林家正蔵、“抜てき真打”林家つる子・三遊亭わん丈に“脱着物化”の勧め「できれば洋服で」
落語協会(柳亭市馬会長)の新真打昇進披露会見が6日、都内で行われ、林家つる子、三遊亭わん丈が今月21日から上野鈴本演芸場で始まる寄席披露興行を控え、現在の心境を語った。
正蔵の抜てき昇進エピソードにつる子は涙
落語協会(柳亭市馬会長)の新真打昇進披露会見が6日、都内で行われ、林家つる子、三遊亭わん丈が今月21日から上野鈴本演芸場で始まる寄席披露興行を控え、現在の心境を語った。
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つる子は先輩落語家11人抜き、わん丈は15人抜きで昇進。2012年春に春風亭一之輔、同年秋に古今亭志ん陽、古今亭文菊が昇進して以来12年ぶりの抜てきとして、関心を集めている。
会長として抜てき昇進に力を注いだ市馬は「つる子とわん丈が、協会では久しぶりに先輩を何人か追い抜いて真打ちになります。当人たちも大変気合が入っていますが、気負うことなくやってもらいたいと思います」と門出のあいさつ。「すでに活躍は目覚ましいんですが、真打ち昇進を機にまた一段上の段階に進んでもらいたいと思います」と期待を寄せた。
女性としては同協会初の抜てき昇進を果たすつる子は「噺家になる前に客として寄席を楽しんでいました。その高座にトリで上がらせていただくと思うと胸がいっぱいです」と感無量の表情。「より多くの方に落語を知っていただけるように、初めての人にも落語の楽しさを伝えていけるようにしたい」とゲートウェイの役割を果たすことを誓った。
大学時代は落語研究会に所属し、「三代目中央亭可愛(ちゅうおうてい かわいい)」を名乗っていた。弟子の抜てき昇進に正蔵は「ずいぶんと迷いました。まだまだ二つ目でいろんなことに挑戦し、いろんなネタを覚え、いろんなところで何かをつかんだり、いろんな失敗もしてほしかった」と本音を吐露。自身が抜てきで昇進した際のことを次のように振り返った。
「腕のいい兄さん方(=先輩)が(真打ち昇進試験。同時は試験制度があった)落ちて、私はどういうわけか受かってしまった。試験の3日後に(古今亭)志ん朝師匠に呼び出されて、紅白のショートケーキをいただきながら言われたことは『流れには乗れ。人生、何度も大きな運、チャンスはめぐって来ない。流れはその時の乗らないとダメだ』と。(自分が抜いた古今亭)右朝兄さんと飲んだときに『きちんと抜いてくれよ。あいつに抜かれたんだから、しょうがねえと思わせてくれよ、頼んだぜ』と言われたことを思い出します、両師匠の言葉が、つる子に響いてもらえたらいいと思います」と人情噺風のエピソードを明かすと、隣のつる子は涙するばかりだった。
さらに正蔵は2人に対し「噺家がマスコミに出るときは着物で出ることが多い。(立川)談志師匠は『洋服で出ろ』と言っていた。これから伸びて行く2人には、新しい世界に出てほしい。ドラマでもバラエティー番組でもいい。軸足が落語にあるのは分かっているので、寄席を大事にしながらできれば洋服で、今の世でもって、今のことを語れる存在になってほしい」と“脱着物化”を勧めた。
15人抜きで抜てき昇進するわん丈は、ロックバンドのボーカルなどを経て28歳のとき、少し遅めの入門を果たした。
「目の前にいらっしゃる人を喜ばせる人が好きで、そのまま生きていけたらいいといろんなライブ芸に挑戦した。大成することがなくて、藁をもすがる思いで落語を見つけた。これが最後のチャンスかなと(最初の師匠の三遊亭)円丈に入門を許していただいた」と、落語とのつながりを回想。「落語に人生を作っていただいた、と思っています。このまま落語に人生を作ってもらいたい」と、落語と添い遂げる覚悟を口にした。
円丈の死後、弟弟子のわん丈を預かった師匠天どんは「噺家ってただただ生きよという人が多いんですけど、売れたい、ということをちゃんと意識したんでここまで駆け上がったと思います」と弟子の取り組みを分析。「披露目が始まれば、周りのお客さんのおかげだと改めて思う。師匠として、何も心配はしていません」と目を細めた。