Aマッソ・加納愛子が脚本家デビュー “処女作”に込めたスナック論「他人に興味を持つだけで人生が面白くなる」

お笑いコンビ・Aマッソの加納愛子が、脚本家デビューすることが分かった。4月4日に放送開始の中京テレビ連続ドラマ『スナック女子にハイボールを』(木曜深夜1時4分、TVer、Locipo他で配信)が初めて手掛ける作品になる。加納はAマッソのネタ作りを担い、エッセイなどで文才を発揮しているが、35歳にして新たな挑戦。放送前に脚本作りの苦労、手応えなどを語った。

取材に応じた加納愛子【写真:ENCOUNT編集部】
取材に応じた加納愛子【写真:ENCOUNT編集部】

4月4日スタート、中京テレビ連続ドラマ『スナック女子にハイボールを』を担当

 お笑いコンビ・Aマッソの加納愛子が、脚本家デビューすることが分かった。4月4日に放送開始の中京テレビ連続ドラマ『スナック女子にハイボールを』(木曜深夜1時4分、TVer、Locipo他で配信)が初めて手掛ける作品になる。加納はAマッソのネタ作りを担い、エッセイなどで文才を発揮しているが、35歳にして新たな挑戦。放送前に脚本作りの苦労、手応えなどを語った。(取材・文=大宮高史)

『スナック女子にハイボールを』はワンシチュエーションコメディー作。社会で生きにくさを感じ、人間関係に疲弊したアラサー女性が、偶然に入ったスナックでママからの教えや常連客との交流で生きがいを見出していく。山口紗弥加が演じるスナックのママと、スナックに通う北香那のアラサー女子によるダブル主演。ストーリーを考えた加納は、お笑いのネタ作りと脚本作りの違いを語った

「お笑いでは『ウケるか、スベるか』しか結果がないですが、ドラマですと人それぞれ、いろんな感情を持って評価してもらえることが面白いです」

 作品については、「他人との偶然のコミュニケーションの面白さをつきつめた会話劇」と説明した。

「スナックって、お客さん同士の世代を超えた会話ができるところですから、くだけた会話から本質に迫ったり、物事が解決することもあります。『おっさんって、話してみるとうざくないな』とか、逆に上の世代からは『若い子の感覚も俺らと根源的には同じだな』と共感したり。他人に興味を持たない人も少なくない世の中ですが、『他人に興味を持つだけでこんなに人生が面白くなる』というテーマも込めました」

 実はお酒が苦手な加納だが、執筆のために友人や後輩とスナックを巡って研究を重ねたという。

「あまり行ったことがなかったので、『ママってうっとうしいのかな』と思っていたんです。でも、適当にしゃべっていてもいいし、何をしてもよくて、社会の縮図でもありますね。相方の村上(愛)はお酒好きで、飲むとどんどん本音を言ってくれるタイプで(笑)、そういう人々の多面的な性格を見られるところも脚本の参考にしました」

 その上で、ドラマで作り上げたスナックのコンセプトは「お節介」だと明かした。

「今は『お節介』ってあまりいい意味では使われないですが、生きていると自分1人ではどうにもならないで、助けられる部分もあります。おうちでエンタメを1人で楽しむことができるのも、見えないところで社会とつながっているからであって。『世話を焼かれるのも悪くない』と思えるところもスナックの良さです」

会話劇の台詞作りに生きたAマッソでのネタ作り

 44歳の山口と26歳の北が演じるママと客のコンビ。加納は「『こんな友だちがいたらいいよね』と思って、書いていて楽しかったです」と振り返った。

「若い人って、上の世代とは説教やアドバイスを受ける形でしか関われていないかもしれませんが、会話ってもっと面白くてむだなやりとりで関係が濃くなっていったりします。主演のおふたりも各話ごとに弾けたり、いろんな感情を見せていただけると思います」

 Aマッソでのネタ作りも、会話劇の台詞作りに生かせたという。

「私はコメディーって、女性側は受け手になって笑いを取る展開が多いなと思っています。『そこを私の脚本で打破したいな』という裏テーマを持って書きました。山口さんと北さんに『こんなこと言わせたら面白いだろうな』とほくそ笑みながら書いています(笑)」

 バカリズムなど、脚本家としても活躍している先輩芸人についての思いを聞かれると、「すごく意識してます」と笑って即答した。

「でも、他の方の作品と無理に比較しないで、『無理だ』と思ったら自分の特技を伸ばしたいです。そして、『アイデンティティにしよう』と思いながら(脚本の)勉強をさせていただいています」

 新たな挑戦で忙しさは増した。

「実は昨年末から執筆に着手してまだ終わっておらず…自分の遅筆ぶりにビビりながら頑張っています(笑)」

 とはいえ、「次の脚本」への意欲もある。

「機会があったら、個人的に大嫌いな人間を主人公に据えてみたいですね。書いたものに愛着を持ちたくなるたちなので、いい人ばかり書きたくなるんですが、正反対の作品も書いてみたいです」

 35歳の春。今作を機に、加納の可能性が広がっていく。

□加納愛子(かのう・あいこ) 1989年2月21日、大阪府生まれ。同志社大中退。2010年に幼なじみのむらきゃみ(村上愛)とお笑いコンビ・Aマッソを結成。ネタ作りも担う。テレビ東京系『正解の無いクイズ』、MBSラジオ『Aマッソのヤングタウン』にレギュラー出演中。著書にエッセイ集『イルカも泳ぐわい。』、小説『行儀は悪いが天気は良い』、小説集『これはちゃうか』がある。155センチ。血液型B。

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