歌舞伎俳優の坂東玉三郎と落語家で俳優の春風亭小朝が8日、都内で行われた『坂東玉三郎×春風亭小朝　歌舞伎座特別公演』の取材会に登場した。7月25日に歌舞伎座で、『怪談　牡丹燈籠』の『御札はがし』と、小朝の人情噺『越路吹雪物語』を上演する。

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　2人は2023年7月の京都・南座公演『坂東玉三郎　夏のひととき』と、今年1月の大阪・大阪松竹座公演『坂東玉三郎　はるのひととき』で共演。好評を博し、今回は東京・歌舞伎座で一夜限りの公演として3度目の共演が実現する。6年前に、玉三郎のシャンソン公演を見に行った小朝が楽屋を訪れ、「『越路吹雪物語』と（玉三郎の）歌でコラボレーションしたい」と持ちかけ、24年1月の松竹座で共演。さらに今回の歌舞伎座公演につながった。

　玉三郎と小朝は、20代の頃から知っている仲。玉三郎は6歳の頃に歌舞伎俳優・十四代目守田勘彌の部屋子（後に芸養子）となり、小朝は玉三郎の母のもとへ踊りの稽古に通っていたという。小朝は「前座時代に、僕が初めて踊りを習ったのが玉三郎さんのお母さんなんです」と明かし、玉三郎も「20歳前後から、自宅で会ってるんです。（期間は）短かったですが、すごく印象深かったですね。『噺家の方が踊りを踊るんだ。お稽古するんだ』と、感心しました」と振り返った。

　また玉三郎は「芸術の面で僕が非常に印象に残ったのは、（小朝は）江戸の落語というか、お話をされますから、『江戸言葉を流暢に話せる人が身近にいる』というのが印象深いです。わたくしたちが、（歌舞伎の舞台で）世話物をやる時に話さなければいけない言葉を話す方が、そのまま隣にいる」と、小朝の江戸言葉遣いを称賛した。

　小朝も玉三郎について、「芸を“極めた方”なので、僕が踊りのことやお芝居のことをいっぱい質問するんですけど、返ってくる答えがものすごく短い。端的に確信だけ突いている。落語家にそんな人いない（笑）。とても勉強になります」と語った。また、「玉三郎さんがお父様の勘彌さんにずっと言われていたことが、『天狗になるんじゃないよ、うぬぼれるんじゃないよ、慢心するな』という言葉」と明かした。「玉三郎さんが売れて、劇場の廊下を歩いている時に勘彌さんから呼び止められて、『お前、後ろ姿に“うぬぼれ”が出ているぞ』と言われ身が引き締まったと。そういう話を聞くことができるのは、僕にとって、とても勉強になるし刺激になる」と語った。

　最近は食事に一緒にいったといい、小朝は玉三郎について「いっぱいしゃべってくださる」と説明。「2時間半食事をして、そのうち黙っていたのが3分くらい。食べながらしゃべって、食べながらしゃべって。録音にとりたいくらい、いっぱいいろんな話を聞かせてくださって、表に出せない話が8割（笑）。このご縁は、僕にとって人生を変えるご縁」と玉三郎の“おしゃべり好き”を明かした。

　この日も、元宝塚歌劇団の主演男役でシャンソン歌手としても活躍した越路吹雪さんから受けた影響や芝居について語り続けた玉三郎は、「私ね、噺家の前でも8割しゃべってる！　寡黙な歌舞伎俳優です」と記者たちを笑わせた。