新幹線より高いことも…波紋呼ぶグリーン車の新料金体系、損をしないための乗り方とは

3月16日のJRダイヤ改正で、首都圏の普通列車グリーン車の料金体系が抜本的に変わった。場合によっては特急や新幹線よりも高いグリーン料金が生まれ、戦略的に購入しないと割高になってしまう。鉄道でも“情報弱者”には厳しい時代になりつつあるようだ。

グリーン料金が抜本的に変わり、チケットレス特急券と大差なくなった(写真はイメージ)【写真:写真AC】
グリーン料金が抜本的に変わり、チケットレス特急券と大差なくなった(写真はイメージ)【写真:写真AC】

普通列車グリーン料金の体系を一新

 3月16日のJRダイヤ改正で、首都圏の普通列車グリーン車の料金体系が抜本的に変わった。場合によっては特急や新幹線よりも高いグリーン料金が生まれ、戦略的に購入しないと割高になってしまう。鉄道でも“情報弱者”には厳しい時代になりつつあるようだ。(取材・文=大宮高史)

 JR東日本で、東海道線・高崎線・宇都宮線・横須賀線・総武快速線・常磐線で運用されている普通列車のグリーン車。西は沼津から北は群馬・栃木・茨城に至るまで、首都圏のJR幹線に定着している。

 このグリーン料金の体系見直しが昨年秋に発表され、3月16日のダイヤ改正で導入された。これまで平日と土日で切り替わっていた料金を、曜日ごとではなくSuica(モバイルSuic含む)か紙の切符かを基準にするようになった。

 改正前は平日料金と土休日ダイヤ時のホリデー料金の2種類が適用され、

平日料金:50キロまで780円、51キロ以上1000円
ホリデー料金:50キロまで580円、51キロ以上:800円

と、ホリデー料金の方が安かった。かつ、(Suicaか紙の切符かを問わず)事前購入であればこの料金、車内で乗務員から購入する場合は260円が加算されていた。

 改正後の体系は、Suica利用の場合のSuicaグリーン料金と紙の切符による通常料金に分かれる。そして乗車距離101キロ以上という新しい区分ができた。新体系では、

Suicaグリーン料金:50キロまで750円、51キロ以上100キロまで1000円、101キロ以上1550円
通常料金:50キロまで1010円、51キロ以上100キロまで1260円、101キロ以上1810円

となる。101キロ以上という長距離、かつSuicaではない通常料金では1810円と、従来のホリデー料金51キロ以上と比べると2倍以上の値上がりだ。

 おかげで、東京~熱海間をグリーン車通常料金で移動すると1810円になり、JR東海の同区間の東海道新幹線自由席特急料金1760円よりも割高になる現象まで生じた。ネット上では、「まさか新幹線の方が安いとは…」との声も上がっている。在来線特急と比べても、101キロ以上のグリーン料金は「えきねっと」を通じて購入するチケットレス特急券よりも割高に。チケットレス特急券は発車時刻前に購入すると「トク割」が適用されて35%割引になり、常磐線「ひたち」「ときわ」では東京都内-水戸間の特急料金が1020円と、グリーン料金1550円よりも安くなった(東京~水戸間の営業キロは122.1キロ)。

1駅手前で…東京から100キロ越え熱海・高崎・宇都宮はグリーン料金跳ね上がる

 この、新料金体系で登場した「101キロ以上」という区分が、首都圏JR線の乗客にとっては小憎らしい距離でもある。

 東京駅から東海道線に乗ると、熱海駅の一つ手前の湯河原駅までは100キロ以内だが、熱海駅は104.6キロとグリーン料金が跳ね上がる。高崎線も東京・上野から100キロ以内の境界が倉賀野駅と高崎駅の間にあり、高崎まで通しでグリーン車に乗ろうとすると料金が上がってしまう。宇都宮駅も東京駅からは営業キロ104.6キロで、北関東3県の中核都市はいずれも、東京都心からのグリーン料金が大幅に値上がりするエリアに入ってしまった。

 なんだか小ずるい利用者いじめともとれる施策だが、100キロまでのSuicaグリーン券利用であれば改定前と変わらない料金ベースで、50キロまでなら30円ではあるが値下げになった。一方で、100キロを越すような長距離の移動では、チケットレス特急券の利用を進めようとする意図がうかがえる。

 常磐線・中央線を皮切りにチケットレス特急券の適用エリアは順次拡大しており、今年は1月から房総エリアでも導入が始まり、6月30日まではチケットレス料金よりもさらに100円割引されるキャンペーンを適用中。これを使うと東京~君津間の普通車特急料金は820円で、旧グリーン料金での平日料金1000円より安い。JREポイントでも乗車できるチケットレス特急券のメリットはますます拡大しており、頻繁に特急が走っている常磐線・房総各線で普通列車グリーン車を選ぶメリットは薄い。みどりの窓口などの有人サービスを縮小し続けているJR東日本にも、車内改札や駅での係員による発券の手間を省くメリットがあり、方針は一貫している。

 割を食うのは、101キロ以上の長距離を普通列車で、それも快適な座席で移動したいとこだわる乗客だが、Suicaグリーン券を使いつつ、100キロを越えない区間に絞るという工夫をせざるを得ない。高崎・宇都宮線なら赤羽や池袋、東海道線なら横浜から乗降する、あえて途中下車して散策してみる、といった節約術があり得る(東海道線で東京からぎりぎり100キロ内の湯河原駅も、湯河原温泉に代表される景勝地だ)。

中央線グリーン車への影響は?

 また、24年度末には中央快速線でグリーン車が運行開始予定だが、運用区間となりそうな東京~大月間は87.8キロで、101キロ以上の料金適用はない。立川・八王子はともに東京から50キロ以内で、50キロを越えるのは高尾駅から西となる。こちらでは東京・新宿から大月までの停車駅では「かいじ」で適用のチケットレス特急料金は660円で、グリーン券よりも安くなる。となると、グリーン車導入後も特急に乗客が集中しかねず、快速電車のグリーン料金になんらかの割引キャンペーンがなされるかもしれない。

 いずれにせよ、節約のためにはSuicaやえきねっとを利用してのチケットレス乗車が必至。何も考えず、ただ漫然と券売機で切符を買ったり、来た列車に乗るだけでは損をする時代になっている。

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