20代トリオが“クルマ愛”で夢実現 思い付きから始まったカーイベント成功の舞台裏
クルマが大好きな20代の若者たちの“思い付き”は、夢に終わらなかった。横浜赤レンガ倉庫に100台超が集まるカーイベントが実現したのだ。35歳以下の若きオーナーたちが集結。自慢の愛車を見せ合い、情熱と喜びを分かち合った。主催者の3人はそれぞれ、いすゞ ピアッツァ、ホンダS2000、シトロエンBXを駆るこだわり派。地元・横浜でメモリアルなイベントを成功させた“愛好家トリオ”に、熱い思いを聞いた。
いすゞ ピアッツァ、ホンダS2000、シトロエンBXの個性派オーナー 横浜赤レンガ倉庫で初のカーイベント成功
クルマが大好きな20代の若者たちの“思い付き”は、夢に終わらなかった。横浜赤レンガ倉庫に100台超が集まるカーイベントが実現したのだ。35歳以下の若きオーナーたちが集結。自慢の愛車を見せ合い、情熱と喜びを分かち合った。主催者の3人はそれぞれ、いすゞ ピアッツァ、ホンダS2000、シトロエンBXを駆るこだわり派。地元・横浜でメモリアルなイベントを成功させた“愛好家トリオ”に、熱い思いを聞いた。(取材・文=吉原知也)
25歳人気女優のクルマ愛…免許はマニュアル取得、愛車はSUV(JAF Mate Onlineへ)
サーブ、ポルシェ、ロータスといったひと味違う欧州車から、ホンダ・インテグラ、日産・180SXといった往年のスポーツカー、懐かしセダンのトヨタ・クレスタ、セルシオ、クラウン、日産サニーまで。“U35”が乗るにはいい意味でギャップのある名車たちがそろいにそろった。3月20日に行われた「YOKOHAMA CAR SESSION―若者たちのカーライフ―」は、愛好家や観光客ら多くの一般来場者も駆け付け、大盛況となった。
「横浜のこのロケーションで、みんなが楽しんでくれて、本当にうれしいです。約1年前、イケア港北の駐車場で、『やってみない?』と思い付いて、こうして実際に赤レンガで実現することができました。夢を夢で終わらせずに、行動に移す。すると必ず結果がついてくる。このことを改めて実感しました」。発案者で、26歳の後藤和樹さんは万感の思いを語った。
デザイナーの後藤さんが22歳で買った人生初マイカーは、1983年式のピアッツァ。高いデザイン性にほれ込み、おしゃれな内装は40年前とほぼ同じ状態をキープしている。「大事に保管しておくより、日常的に乗るのが僕のスタイルです」と、どこへ行くにも相棒を走らせている。
そんな後藤さんの情熱にほだされたのが、カーイベント開催経験のある2人の友人だ。この2人の愛車物語も非常にユニークだ。
29歳で、93年式のシトロエンBXに乗る本田浩隆さんは、免許を取ってから、独自性にあふれるこの車種一筋で乗っている。
最初に買ったBXが総走行距離24万キロになり、買い替えを決断した。人生で2台目のBXには、数奇な出会いを果たす。車検が切れて置いてあった個体を譲り受けることになったのだ。「お金はないですが、余力はいっぱいあるので(笑)」。自らオーバーホールをするなど、時間をかけて直して修復を重ね、2020年9月に完了。公道復帰を実現させた。最近もミッションを載せ替えるなど、自分の手で丁寧にメンテナンスを施している。
後藤さんとは、“クルマ愛好家の聖地”として知られる大黒PA(パーキングエリア)で知り合った。互いの愛車を見て、気になるクルマだったことから声をかけ、意気投合した。今回の赤レンガのカーイベントの運営に深く携わった。
愛車BXと共に歩んでいく今後。「昔のウイスキーのCMじゃないですが、『少し愛して、長く愛して』のイメージで乗っていきたいですね。街を走っていて、あのクルマはボロだなと思われないような程度に維持して、いつまでも楽しく乗っていきたいです」。あまり肩に力を入れない自分らしいカーライフを思い描く。
もう1人の主催者で28歳の甲野大輔さんは、他の2人が所有するネオクラ車とは打って変わって、国産オープンスポーツカーに乗っている。ホンダS2000 後期型AP2だ。しかし、もともとは“海外スポーツカーマニア”だったというのだ。
「アルファロメオのスパイダーから乗り始めて、10数台乗り継ぎました。以前はハイパワーで速いクルマを求めていました。コルベットC5に乗っていた時に、『自分は気持ちよくカーブが曲がれるクルマの方がいい』と感じるようになったんです。改めて自分の乗りたいクルマを見つめ直した時に、以前先輩の愛車で運転させてもらったことのあるS2000やマツダ・ロードスターがいいなと思うようになりました」
いずれは乗れなくなってしまうかもしれない。だったら1回は乗っておこう。そんな気持ちで、S2000を購入した。そうしたら、「ポルシェやマセラティより全然いい、楽しく乗れる」と驚嘆。すっかりお気に入りで、以前は半年や1年のペースで乗り換えていたが、このS2000は約4年も乗っている。
イケアの駐車場で、後藤さんから最初に発案を聞かされたのは、甲野さんだった。「一番初めは『マジで?』と思ったのですが、自分と本田さんにはカーイベント開催のノウハウがあったので、手伝うよと返事をしました。後日になって後藤さんが『赤レンガの予約取れたよ!』と連絡してきて、そこから本気になりました(笑)。僕たちは神奈川が地元なので、こうやって赤レンガでカーイベントを実現することができて本当にうれしいです」と感慨深げだ。
今時の若者のクルマ愛好家は「ディープぶり、入れ込みようが深い」
みんなで手を携えて成し遂げた初めてのカーイベントの試み。参加者から大好評で、「2回目も待ってるからね」といううれしい反響が寄せられた。後藤さんたちは第2回YOKOHAMA CAR SESSIONの開催について前向きに検討を進めている。
一方で、近頃は何かと、“若者のクルマ離れ”と言われてしまう。当事者としてどう考えているのか。決して暗い未来は見ていないという。
本田さんは「むしろ、濃度が上がっていると感じています。若いオーナーのみんなのディープぶり、入れ込みようには深いものがあると思います」と実感を明かす。
甲野さんもクルマの自由度の高さを強調。「思い付いた時にすぐに運転できるというところがクルマのよさの1つです。どこかに遊びに行くにも電車や公共交通機関の移動だと、時間の制限や駅から遠いなどアクセスの都合が出てきてしまいますよね。クルマだったら、『あっ、あそこに行ってみたい』と思えば、いつでも出かけることができます。僕自身、仕事を終えて夜に帰ってきて、『今夜、流星群が見られます』とニュースで知って、『明日は休みだ、よし見に行こう』と夜10時過ぎに家を出て山梨まで見に行ったりします。時間に縛られない、これがクルマの大きな魅力だと思います」と語る。
若き熱意が運命を変えることもある。愛車が人生をいい方向に導いてくれることもある。
後藤さんは、就職前の学生時代からピアッツァにほれ込み、販売店の営業担当者に連絡。数年かけて、社会人になって今の愛車を手に入れた。愛車がもたらす“縁”を実感しているといい、「このクルマを手に入れたからこそ、多くの仲間と出会って、こうして夢のようなカーイベントを主催することができました。クルマはいい出会いをもたらしてくれます。これからも、楽しく乗っていきたいです」。自動車がつなぐ人の輪。これからも力強く広がっていくだろう。