王座陥落の神田コウヤ「失望してほしくなかった」 生徒の前で見せた“素”と悔し涙
格闘技イベント「DEEP 118 IMPACT」(東京・後楽園ホール)が9日、行われている。セミファイナルのDEEPフェザー級タイトル戦では王者・神田コウヤ(パラエストラ柏)が挑戦者・青井人(BLOWS)に僅差で判定負け。ベルト防衛とはならなかった。試合後の神田に心境を聞いた。
昨年は国際戦を経験…初の防衛戦
格闘技イベント「DEEP 118 IMPACT」(東京・後楽園ホール)が9日、行われている。セミファイナルのDEEPフェザー級タイトル戦では王者・神田コウヤ(パラエストラ柏)が挑戦者・青井人(BLOWS)に僅差で判定負け。ベルト防衛とはならなかった。試合後の神田に心境を聞いた。
神田は23年2月に五明宏人との暫定王座決定戦に勝利し、同級の王者に。牛久絢太郎が正規王者であったが、同12月にベルトを返上し神田が11代の王者となっていた。今回は初防衛戦だった。
相手は約2年前に1度対戦している。その際はピンチからリカバリーし、逆転勝利を収めていたが、それから青井は3連勝。今回はそう簡単にはいかなかった。
「いつも通りという感じで冷静でしたね。負けたポイントとしては3R目のカットさせられたパンチはイメージ良くなかったのかなと」
3R、残り1分半の場面で青井の跳躍力のある飛び膝蹴りを被弾。その流れで繰り出された右フックも当たってしまい左目横がカットした。「そのあとにも何発かまとめられました。ダウンするようなダメージではなかったですけどね」と唇を噛んだ。
試合前にには青井の打撃も変化していることを指摘していたが、実際はどうだったのか。
「一発の瞬発力がすごいですね。カウンターの右フックを狙われていたので、空振りはさせました。途中までは良かったんですけど、あおの1発で流れが変わってしまいましたね」
1R・30秒からテイクダウンを成功。2Rには相手が距離を縮めてきたタイミングでカウンターのタックルを成功させた。
「1、2Rは自分のなかで取ったと錯覚してしまいました。この試合はトータルマストではなく、ラウンドマスト。トータルならあちらについてもおかしくないと思っていたのですが……」
一方で光ったのは青井のディフェンス力だ。タックルを切り、テイクダウンをされてもそこから立ち上がってみせた。それは神田にとって焦りにつながったという。
「相手のテイクダウンディフェンスが良かったですね。それからテイクダウンされてからのリカバリーが前回に比べて良かったですね。理想は寝技の展開に持ち込みたかった」
見合う時間が長かった2人には「ネガティブファイト」の注意、警告が提示された。リー・カイウェン戦の課題を克服するのも神田の作戦のひとつだった。
「右フックをもらわないようにしながら、自分の距離で手数をとりあえず出す。カイウェン戦でできなかったことを出すのと、なるべく寝技の時間を作ろうと思っていました」
23年の国際戦をへて約1年ぶりに帰ってきた後楽園ホール。試合中は一生懸命に声を出すキッズ応援団の「コウヤ先生~!」の声も響いた。初の防衛戦は悔しい結果になった。
「まぁ勝負なので勝つ確率は50%。今回はその負ける部分が自分に回ってきたのかなと思います。ファイターなので戦い続けることでしか自分の信念、理念を表現できない。いままで通り懲りずに諦めずに戦い続ける姿を生徒に見せるのも、自分の仕事なのかな」
感情は表に出さない。1番悔しかった瞬間は「判定結果の順番」。5人のジャッジの結果が青、赤、青、赤と発表され、最後に青井(青)の名が告げられた。「だったら最初から相手に3点入っちゃってよ(笑)」と笑い飛ばした。
インタビューが終わると「あいさつに行かないと!」と応援に駆けつけてくれたファンの元へ。もうすぐ午後9時。後楽園ホール内の売店前には自身の生徒たちが待っていた。
小さな応援団はまるで試合がなかったかのように「コウヤ先生~!」と駆け寄る。神田の目には大粒の涙が。先生として教える時のようにハキハキと話せていなかった。なぜここで初めて涙が出てきたのか。心境を明かす。
「なんでなんですかね……やっぱりカッコイイ姿を見せたかったし、なんか……失望してほしくなかった。自分も頑張れるんだって思わせたかった。でもそういうものが見せられなかった。普段クラスで偉そうなことばかり言っているので、カッコイイところ見せたかった。それでも子どもたちの瞳は真っ直ぐで涙が出ちゃいました」
後楽園ホールの外の気温は5度。多くのファイターが帰り支度をして会場を後にするなか、神田はスウェット1枚で試合を見に来た観客に頭を下げ、写真撮影に応じたり、サインが求められればサインを書いていた。