5000人から選ばれた19歳の原石 陽のオーラ&ピュアさが魅力、女優・倉沢杏菜の素顔
NHK夜ドラ『VRおじさんの初恋』(月~木曜午後10時45分)が1日からスタートした。中年男性のVR世界での初恋を描いた同作。19歳の倉沢杏菜は野間口徹演じる「直樹」のVR世界での姿「ナオキ」役で出演中だ。“ほぼ無名”ながらも物語のキーパーソンに抜てきされた彼女の魅力に迫った。
バレエ歴8年の現役大学生、強みは「自分と向き合う力」
NHK夜ドラ『VRおじさんの初恋』(月~木曜午後10時45分)が1日からスタートした。中年男性のVR世界での初恋を描いた同作。19歳の倉沢杏菜は野間口徹演じる「直樹」のVR世界での姿「ナオキ」役で出演中だ。“ほぼ無名”ながらも物語のキーパーソンに抜てきされた彼女の魅力に迫った。(取材・文=中村彰洋)
倉沢が今回、オーディションでつかんだ役柄は野間口演じる直樹のVR上での姿・ナオキ役だ。物語の中核を担うが、監督、プロデューサーからは繊細な演技が評価され、最終的には満場一致で選ばれた。
「とにかくびっくりでした。今まで出演させてもらった作品のオーディションでは、楽しかった印象で終わることが多かったのですが、今回はとにかく緊張してしまって、手応えを感じることができていなかったので、『まさか私が!』という感じでした」
慣れない“おじさん感”を醸し出すことが求められたが、野間口の気遣いに救われたと明かす。
「撮影に入る前に、台本を一緒に読む時間を設けてくださり、私のセリフを野間口さんが実際に読んでくださいました。そのおかげで、野間口さんのイメージを持ちながら役作りを行うことができました。現場にもたくさん見学に行かせていただき、相談もさせていただいたりと、たくさん助けていただきました」
ナオキが恋に落ちる相手・ホナミ役の井桁弘恵とは撮影で一緒になることも多かったが、「本当に優しい方で、井桁さんのお陰ですごく現場の雰囲気が良くて、たくさん学ばせていただきました」とお姉ちゃん的な存在だったようだ。
撮影はすでにクランクアップ済み。完成した映像には、「反省点しか思い浮かばないんです」と苦笑いしながらも、「全体的な世界観がすごくすてきです。撮影のときに想像していたものがより鮮やかになっていました」と仕上がりを絶賛した。
英語を話せるようになるために大学進学を決意
5歳から8年間、クラシックバレエを学んでいた倉沢。体を使って表現することが好きだったこともあり、俳優業への興味を抱いていた。そんな中、中学生時代に授業参観で披露した英語劇を観た母親からの「女優さんやってみれば?」の言葉が背中を押した。
デビューのきっかけはレプロエンタテインメントが2021年から22年にかけて開催していた「レプロ30周年主役オーディション」。高校生の頃にインスタグラムで見つけて応募し、5000人の中から合格をつかみ取った。
演技は未経験だったが、長期に渡るオーディションを通して、吸収していく姿も評価された。当時から倉沢を見続ける担当マネジャーは、「とにかく明るくて、みんな“陽のオーラ”の虜になりました。実際に向き合ってみてからは、本当に真面目でピュア。何事にも一生懸命に取り組むところがすごく魅力的です」と絶賛する。
現在は、現役大学生として俳優と学業の両立の日々を送っている。進学を決意した理由は、胸を張って「英語を話せる」と言えるようになりたかったからだった。
「お芝居に興味を持つきっかけが、幼稚園の頃に見たミュージカル映画『ハイスクール・ミュージカル』でした。サウンドトラックを妹と車で聞きながら熱唱していたおかげで、英語の発音を褒めていただくことが多かったんです。中学では、英語の弁論大会にも出させていただいたり、高校も留学がしたくて選んだ学校でした。留学はコロナでかなわなかったので、大学でもっと英語を勉強したいと思い、進学を決めました」
俳優活動をスタートさせてから2年目を迎えたが、明確に演技との向き合い方が変化したタイミングがあった。
「1年目の冬に、頑張りたい気持ちが先行しすぎて、頭でっかちになってしまい、悩んだ時期がありました。でも、『ロミオとジュリエット』を題材にしたワークショップで、久しぶりに楽しみながら、演技ができたんです。周りの方から『なんでこんな急成長したの?』と褒めていただけて、そのときに、自分が楽しめていないと見ている方にも伝わってしまうんだろうなと気付くことができました。それからは考えすぎず、楽しむことを意識するようになりました」
自身の強みは「自分と向き合う力」だと自負している。
「しんどいことや悩むことはどんな環境でもあると思います。そのときに、自分から逃げずに向き合えることが長所だと思っています。小さい頃から友達に悩みを話すのではなく、母と話すことが多かったんです。母は絶対にポジティブな言葉を返してくれました。母と時間を掛けて話して、解決していくということを小さい頃からやってきました。それがようやく自分の中でもできるようになってきたのかなと思います。たくさん向き合ってくれた母には本当に感謝しています」
今後、演じてみたい役は「自分に近い役」。「ポジティブで楽しいことが好きなので、見ている人がハッピーになれるような作品に、いつか出てみたいです。誰かを救えるとまではいかなくとも、ほっこりしてもらえるような作品と出会えたらいいなと思います」と目標を口にする。
「バレエや英語を活かすような作品にも出演してみたいですし、舞台にも出てみたいです。機会をいただいたものには全部挑戦していきたいです」。まだ何にも染まりきっていない19歳は、前のめりに成長を続けていく。
□倉沢杏菜(くらさわ・あんな)2005年3月18日、神奈川生まれ。22年「レプロ30周年主役オーディション」に合格。23年に『ZIP!』内の朝ドラマ『パパとなっちゃんのお弁当』(日本テレビ系)でドラマ初出演。映画『18歳、つむぎます 私の卒業 -第4期-』、24年にはドラマ『先生さようなら』(日本テレビ系)などに出演した。中学生では生徒会に所属し、数学は苦手ながらも会計を務めた。特技はクラシックバレエ、ダンス、茶道。