“ゴミ持ち帰りマナー”は日本特有? インバウンドによるゴミ問題、ゴミ箱増設ができない意外な理由

コロナ禍が明けインバウンドによる外国人観光客の訪日が回復、各地でオーバーツーリズムによるゴミ問題が大きな問題となっている。全国屈指の観光地である京都の祇園では先月、路上にゴミが散乱した動画がネット上で拡散。全国版のニュースでも取り上げられるなど大きな反響を呼んだ。ネット上では「そもそもゴミ箱の設置数が少なすぎる」という声も相次いでいるが、ゴミ箱の増設を行うことはできないのだろうか。官民一体となってゴミ問題に取り組む京都市まち美化推進課に実情を聞いた。

全国的に撤去が進んでいる街頭のゴミ箱(写真はイメージ)【写真:写真AC】
全国的に撤去が進んでいる街頭のゴミ箱(写真はイメージ)【写真:写真AC】

外国人のゴミマナーに苦言が集まる一方、「そもそもゴミ箱が少なすぎる」という声も

 コロナ禍が明けインバウンドによる外国人観光客の訪日が回復、各地でオーバーツーリズムによるゴミ問題が大きな問題となっている。全国屈指の観光地である京都の祇園では先月、路上にゴミが散乱した動画がネット上で拡散。全国版のニュースでも取り上げられるなど大きな反響を呼んだ。ネット上では「そもそもゴミ箱の設置数が少なすぎる」という声も相次いでいるが、ゴミ箱の増設を行うことはできないのだろうか。官民一体となってゴミ問題に取り組む京都市まち美化推進課に実情を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

 先月6日、「祇園の惨状」というタイトルで拡散した動画では、明け方の京都・祇園地区の路上にゴミが無惨に放置された様子が収められている。ネット上では、外国人観光客のゴミマナーに苦言を呈する声が多く上がる一方、「昔はもっと街のあちこちにゴミ箱があった気がする」「街頭にゴミ箱が設置されてないのは世界でも日本くらい」「ゴミは持ち帰るって日本だけのマナー。外国人には伝わらない」など、根本的な解決策について議論を呼びかける声も多い。

 京都のゴミ問題をめぐる実情について、京都市まち美化推進課の担当者は「一部の場面で切り取りで、誤った印象が広まってしまっている」と説明する。

「4月に話題となった祇園の動画は朝の7時頃に撮影されたもので、確かに一部でゴミの散乱が見られるのは事実です。しかし、この地区では毎日朝と昼の2回ゴミの回収を行っており、近隣の店舗や事業者にも協力を要請していて、日中は清掃が行き届いた本当にきれいな状態。ゴールデンウイーク(GW)期間中はさらに1日3回の回収を行ない、カラス除けなどの対策や近くのゴミ箱への誘導の掲示を行うなど、さまざまな方法でゴミの散乱防止に努めています」

 まち美化推進課によると、京都全域には300基あまりの街頭ゴミ置きを設置しており、その数は全国の政令指定都市でも最多。西日本では神戸が30基、広島が8基ほどで、多くの都市ではそもそも街頭ゴミ置きを設置しておらず、京都の設置数は群を抜いているという。一方で、平成2000年代後半までは現在の倍以上となる700基ほどの街頭ゴミ置きがあったといい、全国的にも街頭のゴミ箱は撤去が進んでいるのが実情だ。なぜ日本中の街からゴミ箱が姿を消しているのか。

「テロ対策という名目もありますが、ゴミ袋の有料化に伴い、街頭ゴミ置きを設置することで家庭ゴミや事業ゴミが持ち込まれてしまうというケースが相次いだためです。近年ではテイクアウト容器などの食べ歩きのゴミも増えています。すべてのゴミを市で受け入れるのではなく、販売者の側にも責任を負ってもらう必要がある。店舗にもイートインスペースを設けるようお願いしたり、店舗同士による返却の仕組みや、食べ歩き禁止区域を設けるなど、地域によって柔軟に対応を行っており、観光客の方にも多言語対応で観光マナーの啓発に取り組んでいます。ゴミ箱の設置が問題解決の最適解ではなく、慎重に検討する必要がある問題。現時点では街頭ゴミ置きの増設は考えておりません」

 外国人だけではなく、実は日本人のマナー低下にも起因していたゴミ問題。世界的にはなじみの薄い「ゴミは持ち帰る」というマナーは、はたして外国人観光客の理解を得られるだろうか。

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