専門家が警鐘 台風後に大発生が予想されるカビに注意!…対策方法とは?
気管支喘息も早めに対処するかしないかで、その後のQOLに大きく影響する
「気管支喘息は一歩手前の咳喘息という状態なら、吸入ステロイドを服用すれば治ります。でも、風邪と勘違いして放置すると、進行して特有のゼーゼー、ヒューヒューという呼吸になって息苦しくなります。吸入ステロイドでコントロールできるので死に至ることは少ないですが、苦しいですし完治しにくく、吸入ステロイドと一生付き合わなければならなくなります」
咳喘息も夏型過敏性肺炎も風邪ではないことを見極め、早めに対処することが大切。ポイントは2週間以上、風邪に似た症状が続くかどうか、だ。風邪ならとくに治療をしなくても、安静にしていれば2週間以内で治る。したがって、2週間たっても風邪に似た症状がおさまらなければ、風邪ではなく、夏型過敏性肺炎や咳喘息の可能性がある。呼吸器専門医を受診したい。
カビによる気管支喘息も夏型過敏性肺炎も、かかる危険が高いのは在宅時間が長く、カビを大量に吸い込みやすい主婦や高齢者、乳幼児、アレルギー体質の人など。
「とくに、免疫力の低下している糖尿病の高齢者や抗がん剤治療中の高齢者は、重症化して命を落とす危険が高くなるので要注意です」
カビが原因の夏型過敏性肺炎や気管支喘息にかからないための根本的な解決策は、カビを取り除くこと。少しのカビなら換気・清掃・防かび剤の使用で取り除けるが、雨漏りや床下浸水など被害の大きかった家屋は、リフォームや建て替えも視野に入れなければならないという。
「夏型過敏性肺炎と診断して、慢性化を避けるためにリフォームしてください、と患者さんやご家族に説明しても、なかなか理解していただけないことが多いのですが、実際にリフォームや転居で治癒した患者さんを何人も診てきました」
そうは言っても、住み慣れた我が家は離れがたい。経済的な問題もある。
「経済的には大損失ですが、命には代えられません。台風被害に遭わなかった方でも、築20年以上の木造住宅、鉄筋の集合住宅でも築15~20年以上で1~3階の住居はカビが発生しやすいので要注意です。一見、カビが発生しているようには見えなくても、脱衣所、台所のシンクの下、畳の裏やカーペットの裏はカビが潜んでいることが多いので、咳が長引くようでしたらチェックしてみてください」
被災したうえ、リフォームや建て替え、または転居となると二重、三重の苦痛をともなうが、被災前と同じく、被災後も毅然とした状況判断をーー。
□大谷義夫(おおたに・よしお) 1963年、東京生まれ。89年、群馬大学医学部を卒業し東京医科歯科大学第一内科研修医、98年、同助手に。その後、呼吸器内科助手、同病棟医長、同医局長を経て、2009年6月、同兼任睡眠制御学講座准教授に。同年11月、池袋大谷クリニック開院。医療番組などメディア出演、著書多数。