前澤友作氏が「なめんなよマジで」 激怒したメタ社声明に批判噴出、専門家が明かすSNS投資詐欺の実態
著名人になりすましたSNS投資詐欺の被害が次々と報じられ始めた。警察の発表では、SNSで有名実業家を装った人物からウソの投資話を持ち掛けられるなどして、都内の70代の男性は約1億4000万円、栃木県の67歳の女性は1億2300万円余りをだまし取られたという。名前を使われた著名人も早急な対策を求める中、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士がSNS投資詐欺の実態と「撲滅に必要なこと」を示した。
元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が解説
著名人になりすましたSNS投資詐欺の被害が次々と報じられ始めた。警察の発表では、SNSで有名実業家を装った人物からウソの投資話を持ち掛けられるなどして、都内の70代の男性は約1億4000万円、栃木県の67歳の女性は1億2300万円余りをだまし取られたという。名前を使われた著名人も早急な対策を求める中、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士がSNS投資詐欺の実態と「撲滅に必要なこと」を示した。
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弁護士として被害者の方々と接していて思う。本当にひどい。一刻も早く止めなくてはならない。
名前を勝手に使われた側の実業家・前澤友作さんや堀江貴文さんも今月10日、自民党の勉強会に参加。早急な対策を求め、前澤さんは投資詐欺につながる広告を載せたフェイスブックの運営会社・米メタ社を提訴する意向を明らかにした。
そうした中、メタ社は16日、「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」と題した声明を公式サイトで発表したが、その内容に前澤さんはXに「日本なめんなよマジで」とXに怒りの投稿。私もこの声明を一読し、「まるで、他人事だ」と感じた。
メタ社のコメントにはこう書かれていた。
「世界中の膨大な数の広告を審査することには課題も伴います」
いや、「膨大な数の広告」で「膨大な金額の利益」をあげているのはメタ社だ。その広告が詐欺などの犯罪につながらないように徹底審査するのは当然の務めのはずだ。
私が以前働いていたテレビの世界では、広告を出そうとする企業にはまず「業態審査」を行っていた。業務内容や法的な書類、商品の実物、業界内での評判などを調べ、CMを流しても問題ない企業か確認する。不明朗な企業のCMを流してしまったらメディア側の責任も問われるためだ。
今、ネットメディアの影響力は従来のメディアを上回りつつある。それなのに「数が膨大だから審査が困難」という理由でネット広告を無法地帯にすることは許されないはずだ。
だが、メタ社は続けてこうもコメントしていた。
「オンライン上の詐欺が今後も存在し続けるなかで、詐欺対策の進展には、産業界そして専門家や関連機関との連携による社会全体でのアプローチが重要だと考えます」
オンライン詐欺が「今後も存在し続ける」ことは当然の前提にされていて、それは「社会全体」の問題だと述べられている。その上で「Metaとして、その中で役割を果たすべく注力する所存です」と続く声明は「限られた自分の役割だけ果たす」と宣言しているようで、主体性は感じられない。広告を流した「当事者」として被害と向き合う姿は見えなかった。
私の法律事務所にも被害に苦しむ方々からの相談が続いているが、比較的に高齢の方が多い。接して感じているのは、普段はしっかりしている方が多いこと、そして、人柄が優しい方々だという点だ。
犯行グループは著名人を装った広告を入り口にして相手をLINEなどに誘い込むが、いきなり投資の勧誘はしない。まずは世間話などで相手の気持ちを開かせ、優しい相手の同情を誘うようなメッセージを送ることが多い。経済評論家の森永卓郎さんや岸博幸さんといった大病と闘う方々がSNS詐欺に悪用されているのは「同情によって相手を取り込む」というテクニックの一つなのだろう。
そして、相手の懐に入り込んだ後、犯行グループは「長期間に渡って断続的に」お金をだまし取る。私が見た犯行グループのアプリはオンラインカジノのようなレイアウトで、次々と利益が積み上がっているように見えるものだった。手元のスマートフォンにそうしたアプリが入っていると暇さえあれば開けてみてみたくなるだろう。
さらにSNSからも「今がもうけ時だ」というメッセージが入る。1回当たりの金額はさほど高額でなくても、何度も何度も「投資」して送金していくうちに合計額は大きなものになる。そして、ある日突然、相手と連絡がつかなくなる(その直前には「引出手数料」と称して最後の詐欺が行われることもある)。また被害者がしっかりした方であればあるほど途中で周囲に相談しにくく、被害が深まる傾向にあるようだった。
国による規制が必要
こうして被害者の方々は人生を台なしにされている。これ以上の被害をなくすために取り急ぎ必要なのは、犯罪につながるSNS広告を根絶し、詐欺の入り口を塞ぐことだ。そして、フェイスブックから詐欺広告をなくす方法は簡単だ。メタ社が詐欺広告を載せなければ良いだけだ。自動検知などを使って大量の広告を扱う今の方法では見極めが難しいなら、広告の量を絞り込めばよい。詐欺広告が掲載されるよりはましだ。または詐欺被害について広告を流した業者にも責任をとらせる考えもある。
しかし、こうした対策作りはIT業界側に任せても遅々として進まないだろう。だからこそ、国による規制が必要だと思う。ネット広告の無法地帯で国民が犯罪被害にさらされる事態を政治・行政が放置してはならないはずだ。
こうしている間にもどこかで誰かが被害を受けている。それを止めるためには、今この瞬間から対策に動かなければならない。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。