目指すは1億回再生 グリーンバックでの異種格闘技戦「巌流島VF」が実現「海外のファンは絶対に見る」

格闘技イベント「巌流島バーチャルファイト(VF)」(5月3日午前11時にYouTubeの巌流島チャンネルで配信)の開催が8日、都内にて公になった。「INOKI BOM-BA-YE×巌流島」(2022年12月28日、両国国技館)を主催した、元K-1プロデューサーの谷川貞治氏が、1年4か月ぶりに大会を開催する。驚くことに今回は、スタジオにあるグリーンバックの壁の前で試合をし、それを配信するという。これだと背景は自由自在に変えることが可能だ。参戦選手はぱんちゃん璃奈や木村“フィリップ”ミノル。いったいどんな配信イベントなのか。谷川氏を直撃した。

8日、配信イベント開催とぱんちゃん璃奈の参戦を発表
8日、配信イベント開催とぱんちゃん璃奈の参戦を発表

渋谷のスクランブル交差点での格闘技も!?

 格闘技イベント「巌流島バーチャルファイト(VF)」(5月3日午前11時にYouTubeの巌流島チャンネルで配信)の開催が8日、都内にて公になった。「INOKI BOM-BA-YE×巌流島」(2022年12月28日、両国国技館)を主催した、元K-1プロデューサーの谷川貞治氏が、1年4か月ぶりに大会を開催する。驚くことに今回は、スタジオにあるグリーンバックの壁の前で試合をし、それを配信するという。これだと背景は自由自在に変えることが可能だ。参戦選手はぱんちゃん璃奈や木村“フィリップ”ミノル。いったいどんな配信イベントなのか。谷川氏を直撃した。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「常に思っているのは、自分のなかにあるアントニオ猪木や大山倍達、異種格闘技戦への思いが大前提としてあって、それを今風に伝えていくためにも、常に新しいことやっていきたいというか、ファーストペンギンでいたいという気持ちがあるんです。それが『巌流島VF』への挑戦につながっています」

 谷川氏が「巌流島VF」の開催動機について口を開いた。今回の開催に行き着いたきっかけは、これまで辿ってきた谷川氏の道程が根底にある。

「僕はこの世界でもう40年もやってきたけど、常に自分が興奮できないとダメなんですよ。それがかつてはK-1やPRIDEだった時もあるけど、あの時代のいいものをもう1回やろうとしても無理だし、それを求めてもダメだと思う。そういう意味では今だったら何をやるかなっていうひとつの答えがバーチャルファイトになった。だけどこれは、ついこの間思いついたんじゃなくて、10年以上前から思っていたこと。例えば地上波全盛の時は地上波で、CSが出てきたらCSで、ペイ・パー・ビューが出てきたらペイ・パー・ビューで格闘技ができないかと思って、実際にそれをやってきた。そして今は映像技術が進んで、AIだとか仮想空間みたいなものがどんどんできていくなかで格闘技は何ができるのか。今の映像技術はすごいですよ。今、自分が座ってる机の上で立体的に試合が見れちゃうんだから。本当に映画『バックトゥー・ザ・フューチャー』もびっくりの世の中になっている。だから、その中で格闘技は何をやろうかって。そういうことだと思うんですよ」

 さらに谷川氏はメディアの進化と格闘技イベントには密接な関係があると説く。

「ちょっと変な言い方かもしれないけど、やっぱりAVとバイオレンスって強いんですよ。例えば録画機能ができて、昔はVHSやベータマックスのビデオテープがあって、それがDVDになって今はデータができて、CSやインターネットで見たり。その進化にはAVとバイオレンスのものすごい貢献がある。ただ、格闘技はAVには負けますけどね」

 そう言って谷川氏は苦笑したが、今回は初のグリーンバックでの大会になる。

「今回の闘技場は古代ローマのコロッセオを予定していますけど、次回以降は、渋谷のスクランブル交差点だったり、カンフー映画の舞台、SF的な宇宙空間を含めた、多種多様なシチュエーションを考えています」

5月3日の午前11時に巌流島チャンネルでの配信が決定した
5月3日の午前11時に巌流島チャンネルでの配信が決定した

キックボクサーやMMAファイターが一番特徴がない

 そもそもさまざまな格闘技があるなかで、なぜ異種格闘技にこだわるのか。

「もちろん、五輪やWBCのようなシステムのなかで、ひとつのジャンルの中での1番を競い合うことも面白いと思うし、それも好きだけど、格闘技でしかできないことっていうのは、格闘技というジャンルの壁を崩すこと。僕はこの世界でもう40年もやってきたけど、一番予想外なこと、驚いたこと、興奮したことって、たぶんUFCの誕生(1993年11月12日、米国コロラド州デンバー)だったと思う。あれを最初に観た時には、こんなことやるんだ、できるんだ、こうなるんだっていう驚きがたくさんあった。だから初期のUFCが一番好きなんですよ」

 しかもその世界観にグレイシー一族がいたことがまた、幻想に拍車をかけたのは事実だろう。

「そうですね。空手家がいて、相撲取りがいて、プロレスラーがいて、片手だけグローブつけたボクサーがいたり。第2回、第3回と進んでいくと、鷹の爪拳とか警察官(逮捕術)とかいっぱい出てきた。あれにはものすごい興奮した。だけど、そのUFCでさえ競技化されて、技術もだんだん似通ってきてね。みんなその競技の中での勝ち方、レベルがどんどん上がって。それはそれで仕方がないんだけど、そういう時に飽きちゃうんだよね、僕は」

 今回、ぱんちゃん璃奈の試合が発表になった。相手はテコンドー出身(12戦無敗)のルシア・アプデリカルリム(20)になる。

「本当は、大々的に発表するつもりもなかったんですけど、ぱんちゃんが試合をする際にはスポンサー関係の方に了解を得ないといけないので、どうしても発表してほしいという希望があったから発表したんですよ。ただ、とくに意図したわけじゃないけど、ぱんちゃん然り、結果的に今回は、なぜか問題児というか一癖二癖ある人ばかりが出ることになりますね(※21日には木村“フィリップ”ミノル、江端秀範、渡慶次幸平の参戦も決定し、全4試合が発表された)。

 だけど面白いのは、今回開催を発表したら、今まで関わったことがないキックの選手とかから『是非、次は出させてください』って売り込みがあったことかな。普段、そんなことを考えていなそうな選手から意外な反響はありましたね。僕は経験上、スターはこれから作っていくもんだと思うから、名前があるかないかはあまり関係ないんです。個人的にはプロデュース的な目線から見ると、キックボクサーやMMAファイターが一番特徴がない。もちろん、競技人口や強さを考えれば強いんですよ、競技は強さを育てますから。だけど幻想はないですよね。全部、分かってしまったから。だったらセネガル相撲とか、カルチョ・ストーリコ(通称・喧嘩フットボール)とか、カポエイラとか、沖縄空手とか。そっちのほうが幻想がありますよね」

 ちなみに今後、「巌流島VF」に参戦させたい選手や格闘技にはどんなものがあるのか。

「その話をする前に、最近、僕が面白いと思ったのは、Netflixの『フィジカル100』なんです。いろんな競技の選手100人が最後の一人になるまで競い合うんですけど、そこには秋山成勲くんみたいな格闘家も出ていたり、レスリングの五輪選手とか出てたいたりする。だけど最後のほうまで生き残るのは、意外と消防士とか特殊部隊出身者とかだったりするんですよ。だから結構、有名じゃなくて、意外な選手。それこそ、そういう未知の格闘競技はホントに面白いんですけど、今後はロシア、中東、イスラエル、アフリカ、中国、北朝鮮あたりには未知の格闘技がたくさんあると思うから、それを出したいですよね」

ブランドVS無名の野生が一番面白い

 出るか出ないはともかく、この選手が出たら面白い、という具体名を挙げると誰がいるのか。

「面白いか面白くないかっていうのとは別にして、やっぱり名前のある人がいいですね。だから、やっぱり1番はフロイド・メイウェザー(プロボクシング5階級制覇)じゃないかな」

 ハードルは高そうだが、実現すれば「レッスルマニアXXIV」(2008年3月、米国オーランド)以来の、メイウェザーの驚きの表情が観られるに違いない。

「そういう顔が見たいですよね。だから、単純にブランドVS無名の野生みたいな、そういう組合せが一番面白いんですよ。例えば120キロのセネガル相撲VSプロボクサーの世界王者とか。そういうのは最高にワクワクしますね」

 1年4か月も間、大会を開催していなかったが、その間に巌流島のYouTubeチャンネルには100万回以上の再生回数を弾き出した動画が10本以上確認できる。また、チャンネル登録数もこの1年半で10倍以上の13万人超えを果たした。

「その数がどれだけすごいのかって、正直言って分からないです。要は地上波をやっている時のリアルな感覚だと視聴率20%とか、曙VSボブ・サップ(2003年大みそか、名古屋ドーム)の瞬間最高視聴率43%って、世の中のぐわっと来る感覚があったけど、それとは全然違うものですからね。だから2万回と200万回の違いがよく分からないんですよ。ただ、そういう数字がそれなりにすごいのであれば、自分の方向性は間違ってなかったなと思いますね」

 なかでも「もし柔道とボクシングが戦ったら」のショート動画はもうすぐ2000万回再生、「喧嘩最強ボクサー(渡辺一久)in天下一武道会」のショート動画は約1500万回の再生数を弾き出している。

「その数字はほとんど海外からのアクセスです。だから今回の『巌流島VF』をやったら、日本の格オタといわれている人たちからすると、体重はめちゃくちゃだし、ルールめちゃくちゃだし、競技としてめちゃくちゃに見えると思うし、実際そう言われると思うんです。批判のほうが多いと思うけど、海外のファンは絶対に見るんですよ。まあ、だから当面の目標は、目指せ1億回再生ですね」

 すでに約2000万回再生された動画もある。1億はそこまで見えない数字ではないだろう。それを踏まえて谷川氏はこう話す。

「自分のやっていることが、競技とは全然違うことだっていうのは自覚しているし、本当にわざとやっているんです。要は、競技にしたくないんですよ。やっぱり武道とか武術ってそんなもんじゃないと思うから」

 かつて極真空手を創設した大山倍達総裁は、「極真空手をやっていて、柔道に喧嘩を売られて、負けたら恥ずかしくないのか。ルールが違うから勝てませんでしたなんて通用しないよ」と話していた。

「もちろん、競技としてルールを守ることは当たり前なんですけど、体重差やルールの違いを超えたところに、僕が考える本当の格闘技があると思うから、それをやりたいし、残していきたいんです。それを今の若い子とか、次につなぎたいなって思いますね。僕らの時代は終わっているけど、僕らの知識と経験はそんな簡単に味わえないもんだから、それを少しでも次の世代に伝えていけたらと思っています」

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