【格闘代理戦争】青木真也、「褒める」時代に“弟子”を叱ったワケ「バカにしていないんです」

ABEMA格闘ドキュメンタリー番組『格闘代理戦争-THE MAX-』の1回戦が15日、放送された。生放送中に監督をいじり、衝撃発言も連発していた青木真也監督と推薦選手・中谷優我は1回戦を突破。これまでも出演経験のある青木監督に番組にかける思いや今後の展開を聞いてきた。

監督辞退宣言をした青木真也(左)【写真:徳原隆元】
監督辞退宣言をした青木真也(左)【写真:徳原隆元】

「今回出ている子には輝いてほしい」

 ABEMA格闘ドキュメンタリー番組『格闘代理戦争-THE MAX-』の1回戦が15日、放送された。生放送中に監督をいじり、衝撃発言も連発していた青木真也監督と推薦選手・中谷優我は1回戦を突破。これまでも出演経験のある青木監督に番組にかける思いや今後の展開を聞いてきた。(取材・文=島田将斗)

 3年ぶりに復活した同番組。今月8日の初回放送で注目されたのは青木がいきなり推薦選手を泣かせるシーンだった。他の監督が自己紹介的なVTRだったなか、TEAM青木だけ緊張感が違った。「褒める」が時代の主流のなか「叱る」を選択したワケをこう明かす。

「なんでお前は同じ“ここ”でやってて、俺と作んねぇの。なんでお前俺が投げてるのに作れねぇの。『仕事するんだったらちゃんと仕事しろ』『やってくれないと困るんだよね』っていうのを強く伝えてる。それが僕のフェアだし、イーブン。だから(中谷を)バカにしていないんです。だから、彼は人のものを借りてやってるけど、何借りてるんだよって思ってるし。自分の名前で立ってみろよって思ってるし、(本人も)思ってほしい」

 気持ちを見せない推薦選手にかけた言葉は「格闘技やらない方がいい」。1回戦前日に行われた計量の囲み取材では「負け確定」と吐き捨ていた。それも本人を思っての動きだ。

「彼が試合だけをできるように作ってる。一生懸命やってるからなんとかしたい。形にしてあげたい。うまくやりつつも突き放して……。これはリアルな感情として彼(中谷)は僕と一緒に仕事をすることによって僕(青木)のことが怖かったりとか嫌な存在になっているのは確かだと思っています」

 今回の生放送ではこれまでと真逆とも言える立ち回り。トーナメントスタート前のオープニングでは秋山成勲の左手小指にはめてある“ギラギラ”な指輪をいじり、笑いを誘う。さらにはかつて同じジムに所属していた岡見勇信&中村倫也へ仲直りしたのかを尋ねヒヤリとさせた。

「前回、前々回のシリーズほどのめり込めていないんです。これまではもう没入できている。完全に入り込んでいたんだけど、今回は全体が見えてしまっている。引きで見えてるからこそ、ちょっと面白いことがあったらいじれるし、バランスを取れているのかもしれないです」

秋山成勲と“共闘”の可能性も示唆【写真:徳原隆元】
秋山成勲と“共闘”の可能性も示唆【写真:徳原隆元】

今後の展開明かしてニヤリ「秋山成勲と一緒にセコンドに付くかも」

 例えが分かるかどうか分かりづらいかもしれないと言いつつ、往年の格闘ファンには刺さる例えでこの感情を説明する。

「前回は(映像作家の)佐藤大輔のDREAM。作っている作品に対して没入してる。だから俺はあのときの佐藤大輔の作品の方が俺は面白いと思う。DREAMのあおり映像は評価されていないのかもしれないけど、『すげぇな』『こんなことやっちゃうんだ』って思う。いまの佐藤大輔の映像は『当てるもの作るのすごいな』って引きで見えているから褒めちゃうの。でも没入ではないんだよね」

 ここまでの放送で試合以外の部分で展開を作っているの監督は青木ただひとりだ。没入できていないのは自身にとって良いことなのか。

「腕は確実に上がっている。演者としての部分はできているなとは思うけど、やっぱりもう一歩先に行かないとという気持ちはとても感じますね」

 それでもトーナメント出場者同士が“場外”で争うような視聴者に分かりやすい構図は作りづらくなっているという。

「BreakingDownができたおかげで、揉めるような画が作りづらくなった。二番煎じって思われちゃうから。実はBreakingDownのおかげで1個制限されちゃって。『コノヤロー』みたいなのは使えないんだよね。めちゃくちゃやりづらい」

 だからこそ今回の青木はユーモアにあふれていた。

 推薦の中谷は対戦相手を3Rの間、漬けて完勝。試合後青木は「感動しました!」と無理やりな握手。さらに「ここでひとつお伝えしたいと思います。ここからはひとりで頑張ってください」と突き放し、中谷を困惑させたプチハプニングも起きた。「試合が良すぎちゃった。ここで(試合前のように)叩いたら偽物になっちゃうなって」と心境を明かした。

 今後TEAM青木で考えている“作戦”もある。「秋山(成勲)のところ行って秋山とスパーさせたり、秋山がやってくれるなら一緒にセコンドに付くかもしれない」とかつての敵との共闘を示唆しニヤリと笑った。

 今年1月には“最後の闘い”と銘打って出場した試合も終わり、この番組にかける思いがより強くなっている。推薦選手だけでなく他の監督・選手に「真面目にやれ」と喝を入れるのにもワケがある。

「選手には当然勝ってほしいが全体が面白くなればいいと思ってる。(これまでに出演した)平田樹にしてもユン・チャンミンも自分の推薦選手ではないけど、自分の作ったものだと思う。自分も没入して番組を作ったと思ってるから。だから誰が優勝するか分からないけど、優勝した子はもちろん、今回出ている子には輝いてほしい。1回戦で負けた子も世に出て活躍してほしい。それでサポートできることがあったらサポートしたい」

 言いたいことを「言えない」ではなく「言わない」世の中になってきている。それでも信念を曲げない青木は稀有な存在だ。ときに記者の質問も退けるが本人はどう感じているのか。

「結構リアルで仕事がなくなってもいいと思ってる。自分が面白いと思ったことで使えなくなったらそれでいい。でも、これはやぶれかぶれなわけじゃない。売れるためにやるんだったらやめようって思ってしまっているんです」

 そう言いつつ「“無敵な人”になっちゃった怖さはありますよね」と吐露し、次の出番へ向かっていった。

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