杉咲花主演の医療ドラマ、原作者は元脳外科医 杉咲に「アドバイスさせてもらいました」

杉咲花が主演を務める15日スタートのカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(月曜午後10時)で、初回放送を前にカンテレプロデューサーの米田孝氏と原作者で元脳外科医の子鹿ゆずる氏が対談した。

カンテレプロデューサーの米田孝氏【写真:(C)カンテレ】
カンテレプロデューサーの米田孝氏【写真:(C)カンテレ】

15日スタートの連続ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』

 杉咲花が主演を務める15日スタートのカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(月曜午後10時)で、初回放送を前にカンテレプロデューサーの米田孝氏と原作者で元脳外科医の子鹿ゆずる氏が対談した。

 同作は、『モーニング』(講談社)で連載中の同名漫画(作:子鹿ゆずる氏、漫画:大槻閑人氏)が原作。過去2年の記憶を失ったうえに今日のことも明日には忘れてしまう“記憶障害の脳外科医”である川内ミヤビが、患者を全力で救い、自分自身も再生していく医療ヒューマンドラマ。元脳外科医である子鹿氏が、“リアル脳外科医”の世界を描く。事故で脳を損傷した主人公の脳外科医・川内ミヤビを杉咲が、変わり者の脳外科医・三瓶友治を若葉竜也が演じる。

 ドラマの撮影現場を見学したという子鹿氏は、「撮影現場を見るのは初めての経験だったので、スタジオに入ってまず『こんなにたくさんの人で作っているのか』とスタッフの数に驚き、セットを見学した際には、手術室の再現度の高さにも驚きました」と感動。「すごくいい(高価な)顕微鏡が置いてあって、思わず食いついてしまったほどです(笑)」と、元脳外科医ならではの視点で語った。さらに、「初めてお会いした杉咲花さんと若葉竜也さんも、ミヤビと三瓶そのもの。杉咲さんは、撮影の合間に縫合の練習の成果を見せてくれたのですが、とてもお上手でびっくりしました。顕微鏡越しの縫合に少し苦戦されているとのことだったので、僭越(せんえつ)ながら、縫合のコツなどもアドバイスさせてもらいました」と、杉咲の手さばきに驚いた。

 米田氏は杉咲と若葉について、「普段からそれぞれのキャラクターについて考えを巡らせ、何度も話し合いを重ねているので、そのキャラクターの生みの親である子鹿先生にお会いできて、とてもうれしかったようです」と振り返った。

 ドラマは原作と違い、ミヤビが主人公。子鹿氏は、「原作を書いている僕がいうのもなんですが、ミヤビは記憶障害を抱えていること以外に、キャラクターとしては少し薄味なんですよね」と明かし、「演じる杉咲さんも、つかみどころがなくて難しいんじゃないかなと思っていました。でも、杉咲さんが見せる多彩な表情は、どれもミヤビそのもので、僕の心配は杞憂に終わりました」と語った。

 さらに、「実は、僕がこの作品を出版社のコンテストに応募したとき、ミヤビというキャラクターはまだ存在せず、『主人公の脳外科医が記憶障害の看護師を助けるために帰国した』という設定だったんです。それが、看護師ではなく同じ脳外科医にしようということで、今のミヤビが誕生しました」とミヤビの誕生秘話を明かした。

「僕の中ではミヤビこそが、この作品の中でいちばんの人格者。表立ってはいないけれど、自然と周囲の尊敬を集めるような人物に描いてきたつもりです。ただ、女性の心の内を描くとなると難しくて、正直、思うように書けなかった部分も。そんなときに、関西テレビさんから『ミヤビを主人公にしてドラマ化したい』とお話をいただいたんです」と語り、「実はドラマ化のオファーはほかにも数社あったのですが、『ミヤビを主人公に』と提案してくれたのはカンテレさんだけ。それはおもしろそうだとワクワクしましたし、主人公ともなれば、僕が描きたかったミヤビをしっかり描いてもらえるのではないかと思いました」と、ドラマ化の経緯を語った。

 米田氏は、「僕たちがやるべきことは、そんなミヤビを客観的に見つめるのではなく、彼女の強さや意志、かわいらしさというものを彼女の主観を通して作っていくこと」と語り、「視聴者の方が、登場する患者さんの未来をいかに想像できるか、思いをはせられるかというのがゴールだと思っています。そのためにも今回のドラマでは、患者さんと同じように荷物を背負ったミヤビを主人公に据えて、全話を通してミヤビ自身に、前を向いて進んでいく姿を体現してもらいたいんです」と思いを語った。

『アンメット』を通して伝えたいことを聞かれた子鹿氏は、「僕が育ってきた昭和の日本社会では、重度の障害を抱えた人は施設などに入れて保護することを良しとしてきました。実は、僕の兄にも重度の障害があり、当時は施設に入所するしかなかったのですが、入所の際の兄の悲しみを目の当たりにし、母も僕もずっと罪悪感を感じて生きてきました」と告白。「『アンメット』は、そんな僕の経験が原点になっているんです」と語り、「ドラマを見てくださる方には、『アンメット』に登場する患者さんのような方たちの存在を知ってほしいですし、決して他人事だと思わずに、少しでも理解していただけたら。そして、本当の意味で共生社会の大切さが伝わり、後遺症と闘う人やそのご家族、医療関係者の方に、少しでも希望の光を注ぐことができたら幸いです」とコメント。

 米田氏は、「この作品に登場する患者さんの多くは、手術を受けても完全には回復できず、後遺症と闘いながら生きていくことを余儀なくされます。そんな中で、当事者とその家族はどうやって希望の光を見出すのか、このドラマでは、ミヤビというヒロインを通して、それを見つけていきます」と語った。また、ドラマを企画した直後に自身の母に脳腫瘍が見つかったと明かし、「予後不良の状態でしたが、それでも母は、小さな希望を見つけては笑顔をのぞかせていました。ほんの少しでも希望があれば、人は今日を明日につなげて前を向ける。家族としてそれを体感したからこそ、作品を通して伝えられることがあるのではないかと思っています。『アンメット』がオンエアされた翌日の火曜日は、世の中が月曜日よりほんの少し明るくなってくれたら……。切にそう願っています」と語った。

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