長が作りだす空気なんだろうなと。みんな沙莉ちゃんのことが大好きだと思います」
好きなシーンも尋ねた。
「出征前、優三と寅ちゃんの河原でのデートは印象深いです。これまでの寅ちゃんは、社会的な正しさに自分の判断基準を置いて、苦しめられていて。自分の弁護した相手は本当に弁護すべきだったのか? 社会的地位のために優三さんと結婚してもらったことが正しかったのか? と、そういうことに対して、自分を厳しく責めたてるんです。でも、優三は、“社会的な正しさじゃなくて、寅ちゃんの心の正しさを大事にしてほしい”と、“誰かのために頑張る人だからこそ、自分の人生も大事にしてほしい”という思いを伝えるんです。優三の主語はどんな時でも寅ちゃんで、そんな優三の思いが好きですし、優しさが伝わるシーンになればいいなと、心を込めて演じました」
優三ロスの声が聞こえそうな気がする。
「思い出すだけでつらいです。そのシーンは悲しすぎて台本を読み進められなかったほど。今までそんな経験はなかったので、素晴らしい脚本に出会えて本当によかったです」
最後は視聴者にメッセージ。
「この時代、女性が社会に出て活躍することがこんなにも難しく、法律としても制限が多かったことに衝撃を受けました。そんな女性たちの言葉にできないため息のような言葉が、この脚本にはしっかとり落とし込んであるので、痛快さもあります。法律の世界の物語というとかたく聞こえますが、登場人物のキャラクターが個性豊かでユーモアにあふれています。いろんな思いを背負った寅ちゃんの生き様は見ている人の胸に響くはず。頑張る寅ちゃんの姿を最後まで見届けてほしいです」