阿部サダヲ、12年ぶり再演の松尾スズキ作品に4度目の出演「少し疲れて帰っていただく舞台に」
7月9日から東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー内)で上演されるCOCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024ー歌舞伎町黙示録ー』の配役が、22日に発表された。俳優の阿部サダヲ、黒木華、荒川良々、岸井ゆきのらが出演する。併せて、公演ビジュアルも解禁となった。
7月9日スタート『ふくすけ2024ー歌舞伎町黙示録ー』
7月9日から東京・THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー内)で上演されるCOCOON PRODUCTION 2024『ふくすけ2024ー歌舞伎町黙示録ー』の配役が、22日に発表された。俳優の阿部サダヲ、黒木華、荒川良々、岸井ゆきのらが出演する。併せて、公演ビジュアルも解禁となった。
同作は、小説家、エッセイスト、脚本家、映画監督、俳優とマルチに活躍する松尾スズキが1991年に“悪人会議プロデュース”として初演したもの。薬剤被害によって障がいを持った少年“フクスケ”をめぐり、さまざまな境遇の登場人物たちが、底なき悪意と情愛に突き動かされながら、必死にもがき生きる姿を力強く描いた壮大な人間ドラマ。98年に松尾が“悲劇”をテーマに作品を創り上げる『日本総合悲劇協会』公演で再演し、2012年にBunkamuraシアターコクーンで再々演された。
12年ぶり4度目の上演となる本公演は、サブタイトルを“歌舞伎町黙示録”と題し、台本をリニューアル。フクスケが入院する病院の警備員コオロギと、盲目のその妻サカエの夫婦を軸に、物語を展開する。
『ふくすけ』に3度目の出演となる阿部は、とある病院の怪しい警備員コオロギを演じる。コオロギを献身的に愛する盲目の妻・サカエを黒木、妻を探すエスダヒデイチを荒川、物語の鍵となる身体障がいを持った少年フクスケを岸井が演じる。その他、皆川猿時、松本穂香、伊勢志摩、猫背椿、宍戸美和公、内田慈、町田水城、河井克夫、菅原永二、オクイシュージ、秋山菜津子が出演。また、松尾もフクスケを監禁していた製薬会社の御曹司・ミスミミツヒコとして登場する。
阿部は「僕は『ふくすけ』に2回出ているのですけど、次にやるならもうフクスケ役ではないなと思っていたので、今回はコオロギと聞いて、なるほどな! と思いました」と語り、「この作品は熱量の高い舞台なので、見終わったお客さんがすごく疲れているという印象があるんですけど、2024年だからこそいろいろと考えさせられて、やっぱり少し疲れて帰っていただく舞台になるような気がします(笑)」とコメントしている。
解禁された公演ビジュアルは、東京公演の会場・THEATER MILANOZaがある歌舞伎町に鎮座する、いびつな福助人形を中心に、さまざまな境遇の人々とその思惑が交錯するカオスな世界を表現している。
以下、出演者コメント全文。
○コオロギ役:阿部サダヲ
「僕は『ふくすけ』に2回出ているのですけど、次にやるならもうフクスケ役ではないなと思っていたので、今回はコオロギと聞いて、なるほどな! と思いました。僕が最初に見た『ふくすけ』でコオロギを演じていたのが松尾さんで。すげえ役だな、やってみたいな! とその時に思ったので、うれしいですね。松尾さんが20代の時に書いた作品だけれど、今も古さを感じない、すごいものを残しているなと改めて思いました。そして今回、歌舞伎町の芝居を、歌舞伎町でやることにも意味があると思います。1991年に松尾スズキという人がこういうものを書いていたんだ! と振り返っていただきたい。この作品は熱量の高い舞台なので、見終わったお客さんがすごく疲れているという印象があるんですけど、2024年だからこそいろいろと考えさせられて、やっぱり少し疲れて帰っていただく舞台になるような気がします(笑)」
○サカエ役:黒木華
「サカエという面白味のある役を演じられることもうれしいですが、松尾さんの作品に出られることがなによりうれしいです。前回の『ふくすけ』も拝見しましたが、とにかく“エネルギーが降りかかってくる!”という印象でした。今の時代では不謹慎とも言われそうなことのオンパレードですが、そのエネルギーの濁流の中にはしっかり伝わってくるものがあって、とても感動したことを覚えています。阿部サダヲさんはすごく尊敬している役者さんで、初めてご一緒するので、稽古場や本番での姿を、余す所なく見尽くしたいと思います。一演劇ファンとして、皆さんとの共演がとても楽しみです。お客様には、今までにない感情の波を味わっていただけたらなと思っています」
○エスダヒデイチ役:荒川良々
「初演は映像で見たことがあって、とにかく『すごいものを見たぞ』という放心状態になりました。劇団にとって特別な作品に自分が出る日が来るなんて想像もしていなかったし、新しい『ふくすけ』に立ち会えるのがうれしいです。THEATER MILANO-Zaがある歌舞伎町には個人的な思い出が多く、初歌舞伎出演となった「オフシアター歌舞伎」はライブハウスでやりましたし、自分が初めて主演を務めた映画『恋する幼虫』を見たのもミラノ座でした。あと、田舎から出てきたばかりの90年代、おすぎさんを見かけたのも歌舞伎町……ピーコさんではなく、あれは間違いなくおすぎさんでした。確信があります。歌舞伎町の物語を、ぜひご当地でご覧ください」
○フクスケ役:岸井ゆきの
「出演のお話をいただいた瞬間は、もうすっごく! うれしくて、『夢がかなうとはこのことか』と喜びに胸躍りました。でも演じる役が『フクスケ』と知った途端……ただただ緊張の日々に急変しました。先日、松尾さんとお話した時に初めて知ったのですが、歴代のフクスケを演じられた温水洋一さんも、阿部サダヲさんも、14歳の設定だったとか。また新しい不安に襲われかけましたが『大丈夫、いける』と演出家からお墨付きをいただきましたので、ここは自信を持って堂々と演じたいです。私にとっての松尾作品は、見る人を信じ、伝えることを諦めない世界。稽古が本当に楽しみですし、皆さんと相談しながら、勇気を持って飛び込んでいきたいです」
○タムラタモツ役:皆川猿時
「お客さんとして『ふくすけ』の初演をスズナリで見てまして、もうね、なんちゅうか、グラグラ沸き立つような、いやー、あの衝撃は今でも忘れられません。中でも林和義さんが演じていたタムラタモツは強烈でした。狂っているのに知性を感じるというか、もうね、最高でした。そんな大好きなキャラクター、タムラタモツを演じるのは今回で3度目。再演のとき、松尾さんに『もっと面白くやってくれ』と稽古場で言われて、セリフの合間合間に一発ギャグをしていたら「『そういうことじゃないよ……』と冷たい目で見られたのも、今では良い思い出です(笑)。あの時はあの時で、ええ、必死だったんです。そんなわけで、今回も一生懸命、面白くてカッコいいタムラタモツを目指して、膝を労わりながら、ええ、大切に演じたいと思います!」
○フタバ役:松本穂香
「松尾さんと以前ご一緒させていただいた番組がとても楽しかったので、松尾作品の独特の世界観が大好きになりました。今回の『ふくすけ』も、制限の多い今の世の中、不謹慎なものも必要だなと思えたり、『別にいいじゃん』という気持ちになれたり、面白くて、でも痛くて、いろんな人のことを考えさせられる不思議な作品だなと思います。私が演じるフタバは、登場人物の中では一番まともだと思うんですね(笑)。笑わせながらも結構圧迫感のある作品の中で、フタバは芯を突いた言葉をいっぱい投げかけてくるので、そこを十分に考えながら演じたいなと思っています。個性の強い方ばかりの座組の中で、物怖じせずにバーンと自分を出せたらいいなと。新しい挑戦を精一杯楽しんで、エネルギー全開でやっていきたいと思います」
○エスダマス役:秋山菜津子
「過去に上演された『ふくすけ』を拝見しているので、まさか自分がやることになるとは……! と驚きましたが、とてもありがたく思っています。また今回は、以前とはちょ
っと違う『ふくすけ』になるということなので楽しみですね。松尾さんが作り出すカオスな世界は、ほかの誰にも真似できない独自の魅力があると思います。私が演じさせていただくエスダマスは、これまで拝見してきた印象では“疾走しているな”というイメージ。今回も、“狂気に満ちた、周りを巻き込んで疾走していく女”とうかがっています。物語の舞台と同じく劇場も歌舞伎町にあるということで、ダークな、だけどきらびやかな世界なのだろうなと。その場所でちゃんと自分も生きていけたらなと思っています」
○作・演出/ミスミミツヒコ役:松尾スズキ
4度目の上演である。29歳の時、原稿用紙に鉛筆で書いた戯曲を、61歳のわたしが、パソコンで打ち直して書き改めた。よくこんな激しい戯曲を書いたものだと戦慄したり、若すぎるよ君! と、言うてもせんないことを言うてみたりしながら。今回はコオロギとサカエというキャラクターを主軸にすえてみる。そうしたら、複雑過ぎるストーリーに強めの芯が入った気がした。昔ならいざしらず、自分が客ならこの程度にはわかりやすい芝居が見たい。歳をとったがゆえに優しくもなった。ただ、わかりやすさばかり求める今の風潮は大嫌いである。まだ、攻められる。わたしにも意地がある。今考えられる最高のキャストがそろった。この布陣で、THEATER MILANO-Zaという癖だらけの城を攻め落とす。そんな気分で、よろしくお願いします」