22歳・八木莉可子、コロナ禍で「大学生らしいイベント」経験なし 半泣きで書き上げた卒論とは

俳優の八木莉可子(やぎ・りかこ)が、12日に開幕した舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』(東京・サンシャイン劇場)に出演している。八木の初舞台となる同作は、京都の大学生たちの青春群像劇だ。3月に大学を卒業した22歳にとっては身近なストーリー。意気込みを聞く中、八木は4年間の学業が俳優業にも「いい影響」を与えていることを明かした。

『鴨川ホルモー ワンスモア』が初めての舞台出演になる【写真:舛元清香】
『鴨川ホルモー ワンスモア』が初めての舞台出演になる【写真:舛元清香】

初舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』に出演中

 俳優の八木莉可子(やぎ・りかこ)が、12日に開幕した舞台『鴨川ホルモー、ワンスモア』(東京・サンシャイン劇場)に出演している。八木の初舞台となる同作は、京都の大学生たちの青春群像劇だ。3月に大学を卒業した22歳にとっては身近なストーリー。意気込みを聞く中、八木は4年間の学業が俳優業にも「いい影響」を与えていることを明かした。(取材・文=大宮高史)

 八木は舞台初出演で、直木賞作家・万城学氏による『鴨川ホルモー』が原作の青春群像劇に挑む。舞台ならではのパフォーマンスを意識し、稽古を重ねてきた。

「鴨川の土手をイメージした舞台装置の中で、ホルモーで戦うオニを使役して走り回ります。ダイナミックな動きが見られる作品になりそうです。これまでの演技では『リアル感』を意識していたのですが、今回は舞台なので、遠くのお客さんにも伝わる演じ方をしなければと思います。舞台にあった力強い演技を身につけたいです」

 京都大の学生・早良京子を演じるが、自身も3月に大学を卒業したばかりだ。

「コロナの影響で入学式もなくて、前半の2年間は行事らしい行事はほとんどありませんでした。1年生の時は授業もほとんどオンラインで、生活の拠点をこちら(関東)に移したのは3年生からです。サークルの新歓イベントなど、大学生らしいイベントも経験できませんでしたが、この作品でそうした『青春』を演じる機会になりました」

 卒業論文は、長年のファンだった『スパイダーマン』のヒーロー像をテーマにした。

「普段は平凡な若者なのに、スパイダーマンとして変身すると献身的なヒーローなんですね。敵と戦うのも戦闘ありきではなくて、みんなを守るため。私はその人柄が大好きですが、映画だけでも20年以上続いていて、その間にヒーローの在り方が変わっています。ただ敵を倒すのではなく、更生させるようになったりと。本来は何かを犠牲にする自己犠牲的なヒーローでしたが、必ずしもそうでない作品も生まれ、スパイダーウーマンも登場しました。まさに多様性の時代を反映しているなと考え、シリーズの歴史から現代社会を論じてみました」

 コロナ禍が収束すると、通学をして大学3年終了時で卒業単位を取得。卒論も必須ではなかったが、「夜中まで半泣き」になりながら打ち込んだという。

「大学のキャンパスの雰囲気自体も好きで、授業がない日でもふらっと行って、友達と学食でご飯を食べるだけでも楽しく感じていました。卒業に必要な単位がそろってからも、気になる授業をとっていましたし、学びも遊びも満喫できたと思います」

学業を経て、俳優の仕事での責任感も増した【写真:舛元清香】
学業を経て、俳優の仕事での責任感も増した【写真:舛元清香】

 研究熱心さは、俳優業でも発揮してきた。2022年にNetflixドラマ『First Love 初恋』に出演。ヒロインの也英(満島ひかり)の高校生時代を演じたが、生まれる前の1990年代の流行を徹底的に調べて現場に臨んだ。

「気になることを見つけたら放っておけないですね。すぐスマホで検索をして好奇心を満たしてしまいます。調べものだけで1時間くらい平気で過ぎてしまいますね(笑)」

 メディア論に興味を持った理由は、「滋賀での平凡な学生だった頃から、好きな作品にはやはり心に残るセリフがあって元気をもらってきました。その影響力の大きさをもっと知りたくなりました」。今は自身の職業がもたらす影響力を実感し、気を引き締めている。

「『アンコンシャス・バイアス』という無意識の思い込みや偏見があります。そういった世の中にあふれている価値観の形成に、メディアの影響は大きいと学びました。俳優業だけでなくさまざまな局面で何気になく発する言動が、軽はずみにあつれきを呼んでいないか。一言ひとことをしっかり考えないといけない立場だと今は実感します」

 音楽も好きで、気分転換や台本読み、イメージトレーニング中に聴いているという。

「台本をひたすら読み込むよりも、音楽を聴きながら演じる人物について想像を巡らせることを習慣にしています。より深く作品の世界に浸れる感覚があって好きな時間です。お仕事以外でも音楽やラジオを聴きながら家事をしたりと、“ながら族”な面もあります」

 好きなアーティストはテイラー・スウィフトだ。

「中学校の文集で『テイラー・スウィフトのライブに行きたい』と書いていました。この冬、来日公演に行くことができて、長年の夢がかないました」

「好き」をつきつめることで、公私ともに充実。八木はこのスタイルで前進を続ける。

□八木莉可子(やぎ・りかこ)2001年7月7日、滋賀県生まれ。2015年のデビュー直後、ポカリスエットのCMに出演し話題を呼ぶ。俳優としてNetflixオリジナルドラマ『First Love 初恋』や、ヒロインを務めたNHK『おとなりに銀河』などに出演。23年10月からは、日本テレビ系『アナザースカイ』のMCを務めている。特技は書道(初等師範)170センチ。血液型A。

【公演情報】
ニッポン放送開局70周年記念公演
『鴨川ホルモー、ワンスモア』
原作 『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』(万城目学/角川文庫刊)
脚本・演出 上田誠(ヨーロッパ企画)

4月12~29日 東京・サンシャイン劇場

5月3~4日 大阪・サンケイホールブリーゼ

<キャスト>
中川大輔、八木莉可子、鳥越裕貴、清宮レイ(乃木坂46)、佐藤寛太、石田剛太、酒井善史、角田貴志、土佐和成、中川晴樹(ヨーロッパ企画)、藤松祥子、片桐美穂、日下七海、ヒロシエリ、浦井のりひろ(男性ブランコ)、平井まさあき(男性ブランコ)、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、岩崎う大(かもめんたる)

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