フリーアナウンサーで、俳優、モデル、エッセイストとしても活動する宇垣美里（32）が、2月29日から放送中のMBSドラマ『シンデレラ・コンプレックス』（木曜深夜0時59分）に出演している。予測不能なラブサイコ・スリラーで、宇垣は恐ろしい面々に翻弄される教師役。自身とは正反対のタイプを演じている宇垣が、役を通して「人生」を語った。（取材・文＝大宮高史）

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『シンデレラ・コンプレックス』は、縦型マンガ・Webtoonで4億ビューを突破した同名ウェブコミックが原作の作品。宇垣が扮する教師の相沢舞は、同じ学園の人気教師の相沢陽介（飯島寛騎）が夫で、はた目には順風満帆な日々を送っている。ところが、陽介が教え子の前園由良（田中美久）と不倫関係に陥ってしまう。舞の日常は、陽介と由良の不倫をきっかけに崩壊していく。そんな舞について、宇垣は「私には全くないものを持っていて、今までに俳優としても経験のない役で、新鮮さを感じていました」と振り返った。

　周囲の人が見せる本性に翻ろうされてばかりの舞。対して、宇垣は自身のことを「強い女の周りには強い女が集まるといいますか（笑）、たくましい女性のように見られていて、友人にも同じようなタイプが多いです」と分析した。そして、生きざまを口にした。

「子どもの頃から、『女の子は結婚して子どもを生むのが幸せ』というような教科書的な価値観を押しつけられずに育ちました。それはすごく幸運な環境でしたし、おかげで『このレールに乗らなくちゃならない』というような生き方とも無縁でいられています。私の周囲は皆、そうです。例えば既婚や未婚に関係なく、自立できていることにプライドを持っています」

　学校も同作の重要な舞台になるが、自身の中高生時代は伸び伸びしていたという。

「神戸で中高とも公立の学校に通いましたが、本当に自由な人間で、『宇垣だからな』と呆れ半分で許されていたように思います（笑）。生徒会長もしていて言動が目立っていたから、先生が怒る時には代表として私が怒られることもよくありました。高校は校則がほぼなく、生徒の自律心に任せる校風であったことも、今の私の人格を作っているように思います」

　同志社大に進学し、2014年にTBSにアナウンサーとして入社。報道現場を志望していたが、バラエティーや情報番組での仕事が多く、フリーに踏み出すきっかけにもなった。

「学生時代も就職してからも、希望通りにならないことももちろんたくさんありました。でも、能天気というか、寝たらすぐ切り替えられるのが私の性格です。同じ時間を過ごすなら、過去を後悔するよりも、現状を踏まえて最善の手だてを打つことの方が大切だと思って生きています」

　一貫してポジティブ。自己肯定感を持って生きてこられた理由は、「別の選択肢を選んでいた自分」への責任感でもあるという。

「過去の選択の積み重ねで、今ここにいる私があります。『大学院に進学していたら』『関西で就職していたら』といった別の人生の可能性を閉ざして今の位置にいるのだから、『ifの自分』に恥ずかしくない生き方をしなければならないなと思っています。そう考えると、ちょっとした壁にくよくよしていたら『ifの自分』に顔向けできないし、腐っている時間がもったいない。そうして内向きにゆるぎない自己を持って生きてきたので、他人の嫌味や嫉妬もあまり気にならないのだと思います」

　では、宇垣は舞のように他人に裏切られ、どん底に陥ったことはあるのだろうか。気になってそれを聞くと、「私は私を軽んじる人の近くにい続けることはしませんので」と回答。その上で、いい意味で「鈍感」であることも明かした。

「私は人からの悪意に鈍感なようで、ある意味、他者のネガティブな反応にもあまり関心がないようです。後から『あの人、裏でめっちゃ悪口言ってたよ』と言われてやっと気づくような感じです。伝えてくる方もどうなんですかね……。まあ、嫉妬を表に出したり、意地悪をしてくるような人には『反応しないのが一番いい』と思っています。そうすれば、嫌な人はいつのまにか視界に入ってこなくなるんですよね」

　アナウンサー、モデル、俳優、声優、文筆業……。宇垣はフリー転身後、ここでも「いい意味で軽率かつ気軽に仕事に挑戦してきました」と振り返った。

「局アナ時代から『これが合うと思うから』と勧められることには、素直にチャレンジしてきました。何にでも『とりあえずやってみよう』の精神は一貫しています」

　好奇心旺盛。だが、尻込みしていることもあるという。

「本当は運転もしたいんですが……。友だちと遊びに行って一緒にゴーカートに乗った時、私がスピード狂だった上に壁にガンガン当てることにも抵抗がなくて、『本当に怖かったから、一生免許は取らないで』って言われました（笑）。ですから、原付免許しか持っていません。スノボも好きなんですが、『見ていて怖い』と言われるくらい豪快に滑っているようです。小説の執筆も勧められますが、まだちょっと怖くて踏み出せずにいます」

　報道の現場を志望していた学生時代から一転、華やかな業界での活動が続くが、その人生観は一貫している。

「何かにトライして『やらなければよかった』と思ったことはありません。どんな環境でも得られるものがありますし、自分の中の引き出しを増やす営みがすごく好きです。例え年齢を重ねていっても、絶対にこの姿勢は崩したくないですね」

　自身にとって、過去の選択が間違いではなかったと人生をもって証明するために、宇垣に立ち止まっている暇はない。

□宇垣美里（うがき・みさと）　1991年4月16日、兵庫県生まれ。同志社大学卒。2014年4月にTBSに入社し、『Nスタ』『ひるおび！』『サンデー・ジャポン』などを担当。19年3月にTBSを退職し、俳優、モデル、エッセイスト、ナレーターなど多方面で活動。ドラマ出演作は、MBS・TBS系『明日、私は誰かのカノジョ』、テレビ東京系『チェイサーゲーム』、フジテレビ系『自由な女神－バックステージ・イン・ニューヨーク－』など。著書は『風をたべる』『今日もマンガを読んでいる』など。趣味は映画鑑賞や読書をはじめ、エンタメ全般。164センチ。

スタイリスト：滝沢真奈
ヘアメイク：山下智子

（番組情報）
MBSドラマ特区『シンデレラ・コンプレックス』MBS、テレビ神奈川、チバテレビ、テレビ埼玉、とちぎテレビ、群馬テレビで放送。TVer、動画イズム、FODにて配信。