浅丘ルリ子「やりたくないものは絶対にやらない」 映画出演本数159本の美学「失敗する前に自分でわかる」

俳優の浅丘ルリ子が5月13日・14日、東京・有楽町I'M A SHOWで「~浅丘ルリ子 トーク&シネマ~『1960年代日活映画☆浅丘ルリ子』」を開催する。日活映画全盛期の『銀座の恋の物語』(62年)、『憎いあンちくしょう』(62年)、『夜明けのうた』(65年)、『愛の渇き』(67年)を上映し、裏話を披露する。

「一番好き」と語る1960年代の4作品を振り返った浅丘ルリ子【写真:矢口亨】
「一番好き」と語る1960年代の4作品を振り返った浅丘ルリ子【写真:矢口亨】

月にI'M A SHOWでトークショー

 俳優の浅丘ルリ子が5月13日・14日、東京・有楽町I’M A SHOWで「~浅丘ルリ子 トーク&シネマ~『1960年代日活映画☆浅丘ルリ子』」を開催する。日活映画全盛期の『銀座の恋の物語』(62年)、『憎いあンちくしょう』(62年)、『夜明けのうた』(65年)、『愛の渇き』(67年)を上映し、裏話を披露する。(取材・文=平辻哲也)

 4作品はすべて蔵原惟繕監督作品。『銀座の恋の物語』『憎いあンちくしょう』は石原裕次郎主演の娯楽作、典子三部作の最終作『夜明けのうた』、三島由紀夫原作の文芸作『愛の渇き』はヒロイン映画となっている。いずれの作品も、浅丘らしい強いヒロインとその影を感じさせる作品だ。

「この4本が一番好きな作品です。私を一番分かっていただいたのが蔵原監督だったんです。良い面を全部取り出してくださった。他の監督ももちろんすてきなんですけど、皆さんは男の方を中心にやってきたので、どうしても、私たち女優は刺し身のツマ風になってしまうんです」

 そんな中でも、男性映画の相手役は楽しんで演じてきた。

「あの頃は裕さん(石原裕次郎)や(小林)旭さん、高橋英樹さんや渡(哲也)さん、みんな忙しかった。日活自体がすごく盛り上がっていて、次々に新しい作品を作らないといけなかった。あの時代にやらせていただいたのがうれしかったです。ただ自分の時間は全くなく、4つくらい台本を抱えていて、4日後にすぐにクランクインといった感じで、イヤとかは言っていられませんでしたね」と笑って振り返る。

 当時は俳優が映画会社に専属し、他社の映画作品には出演できない「五社協定」が結ばれていた時代。他社の女優がヒロイン映画で輝いているのを見て、うらやましく思ったこともある。

「当時、調布におりました。大映の撮影所がすぐそばだったんですね。大映の女優さんは主演映画をいっぱいおやりになっていたんです。私たちは、いつも男の人の影に隠れて何本をやっているのにいいなあ、ちょっと面白くないと思っていました」

「失敗はあまりしたことがない」と語った理由とは【写真:矢口亨】
「失敗はあまりしたことがない」と語った理由とは【写真:矢口亨】

 日活との契約解除後に主演した大映映画『女体』(69年、増村保造監督)は思い出に残っている。

「これがすごい映画だったんです。ブラジャーとパンティーだけになって、岡田英次さんを誘惑して、すぐに寝ちゃう役。今までいい女を演じてきたのに、こんなのをやったら、みんなに嫌われちゃうと思ったんですけど、でもいい、いつも男の人の影になるのはイヤ。やりたい! と思って、やりましたが、やっぱりすごい映画でしたよ。これもどこかで見てほしいですね」

 東宝映画では、加山雄三が殺し屋役で主演する『狙撃』(68年)でもヒロイン役を演じた。

「これも大胆な映画でしたよ。ラブシーンなんて通り越して、2人が裸で寝っ転がっているところから始まるんです。日活はこんな映画を作りません。日活は、俳優を自分のところで大事にして、絶対やらせないんですけど、こういう作品に出て、モヤモヤしたものがパンって一回弾けたっていうこともあります。止まっていた時間が動き出した感じがしました」

 出演本数159本。「男はつらいよ」シリーズではマドンナ・リリーとして4作品に出演し、代表作になった。長年トップ女優として活躍してきた浅丘に、「今だから話せる失敗した話はありますか」と質問すると、少し考えて、こんな答えが返ってきた。

「失敗は、あまりしたことがないんです。失敗する前に自分で分かるんです。あの頃(1960年代)は、私はイヤ、やらないとは言っていられませんでしたが、ここ20、30年はやりたくないものは絶対にやらないことに決めています。例えば、『ギャラを倍にする』とか言われても、これは私がやることではないなと思ったら、テコでも動かないことにしています」

「演じるのはできても、自分の言葉で話すのは苦手」という浅丘だが、話し出すと、次から次へと、いろんな話が飛び出す。このトークイベントでも、とっておきの裏話を聞かせてくれそうだ。

□浅丘ルリ子(あさおか・るりこ) 井上梅次監督作『緑はるかに』で映画デビュー。1979年初舞台。その後、さまざまな演出家のもと舞台出演を続けている。これまでに、ゴールデンアロー賞、ブルーリボン賞主演女優賞、毎日映画コンクール田中絹代賞、日刊スポーツ映画賞主演女優賞、菊田一夫演劇賞など多くの映画・演劇賞を受賞。近年の出演作はテレビ朝日『やすらぎの刻~道~』(20)、BSプレミアムドラマ『生きて、ふたたび 保護司・深谷善輔』(21)、映画『男はつらいよ50 お帰り寅さん』(20)は出演映画159本目となる。2011年、旭日小授章受章。

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