朝倉未来戦にこぎつけた平本蓮、本来なら“超格差マッチ”…榊原CEOが認めた「カリスマ性と求心力」
4年前から始まった因縁がついにリングで決着する。格闘技イベント「RIZIN」は16日、東京・六本木ヒルズアリーナで緊急会見を行い「朝倉未来vs平本蓮」を「yogibo presents 超RIZIN.3」(7月28日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)で行うことを発表した。なぜ平本蓮と朝倉未来の対戦は実現したのか。
朝倉未来vs平本蓮は「存在意義と生き様をかけたカード」
4年前から始まった因縁がついにリングで決着する。格闘技イベント「RIZIN」は16日、東京・六本木ヒルズアリーナで緊急会見を行い「朝倉未来vs平本蓮」を「yogibo presents 超RIZIN.3」(7月28日、埼玉・さいたまスーパーアリーナ)で行うことを発表した。なぜ平本蓮と朝倉未来の対戦は実現したのか。
倍以上の戦績差がある。31歳の未来は2012年にMMAデビューしこれまでの戦績は22戦17勝(8KO/1一本)4敗。対する25歳の平本は20年にMMAデビューし6戦3勝3敗の実績だ。仮にRIZINフェザー級にランキングがあるなら、未来はトップ3クラスだが、平本はおそらく10位以内には入らないだろう。RIZINでなければ実現しないカードだ。
この試合は榊原代表いわく「いまの(時代の)瞬間の中のマッチメイク」。誰もが「いつかはやる」と思っていたが、いかにして平本は実現にまでもっていったのか。
平本がかみつき始めたのは4年前の2020年。未来は自身がMMAをスタートするきっかけにもなった存在だった。昨年12月には「とにかくかみついて喧嘩を売って盛り上げてやろう」と実現へ向け行動していたことを明かしていた。
当初は平本の行動は煙たがられていたが、未来にかみつくだけではなく、大人にも媚びない姿が令和の若者に響きファンは徐々に増えていった。
そんななかで一気に世論を実現へと近づけたのが未来とYA-MANのプロキックボクシング戦だった。本職ではないキックの試合で1R・KO負けしてしまった未来。現地で観戦していた平本は未来の敗戦に悔しがり、密着カメラに対しても不機嫌に。「あいつヘマしやがった」と感情をあらわにした。
平本のこの姿は話題に。ネット上では「自身が対戦したかった朝倉未来と先にYA-MANが対戦した上、さらに負けてしまった」という事実を突き付けられた平本への同情の声が多く上がっていた。
そして昨年12月のファンの間で「渋谷事変」と呼ばれている演説だ。未来をKOしたYA-MANと対戦することになった平本は「今日は本音を皆さんに語ろうかな」と会場に詰めかけたファンを一気に引き込み、未来への熱い思いを吐露。「絶対に朝倉未来とは試合したいです」と普段のナイフのように鋭いトラッシュトークではなく胸の内を明かした“スピーチ”に大歓声。会見後にはファンに囲まれもみくちゃになっていた。
RIZINの榊原信行代表はそんな平本について、カード発表後の囲み取材でこう明かす。
「本当にいま、カリスマ性もあるし求心力もある。ある種ライフスタイルがファッションリーダーみたいになってますよね。プロのスポーツ選手ってファンがその選手のライフスタイルをまねしたい。そういう求心力で言うと平本蓮ってすごい。
だからRIZINのなかでも存在感のある選手に成長していて、そこに実力が追い付いてきている状態。そもそもキック時代から素晴らしい戦績の選手であるんだけど、MMAファイターとしてアジャストできているんだろうなと。いまの瞬間だから2人が戦うに値すると判断しました」
その上で4年前は「こうなるとは全く考えてはいませんでした」とうなずいていた。
RIZINはこの興行で「PRIDE」超えを狙っている。戦績や直近の実績だけ見たらコアな格闘技ファンは納得できないかもしれない。しかし、このカードこそがRIZINがランキング制を導入していない理由といっても過言ではない。
「この試合はそこまで溜められるカードではないです。戦績とか直近で誰に勝っているのか。ひもを解きだすとどうなの?っていう感じになる(笑)。でも、『この2人の戦いが見たい』とファンの心を動かすのは単純な強さだけではないんです。他の選手には負けてもいいけど、こいつだけには負けたくない。アスリートとしての戦いというよりは、それぞれが引退を口にしてしまう、存在意義と生き様をかけたカードになると思います」
新型コロナウイルスが蔓延し緊急事態宣言も発令されていた4年前。ファンもリアルで格闘技を観る・することが制限され、選手を生み出すジムの経営がひっ迫した。そんな時期に消滅するどころか新たなファンを作り、成り上がり続ける。RIZINファイターを体現しているのは間違いなく平本蓮だ。