“EVが家になる”に仰天 知の巨人たちが本気で想像 東大出身キャスターが語る先端技術の未来図

“知の巨人たち”が純粋に想像力を膨らませる議論は、日本を、世界を救うかもしれない--。東大出身で、経済キャスター、ビジネス・学術イベントの司会、起業家としても活躍する瀧口友里奈氏が、今度は編著者として、ユニークな書籍を世に送り出した。東大教授たちによるトークセッションを通して、宇宙開発の壮大なるテーマだけでなく、電気自動車(EV)が“家になる”といった仰天の未来図、車の運転を通じた認知症チェックの可能性など、最新テクノロジーによって社会がどう変化するかの未来予測を紹介する内容だ。才色兼備のエキスパートに、最先端の科学技術への向き合い方や司会の極意を聞いた。

『東大教授が語り合う10の未来予測』編著者を務めた瀧口友里奈氏【写真:荒川祐史】
『東大教授が語り合う10の未来予測』編著者を務めた瀧口友里奈氏【写真:荒川祐史】

「SFがその国の国力を表す」 最新テクノロジーによって社会がどう変化するかの未来予測に注目集まる

“知の巨人たち”が純粋に想像力を膨らませる議論は、日本を、世界を救うかもしれない--。東大出身で、経済キャスター、ビジネス・学術イベントの司会、起業家としても活躍する瀧口友里奈氏が、今度は編著者として、ユニークな書籍を世に送り出した。東大教授たちによるトークセッションを通して、宇宙開発の壮大なるテーマだけでなく、電気自動車(EV)が“家になる”といった仰天の未来図、車の運転を通じた認知症チェックの可能性など、最新テクノロジーによって社会がどう変化するかの未来予測を紹介する内容だ。才色兼備のエキスパートに、最先端の科学技術への向き合い方や司会の極意を聞いた。(取材・文=吉原知也)

 東大教授たちによる東大公式YouTubeチャンネル番組のトークセッションを取りまとめた『東大教授が語り合う10の未来予測』(大和書房刊)。瀧口氏は番組の企画・制作を手がけ、自ら司会を担い、ついには書籍化を実現させた。

「『情報を通して社会のイノベーション(革新)を加速させること』が私のミッションの1つだと考えています。より多くの人に科学やテクノロジーの楽しさに触れてもらいたい。そして、『せっかくこんなに面白いテクノロジーがあるのだから、みんなで考えていけば、もっと面白い世の中にできるんじゃないか』。そうやって社会をいい方向に変えていくことができればと思っています。私は現在、東大大学院に在学しています。テクノロジーがちゃんと社会に溶け込んで、どのように人間にとっていい形で活用されるかということを研究しています。よりよい社会になってほしい。それが私の信念です」。深い思いを持って企画の実現に奔走した。

 日本を代表する東大の研究者たちによる、熱いトークは、未来の社会をよくするヒント、実現し得る未来像を示している。

 扱うテーマは、AI(人工知能)やEVといった身近な生活に深く関わる先端技術、そして、認知症などの病気との闘い。人類社会の公共の福祉に資するものばかりだ。

 とりわけ、自動車分野の議論は、“激アツ”だ。研究が急ピッチで進められている、自動運転技術。安全性が確保されて技術導入が進めば、交通事故を減らすことができ、人や物とぶつかることがなくなり、「車を鉄で作る必要がなくなる」とのことだ。

 将来的には、より軽量でエネルギー効率の高い“車”へと進化。EVのアップグレードを進める中で、充電機能が強化されて生活に必要な家電などを使用することができ、完全自動運転によりドライバーは乗るだけで自由に時間を使える。移動可能な「住居」の機能を有する車が開発されれば、どうなるか。土地を買う必要がなくなり、住所がなくなる可能性もある――。これまでの社会の概念が変化することになるかもしれない。

 また、高齢化社会で悩ましい認知症。治療法が少しずつ確立される中で、自動車の技術を組み合わせた驚くべき“認知症チェック”の手法が話し合われている。現代の電子機器は、持ち主の日々の活動をつぶさに記録している。これらのデータが、認知症の早期発見に役立つ可能性があると言うのだ。車の運転は全身を使う複雑な活動であり、運転中に収集されるデータは認知機能に大きく関わるため、認知症発見につながることが期待されているという。

 それに、「『ドラゴンボール』に、小さなカプセルを投げると、乗り物や家に変化する『ホイポイカプセル』というアイテムが登場します。実は現実に、空気を入れて膨らむ柔らかい素材にモーターを組み込んで乗り物を作る試みが進められています。実際に、(東大大学院工学系研究科教授の)川原圭博先生の研究室でちょっと見させていただきました。未来に実用化されるかとしれません」と瀧口氏。想像するだけでワクワクする。

 いくつもの発見があったという。今回の企画に参加した教授たちの多くは“SF好き”だったということだ。日本のAI研究の第一人者である松尾豊教授は「SFがその国の国力を表す」と話していたといい、瀧口氏は「どれだけ想像力を働かせ未来の物語を紡ぐことができるかが国力を表すというのは腑に落ちるなと思いました。ご出演いただいた先生方は、自分の分野だけではなく、他の分野で起きていることを見て、どう解釈するか。逆に自分の専門分野は周りの人にとってはどのようなものになるのか。そこをちゃんと語ってくださるので、多くの方が共感してこの書籍を読んでくださっているのだと思います」と実感を込める。

「一見難しそうなことを分かりやすく伝えること。私自身、ずっと取り組み続けていきたいです」

 瀧口氏の聡明で冷静な語り口調、分かりやすく親しみあふれる司会ぶり。名うての経営者たちからは「難しいことをだいたい司会してる人」と称されるようになった。

 今回は、知の巨人たちによるハイレベルな議論だ。トークをうまく取りまとめる瀧口氏。巧みな司会進行の秘訣(ひけつ)はどこにあるのか。

「司会が自分の意見を持つことが大事だと思っています。私自身は進行役なので、自分の意見を発言する機会はほとんどありません。司会の役割は、ゲストの方々から話をちゃんと引き出すことです。こうした中で、たとえその場では自分の意見を言わなかったとしても、司会が自分の考えを持っているかどうかは、話し手にとってすごく重要なんじゃないかなと思っています。『この人に話しても分からないでしょ』『面白いと思われないだろうな』となってしまうと、その相手に話したくなくなりますよね。『この人となら一緒に議論したいね』と思ってもらうこと。そのために、できるだけ日々学び、物事に自分の頭と心で向き合いたいと思っています」と強調する。

 尊敬する司会に、黒柳徹子を挙げる。「黒柳さんを取材させていただいたことがありまして、黒柳さんはチャーミングなお姿の中に、ご自身の強い軸や志、パイオニア精神をお持ちだと改めて実感しました。それもそのはず。テレビの初回放送からテレビ業界の最前線を歩まれてきた方です。徹子さんのお話を聞きたいし、徹子さんに話を聞いてもらいたいと自然と思う存在です」。まさに目指すべき理想の姿だ。

 東大を目指して受験勉強に励んでいた高校時代。通っていた塾講師から大きな刺激を受けた。「塾の先生たちは、難しい問題や解説なのに、分かりやすく、面白く教えてくれたんです。塾の授業にはすごくインスパイアされました。一見難しそうなことを分かりやすく伝えること。私自身、ずっと取り組み続けていきたいです」。常に好奇心を持ち、未来を見つめ続け、これからも多くの人に楽しく伝えていくつもりだ。

□瀧口友里奈(たきぐち・ゆりな) 1987年8月1日、神奈川県生まれ。東大文学部行動文化学科卒。東大在学中からタレント活動を始め、セントフォース所属の経済キャスター、ビジネス・学術イベントの司会として活躍。東大工学部アドバイザリーボード、SBI新生銀行などの社外取締役に就くほか、自ら立ち上げた株式会社グローブエイトの代表を務めている。東大公共政策大学院在学中。TOEICのスコアは955点。

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