【DEEP】神田コウヤ、初防衛戦は「青井・神田vs世間」 知名度先行の風潮に悔しさ「不甲斐なさある」

格闘家の神田コウヤ(パラエストラ柏)は格闘技イベント「DEEP 118 IMPACT」(3月9日、東京・後楽園ホール)で初のタイトル防衛戦を行う。2022年に1度対戦経験のある青井人(BLOWS)を迎え撃つ。Road To UFC シーズン2の敗戦から約6か月。初の防衛戦にかける思いを聞いた。

初防衛戦に挑む神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】
初防衛戦に挑む神田コウヤ【写真:ENCOUNT編集部】

キッズ時代からパラエストラ一筋…最後の「パラエストラ柏」所属

 格闘家の神田コウヤ(パラエストラ柏)は格闘技イベント「DEEP 118 IMPACT」(3月9日、東京・後楽園ホール)で初のタイトル防衛戦を行う。2022年に1度対戦経験のある青井人(BLOWS)を迎え撃つ。Road To UFC シーズン2の敗戦から約6か月。初の防衛戦にかける思いを聞いた。(取材・文=島田将斗)

 昨年は飛躍の1年だった。2月にDEEPフェザー級の暫定王者に。その後は世界最高峰の舞台・UFCとの契約をかけ「Road to UFC」に参戦し、1回戦ではイーブーゲラ(中国)に判定勝ち、準決勝ではリー・カイウェン(中国)に敗れた。DEEPでの試合は1試合となったが、2度の国際戦を経験した。

「足りないところが前回の試合で見つかったので、そこをこの6か月間やってきました。技って利き手があるじゃないですか。それを無くした方が自分に有利に試合を運べる。それは前の青井戦からも取り組んでいたことでそれがようやく形になってきました」

 UFC契約をかけたトーナメントのリー・カイウェン戦で課題も感じていた。「自分は元々サウスポー構えが得意。オーソドックスになったときの自分は弱いなと感じていました」と打ち明ける。

 カイウェン戦は静かな戦いだった。両者、間合いの取り合いが多く繰り広げられ、レフェリーから両者に戦いを促す場面もあった。手数が減った理由について「相手のプレッシャーを感じやすく、自分が圧をかけづらかったんですよね」と振り返る。

 タックルに入り、テイクダウンを試みるもなかなか決まらなかった。レスリング出身だが、これが大きな収穫となった。

「タックル自体もいろいろMMAにアジャストする取り組みのなかでおざなりになっている部分もあったんです。タックル単体のクオリティーをあげる作業もやってきましたね。強いパンチを出す構えと強いタックルをする構えは違う。そこをできるレスラーのタックルはMMAにおいてかなり強いと思います」

 いまや代名詞となっている“肘”。前回の青井戦ではこの肘で逆転勝利を収めていたが、一方でMMAファイターとしての目をくもらせていた部分もある。

「つなぎの部分でMMAを捉えると、タックルを切られても『肘を打てばいいや』『肘があるんだ』って過信している部分もありました。そこを一旦取り去って、タックル単体で取れるように最近使っていなかった部分の柔軟性を高めたりしています」

 2人の1度目の対戦は22年5月。青井は神田にKO負けを喫したが、それからは3連勝している。23年9月のDEEPが2勝5敗で敗れた韓国「BLACK COMBAT」との対抗戦ではシン・スンミンに3R・TKO勝ちを収めている。神田はそんな青井に最大限の敬意を表した。

「自分に負けたせいで彼はより強くなってしまった。だから倒さないといけない。こういうのはカルマの清算っていうんですかね。あとは『BLACK COMBAT』の対抗戦で王者を倒してくれたのを感謝しています。本来なら自分が戦わないといけなかった。青井選手が受けてくれてなおかつ勝ってくれたので、自分は相手は王者だと勝手に解釈しています」

 2年前とはお互いの価値が全く違う。

「青井選手の試合は全部観ています。タックルに自分から行くようになってるなと。あとはKOするときは大体、右のオーバーフックが多かったと思うんですけど、左のパンチも強くなってる。下がりながらカウンターを打つようになってきている。あと蹴りもいいですよね」

“パラエストラ柏”の神田コウヤは今回が最後【写真:ENCOUNT編集部】
“パラエストラ柏”の神田コウヤは今回が最後【写真:ENCOUNT編集部】

防衛戦決定で「未来は僕等の手の中」の歌詞を投稿したワケ

 今回は初のベルト防衛戦だ。暫定王者決定戦の五明宏人戦よりは緊張していないという。王者になって意識がガラリと変わった。

「あのときは、これに勝たないとベルトはもらえないし、2回目のタイトルがかかった試合でした。いまは第11代王者っていうのは確定事項。仮に次戦で何かが起きても11代は地球上に自分しかいないんです。そういう誇りと自負があります。

 でも自分はカイウェン戦で負けているので、気負うものはなくてすがすがしい気持ちです。むしろ(気負う気持ちが)あるのは青井選手だと思う。3連勝してるし、これで戴冠失敗しちゃうとまた挑戦しなくちゃいけない」

 王者になることは自分の人生で義務だった。これからは「“自分が”格闘技をやりたい」の権利を持って戦っていく。昨年は国際戦も経験し、間違いなく成長を感じているがそれではダメだと首を振る。

「こうやってインタビューで、ただ言葉で、それを言うんじゃなくて、理屈を並べるんじゃなくて、やっぱり戦いの中でそれを証明したいです」

 防衛戦が決まると神田はTHE BLUE HEARTSの楽曲「未来は僕等の手の中」の歌詞をXにポストした。

「くだらない世の中だ ションベン掛けてやろう 打ちのめされる前に 僕等・打ちのめしてやろう」

「鬱憤(うっぷん)もあるし、現役王者として不甲斐なさもある」――。この一戦にこの歌詞を選んだ理由。それはいまの“世間”への思いが詰まっていた。

「いまは実力主義じゃない。今回の一戦は青井・神田vs世間。そういう目線で『僕等・打ちのめしてやろう』なんです。不毛なことに対してどんどん注目が集まっていく、いまの世の中に対して言っています。実力のある人たちが知名度の高い人たちに淘汰(とうた)される前に俺らで盛り上げて、打ちのめしてやろうって」

 初の防衛戦は最後の「パラエストラ柏」所属として出場する試合でもある。キッズ時代からパラエストラ一筋、実力を積み上げてきた神田は世間に何を見せるのか。記憶に残る未来を変える試合を期待したい。

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