タワマン住民が巻き込まれた騒音トラブル 「限界を突破」した上階男性がキレた理由

集合住宅で最も多いトラブルが「騒音」。戸建て住宅のように隣家と距離がないマンションでは、防音対策が難しい。また、音に対する許容範囲が人によって違うこともあり、洗濯機を回す、掃除機をかける、といった生活音に対して苦情が来ることも多い。

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「眠れない」と鬼の形相で現れた上階の男性

 集合住宅で最も多いトラブルが「騒音」。戸建て住宅のように隣家と距離がないマンションでは、防音対策が難しい。また、音に対する許容範囲が人によって違うこともあり、洗濯機を回す、掃除機をかける、といった生活音に対して苦情が来ることも多い。

 そんな騒音問題で悩みを抱えているのは、首都圏某所のタワーマンションに住む佐竹薫子さん(仮名・42歳)。関西在住だったが、夫の転勤で関東へ。会社から家賃補助が出るため少し背伸びをし、賃貸ではあるものの憧れだったタワマン暮らしに踏み切ったという。

「住み始めてしばらくは平和でした。小学校高学年と低学年の子どもたちは転校した学校に慣れ、私も関東での暮らしに慣れ、ホッと一息。あと数年はこちらでの暮らしが続くので、これなら問題なく過ごせるかな、なんて思っていたんです。

 でもある夜、深夜2時くらいのことだったでしょうか、夫も私もぐっすり眠っていたところ、呼び鈴を何度も押す音に起こされたんです。火事か何か緊急事態が起こったのかと思い、慌てて玄関ドアを開けたら……」

 立っていたのは、上階の住人と名乗る男性。真っ赤な顔で薫子さんとその夫をにらみ続けていたという。

「相手が言うには『毎晩、床を突き上げるような音がずっと響いていて眠れない。今日もずっと音が続いている。今すぐ天井をたたくのをやめろ!』と。夫も私もすでに寝ていたこと、確かに子どもたちがいるときは多少うるさいかもしれないが先週から祖父母の家に行っていて留守なこと、そもそも私たちは天井を突き上げていないこと……それらをお話したのですが、相手は限界を突破しているような感じで怒鳴る一方。まったく話になりませんでした」

 隣人が察して警官を呼んでくれたため事なきを得たというが、上階の男性は警官にも食ってかかる始末。結局、引きずられるようにして去っていったという。

「怒鳴り込まれるようなことは、本当に何もしていないんですけどね。ただ、ネットで少し調べた夫は『ウォーターハンマー現象ってやつじゃないかなぁ?』と言っていました」

原因不明な騒音が起こることもある

「これは、タワマンをはじめ不動産“あるある”な話ですね」。そう語るのは、20年以上のキャリアを持ち、不動産業界に精通する中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんだ。

「まず、ウォーターハンマー現象というのは、水道管を水が通る際に激しく管にぶつかり、ハンマーでたたいたような音が生じる現象です。これはタワーマンションだけでなく、一般家庭でも起こりうる現象で、水道管内の圧力変化が原因とされています。つまり、この音を止めるためには、水道栓を圧力変動がゆるやかなものに交換するなどの工事が必要になります」

 もちろん、交換が必要なのは上階の住人の部屋の水回りである。しかし、そうした対応で解決するかどうかは「神のみぞ知る」状態だと姉帯さんは続ける。

「そもそも原因がウォーターハンマー現象かどうかは詳しく調べないことには分かりません。上階の人が言うように、深夜帯にしょっちゅう音がするというのであれば、ウォーターハンマー現象が原因ではない可能性が高いのではないでしょうか。上階の方は、下から響いてくる音を聞き、原因が薫子さんのご家庭にあると思い込んでいたようですが、隣の家や斜め下の家から響いている可能性もあります。また、PS(配管スペース)を通してまったく別の原因から音が響くこともなくはありません。あまり苦情が続くようであれば、上階の方と協力し合い、騒音の原因を突き止めたほうがいいでしょう。

 なお、今後に引きずりたくないのであれば、上階の方への気配りは忘れずに。苦情のきっかけとなったのは深夜の騒音でも、普段から薫子さん一家の騒音(お子さんが騒ぐ音など)に悩まされていて、結果的に怒りが爆発してしまった可能性もあります。あいさつをきちんとするなど接点をできるだけ持ち、仲良くなっておくことをおすすめします」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。

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