「10階以上なら飛んでこないと聞いたのに」 ハト被害に悩まされるタワマン住人の悲鳴
日本各地で問題になっているハトによる被害。「日本鳩対策センター」によると被害はレベル1~4まであり、数字が高くなるにつれてフンや泣き声による被害が大きくなるという。
「10階以上なら鳥は飛んでこない」と聞いたのに…
日本各地で問題になっているハトによる被害。「日本鳩対策センター」によると被害はレベル1~4まであり、数字が高くなるにつれてフンや泣き声による被害が大きくなるという。
・レベル1:鳩休憩=移動中の羽休めにやってくる
・レベル2:鳩待機=安心できる場所と認識し、定住し始める
・レベル3:ねぐら鳩=室外機の裏などに、夕方~夜にかけて訪れ滞在する
・レベル4:巣作り鳩=巣を作り繁殖する
放っておくと、フンがゴキブリやダニの温床になったり、アレルギーを発症する原因になることも。また、フンに含まれた酸で金属が腐食し、危険な状態になってしまうことも考えられるというから、ハトによる害がいかに大きいかは分かっていただけることだろう。
ところでこの「ハト害」、低層~中層マンションのみならず、タワーマンションと呼ばれる高層マンションにおいても「人ごと」ではない。
「ネットで調べた際、『10階以上なら鳥は飛んでこない』って書いてあったので13階の部屋を購入したのですが、毎日必ずというほど窓の外にハトがとまり、困っています。同じマンションの方に相談したところ、たとえ20階であっても来るときは来るそうで……」
そう語るのは、湾岸エリアのタワマンに住む海藤利加さん(仮名・39歳)。3歳になる子どもの気管支が弱いため、海風が吹くタワマンを選択したという。
「ベランダにハトが来たときは、気付いたら追い払うようにしているのですが、その後、はめ殺しの窓の外側にとまっていることもあります。窓の内側から窓を叩くと逃げるのですが、またベランダにとまられてしまうため、イタチごっこみたいになっています。『なんで毎日毎日ハトが来るんだろう?』と思ってしばらく様子を見ていたのですが、住んでいるマンションの緑地の横で、エサを与えている人がいることが分かりました。相手は高齢の男性で、1度見かけた際に注意したのですが、やめる気配はありません。
その男性がマンションの住人だったり、マンションの敷地内で餌付けをしたりしているようであれば管理組合を通じて苦情を言えるのですが、どうやら近隣にお住まいの方らしく、場所も普通の道路上。警察に相談しても『注意することしかできない』と言われてしまいました。どうすればいいか分からず、お手上げ状態です」
その男性がエサを撒く時間を見計らうようにハトが大量に集まり、緑地の歩道までハトのフンで白く汚れた状態になっているという。何か対応はできないものなのだろうか。
ハト除けネットは「美観が損なわれるから」NGのケースも
ハトなど野鳥による被害は、不動産業界では「よく聞く話」なのだと中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さん。業界歴20年以上の経験と知恵をもってしても「野鳥をどうこうすることは、難しい」と語る。
「まず、エサやりをやめてもらったところで、そもそもハトが居ついているようであればそれを追い出すのは容易なことではありません。ハトがとまれないようハト除けや忌避剤、ハト除けネットを張るなどし、徹底的にハトが立ち寄らないよう対策するしかないでしょう。
ただ、タワマンなどの高層マンションはハト除けネットを張る際に危険が伴うため、禁止されている可能性があります。また、ベランダはマンションの共有部分になるため、ネットを付けるのは『バルコニーを無断で改造すること』に当たり、『美観が損なわれるから』とNGを出される可能性もあります。いずれにせよ、マンションの管理組合や管理会社に相談し、ネットを張って良いかどうかを確認してください。また、ネットを張る際は業者にお願いするといいでしょう」
東京都港区や世田谷区、荒川区、大田区、大阪市などが条例で「野鳥へのエサやり」を禁止するなど、自治体を上げて対策に乗り出す地域が増えているが、まだまだ対策は追いついていない。
「エサやりが条例で禁止されていないエリアでは、口頭で注意するしかできませんし、相手が納得しなければ意味がありません。逆切れされて危ない目にあう可能性もあるので、個人で動くのはやめたほうがいいでしょう。署名を集めて自治体に条例制定をお願いするなど、住民が力を合わせて対策をするほうが効果的だと思いますよ」
□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。