RIZIN王者・鈴木千裕「ガス欠したら僕の負け」 金原正徳戦、狙うは早期決着「常にフルエンジン」

現RIZINフェザー級王者の鈴木千裕(24=クロスポイント吉祥寺)は29日に開催される格闘技イベント「RIZIN.46」(東京・有明アリーナ)で金原正徳(41=リバーサルジム立川ALPHA)の挑戦を受ける。初の防衛戦を前に王者になってからの変化や“ベテラン”金原の印象を聞いた。

鈴木千裕【写真:ENCOUNT編集部】
鈴木千裕【写真:ENCOUNT編集部】

金原正徳を迎えての初防衛戦も気負いはない「だって負けないですもん」

 現RIZINフェザー級王者の鈴木千裕(24=クロスポイント吉祥寺)は29日に開催される格闘技イベント「RIZIN.46」(東京・有明アリーナ)で金原正徳(41=リバーサルジム立川ALPHA)の挑戦を受ける。初の防衛戦を前に王者になってからの変化や“ベテラン”金原の印象を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 昨年11月、当時王者であったヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)と相手のホームであるアゼルバイジャンでタイトル戦を行った鈴木。試合は日本時間深夜、多くのファンがリアルタイムで視聴するのが難しかったなか、1R・KO勝ち。下馬評を覆す大金星だった。

 あれから約5か月。相手は「日本フェザー級裏番長」とも呼ばれているベテランだ。さらに自身が1Rで極められてしまったクレベル・コイケを直近の試合で完封している。

「ベテランのテクニックで生き残っているので怖いですよ。大体、40歳で総合格闘技ができる人ってごく一部。勝ち続けないと生き残れないじゃないですか。なぜ生き残っているのかと言ったら打撃はできるし、寝技もできる。しかも相手の個性を殺せる。だから試合中の負担が少ないんですよね。すべての局面でレベルが高いので、勝ち続けているんです。

 そうではないベテラン選手は途中でフェードアウトしていく。『打たれ弱くなったから』『足関で壊されてるから』、いろいろあると思うんですけど頑丈でテクニックがあって生き残っている人たちが金原さんみたいな猛者なんですよ」

 その上で金原についてこう分析した。

「若い選手よりも全然パワーあると思いますし、ピークより落ちてるとは思いますけど、スタミナもある。それはいなし方を知っているから。スタミナのゲージは短いかもしれないけど、それを使うポジションが上手い。上手く使って回復して、短くても長く長く使い続けられるんです」

 それでも自分はがむしゃらな“鈴木千裕らしさ”を貫く。

「僕はスタミナをいっぱい使っちゃいます。常にフルエンジン。でもその間に決めようと思ってる。同じ消耗勝負しても勝てない。フルスロットルで勝負をかけて仕留め切れば僕の勝ち。逆にいなされて、ばててしまった時に攻められると金原選手は余裕でパワーもスタミナも上回ることができる。ガス欠したら僕の負け。そんな戦いになると思います」

 セコンドの指示で動くタイプではなく自身の直感を信じて戦ってきた。RIZINデビュー時には秒殺負けしたが、チャンピオンにまで上り詰めた。

「次、負けない限りはこれが答え。負けたら修正してまた全部修正します。でもチャンピオンになっているので治す必要はないですよね。この戦い方を突き詰めるだけです」

 今回は初防衛戦。大事な一戦だが、防衛について気負いはない。「だって負けないですもん。防衛云々ではないですよ」とさわやかな笑顔を見せた。

ファイトマネーはデビュー時の10倍も「全く足りない」

 2021年9月にRIZINデビュー。初戦は衝撃的な秒殺KO負けを喫したものの、そこからの6連勝で王者になった。ベルトを手にするも、出てきた感情は想像していたものと全く違っていた。

「常に挑戦者である気持ちは変わらないですよね。チャンピオンになって、『ゴール』と思えるかと思ったんですけど、出てきた感情は『満たされていないな』でした」

 それでも王者になって周囲は変化した。以前よりも発言力が強まったと明かす。

「できることの幅が増えました。この前、能登にチャリティーイベントにいったんですけど、自分を知って寄付してくれる人の数も増えたし、なにかをしたいときにサポートしてくれる人が増えました。いい方向に変わってきているなと」

 3月頭には今年1月に起きた令和6年能登半島地震への寄付とチャリティーイベント開催を報告。実際に現地を訪れたといい「家を津波で流されたって本人から聞くと考えさせられますよね。見るだけで辛いのに、当事者だったら余計しんどいなって」と悲惨な状況だったことを振り返った。

 王者になってファイトマネーも跳ね上がった。「デビュー戦に比べたら10倍ぐらいになりましたね」としみじみ。それでも「僕が考えていることには全く足りないですね」とハングリー精神を見せる。

 大金を手にしても生活基盤はあまり変わらない。格闘家として自身に投資する額は増えたが、それ以外でのお金の使い道の優先順位は家族と大事な仲間。さらに寄付や慈善活動も積極的に行っている。「僕の大事な人たちをいい方向に持っていきたい」とうなずいた。

 今年は今よりもより高みを目指していく。RIZINの榊原信行CEOは3月6日、自身のXに「千裕の今シーズンの壮大なプランを聞いて、ビビって、たじろぎました! 皆さんご期待下さい」とポストしていた。鈴木が内容を明かす。

「歴史に残る試合にふさわしい相手との対戦です。MMA選手とキックボクシングの両方で榊原さんとは話しています。僕のわがままで、『この人とやったら面白い』って選手を挙げました。世界を含めて知らない人が少ないような、ほぼみんなが知っている選手です」

 王座戴冠直後の「格闘技の質」への投げかけは大きな話題になった。不良や知名度先行とは真逆を行く正統派。己の拳でそれを示すことはできるのか。いままで以上に結果が求められる初防衛戦になりそうだ。

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