異例のパターン…漫画『薬屋のひとりごと』は異なる出版社から発売 2作の違いとは?
2023年10月21日より、日本テレビ系(土曜、深夜24時55分)で放送が開始された『薬屋のひとりごと』(作:日向夏)は、小説投稿サイト「小説家になろう」にて連載されていた作品がアニメ化されたものである。本記事では2種類ある「漫画版」について紹介する。
出版社の異なる2つの「漫画版」、それぞれの良さと違いを解説
2023年10月21日より、日本テレビ系(土曜、深夜24時55分)で放送が開始された『薬屋のひとりごと』(作:日向夏)は、小説投稿サイト「小説家になろう」にて連載されていた作品がアニメ化されたものである。本記事では2種類ある「漫画版」について紹介する。
ストーリーは花街で薬師として働いていた少女・猫猫(マオマオ)が、下働きとして入った後宮(帝の妃たちが住まう場所)にて次々と難事件を解決していくという中華風ファンタジー。
原作小説はシリーズ累計2700万部を突破し、同作をコミカライズした漫画版も発売されている。
漫画版は、スクウェア・エニックスと小学館という異なる出版社からそれぞれ販売されているという異例のケース。スクウェア・エニックス版と小学館版、どちらを読めばいいのか迷う方も少なくないだろう。ちなみに原作者の日向夏氏自身も「漫画版が複数の出版社から刊行されているのかわからないので困惑した」という旨のポストを自身のXに投稿していた。
そこで今回は2種類ある漫画版に注目し、それぞれの違いとアピールポイントについて紹介していきたい。
まず紹介するのは、ねこクラゲ氏が作画を担当しているスクウェア・エニックス版『薬屋のひとりごと』(ビッグガンガンコミックス)である。
スクウェア・エニックス版で特筆すべきは、少女漫画のような美しい絵柄である。主人公の猫猫はもちろんのこと、宮廷で強い権力を握る宦官・壬氏(ジンシ)などの主要キャラクターも、みなそれぞれ美しく描かれている。
物語の多くは、美しい女性たちが多く登場するため、ねこクラゲ氏の描くキャラクターの美しさは物語の華やかさを演出している。
一方で、ストーリーをじっくり読みたいという方には、小学館から出版された『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』(サンデーGXコミックス)をおすすめしたい。
こちらの作品の作画担当は倉田三ノ路氏で、ねこクラゲ氏の描く画に比べ、少し大人びた容貌の猫猫である。
また、後宮で最も力を持つふたりの妃・梨花(リファ)と玉葉(ギョクヨウ)も、スクウェア・エニックス版より大人っぽい外見に描かれている。
それに加え、各エピソードやキャラクターの人物造形がより深堀りされているのが小学館版の特徴だといえるだろう。
梨花がライバルの玉葉に対し「我が子に呪いをかけている」と詰め寄るシーンを例に出してみよう。ここで梨花は玉葉の頬を平手打ちするのだが、スクウェア・エニックス版ではこの場面を見開きページでテンポよく描いているのに対し、小学館版では3ページわたってじっくりと描いている。
怒りにとりつかれている梨花と、平手打ちされ驚く玉葉の表情など、登場人物の心理を繊細に表現しているのが印象的だった。
もちろん同じ作品を原作としているので、ふたつの漫画版に大きくかけ離れた違いはないものの、前述のように絵柄やストーリー展開のテンポが異なるので、それぞれに合った好みで漫画版を選んでみてはいかがだろうか。
ちなみにどちらも読んだ筆者は、人物造形や医学の知識を細やかに描いた小学館版に好感を持った。
アニメのようにビジュアルの美しさを堪能したい場合には、スクウェア・エニックス版がより楽しめるかもしれない。
コミカライズ版が異なる出版社から2つ刊行されている作品は珍しいが、ぜひ読み比べてお好みの漫画版を見つけてほしいものだ。