山本彩、本番前のルーティンは「なわとび」 30歳になった今も音楽活動「想像してなかった」
元NMB48で、シンガー・ソングライターの山本彩が、5月と6月にソロとして初のアジアツアーを行う。広州、上海、台北の計3都市で4公演を予定。海を渡る前に思いを聞いた。
広州、上海、台北の3都市4公演のアジアツアーを開催する
元NMB48で、シンガー・ソングライターの山本彩が、5月と6月にソロとして初のアジアツアーを行う。広州、上海、台北の計3都市で4公演を予定。海を渡る前に思いを聞いた。(取材・文=幸田彩華)
海外公演まで残り1か月。準備が本格化する時期だ。「セットリストは固まっていない状態」だと言うが、気持ちは高まってきている。
「ソロになってからのある意味、自分の集大成的なものをお見せしたいと思っています。韓国語は独学で勉強していたので、多少の読み書きはできます。中国語はほとんど知識がなくて、あいさつ程度はグループで行かせていただいた時にちょっと学んだ程度です。文法とかそういうのは勉強していきたいなと思っています」
山本にとっての海外公演は2018年10月、NMB48の在籍時以来となる。現地での思い出は、距離感が近いファンとの交流だった。
「空港からお出迎えをしてくれるファンのみなさんの熱さと優しさが印象的でした。移動中には、道案内をしてくれたり、マネジャーさんと一緒に歩いてくれるファンの姿もありました。当時、タピオカが流行っていたので、ファンのみなさんが差し入れしてくれたりもしました。本当に手厚くて温かいサポートをしてくれました。ライブでは、日本語でしゃべっても理解してくれたり、一緒に歌ってくれたり、熱心に聴いてくれる姿が印象的でした。今回、海外公演はソロ活動では初めてで、どうなるか不安もありましたが、期待してくれるファンがいることでライブに対する期待も高まっています」
そして、海外ならでは「反応」も楽しみにしている。
「海外やアジアの方は感情をストレートに表現する感じがします。リアクションも大きく、全身から喜びが伝わるみたいな。すごく愛を感じています」
NMB48のメンバーだった2016年にシンガー・ソングライターの活動を開始。18年11月にグループを卒業した後も、音楽を軸にして活動をしている。音楽を始めたきっかけは、歌姫のアヴリル・ラヴィーンだった。
「最初に見に行ったライブもアヴリルでした。大阪城ホールだったと思うんですけど、幼い時でしたが、脳裏に焼きついています。アヴリルが使っていたギターと似てるギターを買ってもらったり、ファッションもまねしていました。昔は私も金髪ロングのセンター分けだったので、本当にアヴリルキッズでした」
現在30歳。ここまで音楽活動を続けてきたことは想定外だったという。
「想像していなかったですね。感慨深いです。毎年、何かしら大きな出来事があって、何かを達成するたびに、『やりきったな』という気持ちもあります。でも、『それを超えるようなことをまた何かしないといけない』『今までやってきたことよりも新しいこと、すごいことをやっていけるのかな』と思うことが毎年ありますが、何だかんだで音楽を続けていたからこそやれたこと、達成できたことが更新され続けいます。これからも挫折しそうになっても、『まだ叶えられることがある』というのを糧にやっていく感じです」
音楽の虜となり、音楽スクールに通っていた時期もある。小6で書いた将来の目標は「紅白出場」「世界ツアー」だった。紅白にはNMB48時代に出場しており、「アジアツアー」は目標達成に向けた試金石になる。
「『やっとできるな』っていう感じです。うれしさと安堵がありました。実はコロナ前にも1度計画していたんですけど、それは1回ダメになっちゃったので。再び叶うと知った時は、本当にうれしかったです」
国内では数々のソロライブを実現してきた。本番前のルーティンを聞くと、意外な答が返ってきた。
「最近はしっかりと体を動かすようにしています。ホールの場合はなわとびや二重とびをしたりです。ライブハウスの時は階段ダッシュをしています。普通に前とびを5分するだけでもかなりしんどいんですよ」
自身の歌声は「引き出しがないタイプだと思っている」
3か月連続配信リリース第1弾となる楽曲『Nocturnal』の作詞は、山本が担当した。“裏テーマ”は「シンデレラ」だ。
「ちょい悪なシンデレラのイメージがあって、日付が変わってから自分の本性が出てくる。夜になったら自分がやっと出てくるみたいなっていう意味合いを込めて作りました」
歌詞では「♪群れるとか媚びるとか そういうの性に合わない」「寂しそうに見える? ならばそれは勘違いね」「遊び疲れたらただ眠るだけ」などと表現している。自身につながる部分はあるのだろうか。
「結構ありますね。媚びない歌詞とかも自分だなと思っています」
『Nocturnal』を翻訳すると「夜行性」。自身もそうだという。
「夜行性ですね。次の日を考えずに過ごす日は、夜中の4時に寝ています。ただ、9〜10時に起きます。『どんなに寝るのが遅くても、絶対に昼前には起きる』と決めています。(午後まで寝ていると)1日無駄にした気がするので(笑)」
YouTubeにアップされたMVのコメント欄では、「声に艶が出てきたよね」「さや姉の歌声は本当に変幻自在」などと評価されている。うれしく思っているが、自己評価は少し違った。
「自分は歌い方にレパートリーがないというか、引き出しがないタイプだと思っているので、そう捉えてくださってる方がいるならすごくありがたいです。声色を使い分けたりできるわけでもないし、そんなに音域が広いわけでもない。結構、ロックをルーツにやらせてもらってきたんですけど、ロックな曲が似合う声かと言われたら……。自分的にはやりたいことと合ってることがそんなに一致してるとも思ってなくて。だからといって、諦めずにやらせてもらってる感じですね」
シンガー・ソングシンガーゆえに、楽曲制作の苦しみと喜びも感じてきた。
「1個ひらめくと、一気にペースアップするのが分かっているからこそ、出てこないと焦ります。でも、書き終えてレコーディングした時、披露した時の節々で、他には代え難い喜びや達成感があります。私の場合は曲先なので、先に言葉があるわけじゃないので、『決められたメロディーの中に伝えたい言葉を詰めないといけない』という作業が必要になってきます。(作詞は)家で。結構アナログなんですけど、歌詞に使えそうな単語とかフレーズ、熟語とかをノートに書き出して、最終的に組み立てていく感じです」
音楽の受け取り方など、どのように届けたいと考えているのだろうか。
「『山本彩ってこうだよね』って、それぞれの中にあるもので、みんなが一致するものじゃないと思うんです。それはそれでいいなと思っていて、最終的にどんなライブをしようと楽しんでもらうことが一番、自分にとっては重要なことかなと思っています。まずは自分が楽しんで、『楽しんでもらえたらいいな』と思っています。ステージを見て、心配させたり、『こっちまで緊張する』みたいなことは、たまに言われたりとかするんですけど、そう思われてるって、『まだまだだな』と思います。ライブ前のドキドキはいいですが、緊張させるのって違うかなと。私自身もライブを重ねても緊張はめちゃくちゃしますし、緊張感は正直なくならないと思いますが、堂々とした姿は見せたいなと思います」
□山本彩(やまもと・さやか) 1993年7月14日生まれ、大阪府出身。2010年にNMB48に加入しキャプテンを務め、グループ卒業後はシンガーソングライターとして活動。2月に「Nocturnal」、3月には「ブルースター」と3ヶ月連続配信リリース中。3月15日に大阪・フェスティバルホール、3月23日に東京・NHKホールにてホールツアーを開催し、5~6月にはソロとなって初のアジアツアーの開催が決定している。