会社は目の前なのに帰れない… “働き方改革”の現実…反響呼んだトラック運転手の悲痛な叫び

働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が4月1日より、運送業や建設業、医師、鹿児島・沖縄両県の製糖業の4業種で始まった。長時間労働の是正が期待されている一方で、運転者たちの労働時間の減少によって、物流などに支障が出るとされている。いわゆる「2024年問題」だが、早々に、規制の対象となるトラックドライバーからあがった悲鳴が、大きな反響を呼んだ。

労働基準法の改正でトラック運転手が苦悩…(写真はイメージ)【写真:写真AC】
労働基準法の改正でトラック運転手が苦悩…(写真はイメージ)【写真:写真AC】

2日にXに投稿した叫び「会社まで45分なのに時間オーバーで帰れず!!」

 働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が4月1日より、運送業や建設業、医師、鹿児島・沖縄両県の製糖業の4業種で始まった。長時間労働の是正が期待されている一方で、運転者たちの労働時間の減少によって、物流などに支障が出るとされている。いわゆる「2024年問題」だが、早々に、規制の対象となるトラックドライバーからあがった悲鳴が、大きな反響を呼んだ。

 現場からX(旧ツイッター)上で声をあげたのは、静岡県内を拠点に一般貨物を運ぶトラックドライバーの白薔薇さん(@UlBwAq2500KR3nW)だ。上限規制の始まった直後の4月2日にこう投稿した。

「会社まで45分なのに時間オーバーで帰れず!! 何なんだこの働き方改革は!? 家に帰るどころか会社にすら帰れないってクソだな」

 一体、白薔薇さんの身に何が起こったのか? 本人に話を聞くと、現場で働くトラックドライバーにとって切実な悩みを明かした。

 今回の規制により、運転者の1か月の拘束時間は原則293時間(最大320時間)から284時間(最大310時間)まで、1日の休息時間はこれまでの継続8時間から、継続11時間を基本として9時間が下限と定められた。つまり運転者の1日の拘束時間は13時間が基本となり、事情により延長しても最大で15時間以内に収めないといけなくなった。

 白薔薇さんは4月2日、前日に横浜で受けた荷物を積んだトラックで午前3時に静岡県内にある会社を出発した。午前7時頃に岐阜・揖斐郡の目的地に到着し、同9時半頃に荷下ろしを終えた。帰り荷の発送地が三重・四日市市だったため、そこから四日市へと向かい、同11時40分に荷物を積み込むと、会社のある静岡へとトラックを走らせた。

 だが、連続運転が4時間を超えると30分の休憩をはさまなければいけない決まりや、交通状況などもあり、会社のある静岡県某市まであと45分ほどのところで、この日の業務開始から13時間が経過してしまった。会社へと戻ることができなくなり、そこでトラックを止めて、翌朝を待たねばならなくなった。当然、自宅に帰ることもできなかった。

 拘束時間の延長は可能であるが、まだ月初め。おいそれと延長できない事情もあった。会社側も今回の規制で罰則付きとなったことで、慎重に対応しようとしているという。白薔薇さんは「みんなで守って頑張ろうって言っています。配車係は頭を抱えていますよ。休息が1時間増えて、拘束時間の最長が1時間減らされたのは痛いです」と現状を訴え「荷物の延着での損害賠償など、これから出てくるかもしれないですよね」と危惧する。

 18歳の頃からトラック運転手一筋で生きてきたという白薔薇さん。「トラックが好きでいろいろな場所に行けて、おいしいものを食べて、道の駅や温泉に寄って、と楽しんでいましたが、もうできなくなり、モチベーションは下がっています」。これまでは時間を見つけて、自分なりの方法でリフレッシュしていたが、それも難しくなる。

「昔のように自由が欲しいです。このままでは若者が誰もやりたがらないでしょう。家に帰れない、風呂にも入れない車内で缶詰めなのですから。息子に『将来同じ会社でトラックに乗って一緒に全国を走りたい』と嬉しい事を言われましたが、この運送業界に未来は無いからやらない方がいいよ、と言ってしまいました。何のための誰のための働き方改革なのか分かりません」

 当然、今回の“働き方改革”を歓迎しているドライバーもいるはず。その一方で、白薔薇さんたちのように、いきなり苦労と苦悩を強いられている人たちもいる。人々の生活を支えている物流業界。今回の上限規制で難しい状況に直面している。

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