「世帯年収1000万円でタワマンは高望みだった」 憧れのマイホーム購入も後悔したワケ

人気を維持し続けるタワーマンションは都市部を中心にその数を増やしているが、「タワマン」に憧れて購入を決めた人からは、「やめておけばよかった」という後悔の声も聞こえてきているようだ。

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

住み続けるうちに「失敗した」という後悔の気持ちが…

 人気を維持し続けるタワーマンションは都市部を中心にその数を増やしているが、「タワマン」に憧れて購入を決めた人からは、「やめておけばよかった」という後悔の声も聞こえてきているようだ。

 今回、話を聞いたのは隣県に限りなく近い東京23区内のタワマンに住む葛城祐子さん(仮名・33歳)。中学生時代、タワマンに暮らすクラスメートから自慢されたことが要因となり、タワマン暮らしに憧れた祐子さんは、結婚して住むならタワマンじゃなければ嫌だとお見合いで知り合った夫に宣言。夫婦2人の貯金と双方の親からの援助を頭金にし、ローンが組める部屋を探した結果、購入するに至ったという。

「無事、高層階を購入することができました。周囲に高い建物がないので眺望も最高。ようやく憧れのタワマン暮らしができる! と、ワクワクして引っ越したのですが、住み続けるうちに『失敗した』という後悔の気持ちが強くなってきました」

 祐子さんが後悔するに至った最大の理由が、その立地だ。駅に近く利便性は良いのだが、周辺地域は治安が悪く、駅に隣接する公園からは深夜になっても騒ぐ声が聞こえてくるという。通勤時間帯に目に入るのは、路上に散らばる酎ハイやビールの空き缶と、カラスやハトがむらがる食品の残骸ばかり。

「自身が住むきれいな部屋とのギャップが激しく、『こんなはずじゃなかった』という思いに毎日のようにかられています。近くにある公園もゴミだらけで汚らしく、このままでは子どもを遊ばせることもできません。世帯年収1000万円クラスの私たち夫婦には、タワマンは高望みだったのでしょうか……」

下見は昼と夜の2回行うのが鉄則

「年収1000万円で購入できる範囲の物件を買う。これは間違った行為ではありません。1つだけ言えることがあるとすれば、金額にだけ目を向けてしまい、周辺地域について調べなかったことにあると思います」

 こう語るのは、不動産のプロであり、業界に精通する中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さん。不動産を購入する際は、デベロッパーや不動産会社の情報だけを鵜呑みにして購入を決めるのではなく、実際に現地に足を運び、自分の目で確認することが大切だと語る。

「訪れるのは、昼と夜の2回。時間が許せば朝も見てみてください。物件の周辺や駅前の環境、商店街やスーパーマーケットを巡ることで、その街の状況が確認できると思います。お子さんがいるようであれば最寄りの小中学校に足を運び、そこに通う子どもたちの表情などを確認するといいでしょう。こうした下見を昼間に行う方は多いのですが、治安が悪い街は夜にその本性を見せるもの。必ず夜に再訪することをおすすめします」

 姉帯さんによると、一時期「住みやすい街」として人気が高まった都内の某エリアも、コロナ禍による不況のあおりを受けて治安が悪化しつつあり、その土地から離れる住人も増えているという。目に見える“現在”だけではなく、“過去”について調べることも必要になりそうだ。

「不動産は、人生をかけた高い買い物になります。それだけに、慎重になり過ぎて困ることはありません。これから自分たちが住む街だからこそ、下見はしっかりと行いましょう」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。

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