酒で顔が赤くなる人は注意、食道がんは「男性が圧倒的に多い」 52歳プロレスラーが闘病告白

プロレスラーで文京区議会議員の西村修が52歳でステージ4の食道がん(扁平上皮がん)と診断された。今年に入り上半身の左側に痛みを感じて検査を受けたところ、がんはすでに食道の外側にも転移していた。食道原発(がんがはじめに発生した部位)の扁平上皮がんとはどのようながんなのか。予防法も含めて四谷内科・内視鏡クリニックの高木謙太郎院長に聞いた。

食道は食べ物が通る消化器の一部だ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
食道は食べ物が通る消化器の一部だ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

たばこと酒でリスク15倍 今から気をつけたい習慣とは

 プロレスラーで文京区議会議員の西村修が52歳でステージ4の食道がん(扁平上皮がん)と診断された。今年に入り上半身の左側に痛みを感じて検査を受けたところ、がんはすでに食道の外側にも転移していた。食道原発(がんがはじめに発生した部位)の扁平上皮がんとはどのようながんなのか。予防法も含めて四谷内科・内視鏡クリニックの高木謙太郎院長に聞いた。

 西村は1月から左上半身に徐々に痛みを感じ、左側を下にしては睡眠できないような状態になった。3月に精密検査を受けた結果、ステージ4の食道がんと診断された。

 高木院長によると、食道がんは扁平上皮がんと腺がんの2タイプに分かれる。

「食道がんの中に扁平上皮がんと腺がんがあって、ほとんどの食道がんは扁平上皮がんです。食道がんという大きなくくりの中に扁平上皮がんがあるだけですので、ほぼイコールの認識でよいです」と説明した。

 食道がんの自覚症状にはどのようなものがあるのだろうか。

「早期の場合は熱いものや刺激物を食べるとなんとなく胸が染みるという症状があります。病気が進んでくると、食道の表面が盛り上がってくる、病気が盛り上がってくるので、食べ物を食べると詰まるという症状が多いですね。食べたときに胸がつっかえて食べ物が落ちていかない感じです」

 確定診断は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で行う。

「バリウム検査でも分かると思いますけど、確定診断しようと思ったら胃カメラは受けていただきます。腫瘍から細胞をつまんで顕微鏡の検査に出します。病理検査に出さないと確定はつかないですね」

 血液検査による腫瘍マーカーでもがんの可能性は判断できるものの、「特に早期の場合は見つけるのは難しい」と高木院長。「PET検査(全身のがん細胞を検出する検査)やCT検査でもかなり進行したら見つかると思います」と指摘したが、早期の食道がんを発見したり、確定診断を行う場合はあくまでも組織を採取できる内視鏡検査となっている。

 治療法はステージ(病期)によって異なる。

「ステージ0から4まであって、0期だったら内視鏡切除がまず標準的治療になりますね。1期だと手術が標準的治療になります。また状況によって、手術と化学放射線療法を併用する場合があります。2期、3期も基本的には手術が第1選択になりますね。4期になると、化学放射線療法が標準治療になります。がんが進んでしまうと、手術ができなくなってしまいます」

 何よりも大切なのは早期発見だ。少しでも胸の違和感を覚えたら、なるべく早めに受診したい。「ステージ0だったらほぼ完治できますし、ほぼ寿命を全うできます」と強調した。

 ステージ4は食道周囲の臓器または遠隔臓器、一部の領域外リンパ節などに転移が認められる状態となる。

「病気が食道の壁を突き破って周りの肺や気管に飛んでいくことを浸潤(しんじゅん)と言います。要は他の臓器に転移している場合はステージ4なんですけど、例えばリンパ節に転移している場合は必ずしもそれがステージ4ではなく、転移しているリンパの場所とか個数によってステージが変わってきます」

 西村は食道がんが手術できる状態になく、首や脇など左上半身のあちこちに転移していると明かしている。これについては、「たぶん病気が食道の左側にあったと思われます。血行リンパ節転移と言って、転移するときは基本的には血流やリンパの流れに乗って飛んでいくので、食道より下の下半身には転移していかない。例えば肝臓がんが転移するのは基本的には肝臓より上になります。下向きに転移してくことはあまりないです」と指摘した。

 また、痛みがあることについては、「基本的にがんがリンパ節に転移しても、リンパの痛みは出ません。おそらく食道がんが食道の周りの神経に転移して、神経節に侵入したのではないかと思います。その神経の症状じゃないかなと思います」。食道がんを患うと声がかれてしまう嗄声(させい)を生じることがある。声帯を動かす反回神経など食道の周囲に多くの神経が走っているためで、がんが神経に浸潤した可能性を挙げた。

予防法についても語った四谷内科・内視鏡クリニックの高木謙太郎院長【写真:本人提供】
予防法についても語った四谷内科・内視鏡クリニックの高木謙太郎院長【写真:本人提供】

酒ですぐ顔が赤くなる人=「フラッシャー」は要注意

 西村は4月11日から点滴を通じて抗がん剤による化学療法を開始した。治療は入退院を繰り返しながら6クールに及ぶ。

 抗がん剤治療によって、がんの大きさが小さくなることはあるのだろうか。

「全然あります。食道がんは抗がん剤や放射線治療が結構効きますので。食道につっかえて食事が食べれなかった状態から、腫瘍が小さくなって食べ物が食べれるようになったりということは全然ありますね」

 一方で、「これは世間の認識で間違っている方もおられるんですけど、手術で切除できなかった腫瘍は化学療法や放射線療法で完全に腫瘍が消失することはないんですよ。放射線や化学療法の目的は腫瘍を消失させることではなく、腫瘍を小さくしたり、進行を遅らせる意味で効果はあります。ステージによっては腫瘍を小さくしてから手術することはあります」と付け加えた。抗がん剤が効けば、痛みなどの症状も緩和できる。「あとはQOL(生活の質)の向上にはすごく効果ありますね」

 最後に、食道がんの主たる原因を聞いた。

「よく患者さんにお話するんですけど、たばことアルコールが1番の原因なんですよ。たばこを吸っている方は、吸ってない方の10倍ぐらいリスクが高いです。あと、お酒はたくさん飲む人もいるんですけど、その中でも、フラッシャーと言って顔がすぐ赤くなっちゃう方が食道がんになりやすいです。たばこもお酒も両方やっている方は、やっていない方と比べて、14、15倍のリスクがあります」

 今は症状がなくても当てはまる人は注意したほうがよさそうだ。

 性別や年齢別の傾向では、「男性が圧倒的に多くて、女性に比べて6倍ぐらいですね。年齢はだいたい60代から70代に好発しています。全体の70%ぐらいの方が60代から70代ですね。なんでかというのは分かっていないですけど、たぶんたばこやお酒じゃないかなと思っています」とのこと。

 予防には定期的に胃カメラを受けることが重要となる。

「リスクの高い方は年に1回、リスクの低い方は3年に1回ぐらいとお話しています。内視鏡検査は進行したがんを見つけるというより、0期のがんを見つけて早期の治療につなげることがスタンダードになってきています。食道がんに関しては、早期発見すれば内視鏡で治療できると思うので、リスクの高い方は定期的な内視鏡検査をお勧めします」と結んだ。

□高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)四谷内科・内視鏡クリニック院長。東京慈恵会医科大卒業後、約15年間にわたり消化器内科医として勤務。2022年、「予防医学を世の中に広め、健康寿命を伸ばし社会に貢献する」を理念に開業。日本消化器病学会消化器病専門医。

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