道枝駿佑「もっとアジアに出ていきたい」 藤井道人監督とタッグ『青春18×2』で国際プロジェクトへ初参加
藤井道人監督最新作にして初の国際プロジェクト、日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』が、5月3日に公開される。公開を前に、藤井監督となにわ男子の道枝駿佑が囲み取材に応じ、作品への思いや海外への挑戦について語った。
藤井道人監督と道枝駿佑は“みっちー”呼びの仲
藤井道人監督最新作にして初の国際プロジェクト、日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』が、5月3日に公開される。公開を前に、藤井監督となにわ男子の道枝駿佑が囲み取材に応じ、作品への思いや海外への挑戦について語った。
国内興行収入30億円超のヒットを記録した『余命10年』の藤井道人監督最新作にして初の国際プロジェクト、日台合作映画『青春18×2 君へと続く道』。台湾で話題を呼んだジミー・ライの紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』を原作とし、日本映画界が今最も注目する藤井氏が脚本・監督を務めた。台湾の超人気スター俳優のシュー・グァンハン演じるジミーと、日本の若手実力派俳優・清原果耶演じるアミが“日本×台湾”“18年前×現在”を舞台に紡ぐ、切なくも美しいラブストーリーだ。道枝は、ジミーが長野県飯山線の電車の中で出会うバックパッカーの青年・幸次を演じた。
――今回の国際プロジェクトという企画を聞いたときの気持ちを聞かせてください。
道枝「藤井監督で、初の国際プロジェクトということに加えて『もっとアジアに出ていきたい』と思っていたタイミングでもあったので、うれしかったです。いろんなご縁が重なった作品だなと思っています」
藤井「僕は20代から台湾へ留学に行ったり、営業に行って『チャンスをください』とやってきたものの1つが結実したと思っています。飛び級して20代でオファーをもらってやっていたらこの作品には出会えなかったと思いますし、回り道だとも思っていなくて、一歩一歩やってきた先にこの作品があって。先週、台湾で公開されたときに『ここからだな』と思いました」
――脚本を読んだときと、完成した作品を見たときの感想を教えてください。
道枝「本を読んだときは『人が人のために何かをしてバトンが託されているな』という印象でした。作品を見たときには、全員が思いやりのある人物だと思いましたし、刺さるセリフもありました。文字で見るのとキャストの皆さんの声で聞くのとでは感じ方が違って、『素晴らしい作品に参加できたんだな』って」
――ちなみに、その刺さったセリフとはどういったものでしょうか。
道枝「黒木華さんの『でもさ夢を持ってさ、実現させる人なんて本当に一握りだよ』ですね。誰しもが分かっているつもりでもその現実を受け入れられないし、僕も思い通りにいかないことや想像と違うこともあったので、グッときました」
藤井「そこはオリジナルで書かせてもらっているセリフの1つですね。みっちー(=道枝)がそのセリフをあげてくれてうれしいです。
僕も自分の夢がかなったとは思っていないんですけど、すごく恵まれてる環境にいると思っています。そのことを『なんで俺だけがこんなにつらいんだ』と忘れてしまうときもあった36年でした。だけど、自分に言い聞かせるためのセリフでもあり、黒木さんがあの役であのトーンで言ってくれたから意味のあるセリフとしてすごく響いたんだと思います」
――藤井監督はいつから“みっちー”と呼ぶようになったんですか。
藤井「最初にご飯食べたときかな。撮影中にはもう“みっちー”って言っていた気がする」
道枝「いつの間にかでしたよね」
藤井「バレないようにね、これも演出だから(笑)」
――グァンハンさんとは、どのようにコミュニケーションをとりましたか。
道枝「撮影終わってからご飯を食べに行きました。日本語がすごくお上手で気配りもしてくださって。優しい人と聞いていたんですけど、聞いていた通り優しい方でした。撮影中にも『タブレットを食べる?』とくれたりしました」
――道枝さん演じる幸次は、ぐいぐい初対面の人にも話しかける役という印象を受けました。
道枝「距離感おばけですよね(笑)。あざとさがなくて、憎めなくてかわいらしくて。僕は幸次みたいに人にグイグイいけるタイプではないけど、できないからこそ想像しながら、元気に明るくはっちゃけて自由にやらせていただきました。今の僕が演じたことに意味があるのかなと思っています」
――そんな道枝さんになぜ、幸次役をオファーしたのでしょうか。
藤井「10代からみっちーのことを知っていて『日本の芸能界を背負って立つ俳優になるんだろうな。今回みたいなワンポイントな役は出てくれないかも』とは思ったんですけど、みっちーが海外にも興味を持っているということもありましたし、この先一緒に何本も映画を撮れるかも分からないし、作品を一緒に作ってみたいと思っていたので。
オファーしないまま終わるよりは『いい映画なので、この船に一緒に乗りませんか』とダメ元でお願いしてみました。そしたら、みっちーから『じゃあ、一緒に1回ご飯食べましょう』と話す時間を作ってくれて、真横でちゃんと『ぜひ出てほしいです』と言いました」
――そのときのお気持ちはいかがでしたか。
道枝「うれしかったです! ワンポイントな役ではあるんですけど、重要なキャラクターでもあるので、僕に『出てほしい』と言ってくださったのはすごく光栄でした」
――役作りについて、どんなお話しをされましたか。
藤井「役については、彼が旅をする経緯などは説明しました。あとは、ちょっと大人ぶっている子みたいな。僕、そういう子が好きなんです(笑)。『こいつかわいいな』と思える人が、ジミーの初めての友達であってほしいということも伝えました」
道枝「分からない部分は相談させてもらいました。あと、トンネルのシーンの『トンネルぅ』の言い方にはこだわりました」
藤井「『トンネルぅ』は自分の中で求めている音があったんです。トンネルすらも友達だと思えちゃう幸次の性格を表すには『トンネルぅ』の一言の一音目が大事で、何十回もやってもらいました」
――幸次の旅の目的やバックボーンについてもお話しされたのでしょうか。
藤井「しました。『優秀な兄がいるというコンプレックスとエスカレーター式で大学に進学が決まっているもののやりたいことが決まっていないことに焦って考えた結果、進学を諦めて旅をしていろんな人に出会いたいと思っている』という設定ですね。実は、幸次もジミーとの出会いが初めて声をかけたときなんです」
道枝「あと、幸次はVaundyが好きなんですよね(笑)。とにかく“元気に”ということは意識していたんですけど、時間に制限がある中で何回もやらせてくれて、試行錯誤しながらやることで分かることもありました」
――バックパッカーとなると、道枝さんは撮影中も荷物が重かったのでは。
道枝「重かったですね。雪の中にいると足もとられるし、大変でした。でも、その大変さを忘れるぐらい楽しくて、本気で雪合戦していました(笑)」
藤井「台湾のトークショーでグァンハンが『道枝さんとの芝居はすごく楽しかった。ただ、監督がストイックすぎてみっちーの足が凍傷になってました』って言ってました。申し訳ないです」
――実際に、道枝さんも一人旅をしたくなりましたか。
道枝「なりました! なかなか行動には起こせないんですけど、僕も20代を向かえて、価値観や視点も変わってきていると思うので、1人旅も大事なのかなって思いましたね。翻訳機を持って行こうかな(笑)。」
――どこに行きたいですか。
道枝「まずはアジアですね。それこそ台湾とか! 聖地巡礼したいですね」
――では、ぜひ藤井監督に案内をお願いしましょう(笑)。
藤井「そうですね、台湾は詳しいので。でも、アジア圏だとみっちーは人気者すぎて、バレるかも(笑)」
主題歌はMr.Childrenによる書き下ろし
――劇中には、岩井俊二監督の『Love Letter』が登場します。
藤井「岩井さんは僕にすごく影響を与えた人で、18歳のときから1番好きだった映画監督だったんですけど、僕は今回のためにあえて見直しませんでした。36歳の自分が映画を分析してしまうよりは、当時のあやふやのままで、幸次(=道枝)みたいに作品のレビューを見て『めっちゃ評価高いじゃん』って思って映画を見るっていうバトンのつなぎ方でいいのかなと。なので、みっちーにも『事前にラブレターを見なくてもいいよ』と言いました」
――Mr.Childrenの主題歌も話題になっています。
藤井「実は、クランクイン前に曲はあったんですよ。まだ制作規模も小さかったのもあってダメ元でのオファーだったんですけど、呼び出されて……。お断りのお返事だと思っていたら、プロデューサーさんが『櫻井が脚本を読んで、もうデモを作ってしまいまして』って。事務所の人たちも『こんなこと今まで1回もなかった』と驚いていました。
その曲をお守りに、僕たちは旅に出ました。台湾のチームとも言語の壁はやっぱりあったんですけど、ミスチルの曲を聞いたらもう1つつながった感じがありました。ミスチルは18歳のときの僕の青春だったし、すばらしい夢みたいなことがたくさんあった時間でした」
道枝「クランクイン前に聞けたのは良かったです。気合いが入るというか、身が引き締まりました。マネジャーさんも『最高っすね』と言っていて、映像と合わせて流れていくんだろうなってワクワクしましたね」
――道枝さんは、次も藤井監督の作品に出たいですか。
道枝「(即答で)もちろんです! こんなにも僕を求めてくださる方がいるのはありがたいことなんだなと。当たり前じゃないからこそ、できる限りその期待にお応えしたいです」
藤井「今回がそうじゃないということではないんですけど、主演で責任感を感じざるを得ない役が今までも多かったと思うんです。だけど、本当に感じてほしいのはそこじゃなくて『どう生きるか、どう演じるのが楽しいのか』とか『映画って楽しいな、結果は後からついてくるよね』というものづくりの世界だと思っています。
だから、僕はあえてそこまでみっちーのお芝居を研究しませんでした。一緒にやったときに『もう1回やってみよう』『こういうのやったらどう?』とかダメ出しではなくて、一緒に幸次という役を使って遊ぼうと。そうしていいものができていくというフローを共有したかったです。みっちーは『分かんないっす』って控え室に戻ってしまうタイプではなくて、一緒に楽しんでくれたので、次はみっちーが主演で何かやりたいなとも思っています」
――今回は、国際プロジェクトに参加されたお二人ですが、普段海外の作品を見るときに意識していることはありますか。
藤井「海外でも日本でも映画を見るときのスタンスは変わらないです。周りの人が面白いと言っているからとかヒットしているから見ようとは思わなくて、自分が映画のサイトを見たときの運を大事にして、見る映画を選んでいます。
日本人監督が海外で賞を獲ったり、活躍している人たちを見ると刺激になるし、自分も足手まといにならないように、一役を担える修行をちゃんとしなきゃなと思いますね」
道枝「海外の作品を見るときは純粋に楽しんでいる部分もあるんですけど、目線や表情・語学の勉強という視点で見ちゃうことがクセになっています。
海外の人から見たら日本も海外ですし、今はサブスクもあって海外にも出ていきやすいのかなと思っていて、自分にもチャンスはあると思っています」
――それでは最後に、この作品を通して伝えたいメッセージを教えてください。
道枝「人に対する思いやりや人情、義理堅さみたいなのが描かれている作品だと思っています。18歳から36歳の回想と現在を行き来しながら物語が進む中で、18年間のはかなさも伝わると思います。登場人物にも悪い人がいないので、素直な気持ちで見てくださればダイレクトに響くんじゃないかなと思います」
藤井「今の自分に重ねたり、過去に重ねたり、未来に思いをはせる人もいてもいいのですが、作家としては、コロナ禍で閉じ込められて会いたい人に会えなかった、会いに行けなかったということを乗り越えたみんなへの『お疲れ様』という気持ちと、生きていると『苦しいな、なんで自分だけなんだろう』と思うこともあるんですけど『あなただけじゃないよ、1人じゃないよ』ということが届いたらいいなと思います。僕もそういう映画に救われてきました」