TikTokでバズった日韓ミックス歌手・SG、「母の生まれた国」を旅して大きく変わった日本のイメージ

TikTokフォロワー数85万人、YouTube登録者数が42万人超の日韓ミックスのシンガー・ソングライターSG(エスジー)が、次世代アーティストとして注目を集めている。2020年、TikTokに公開したJ-POPの日本語カバーシリーズが女性ファンを中心に人気を博し、23年にEXILEらが所属する大手芸能プロLDHのレーベルからメジャーデビューを果たした。2月7日にリリースしたセカンドシングル『Curse of Love』では、日本語と韓国語をミックスした曲にチャレンジ。「今、最も勢いのあるシンガーの1人」と呼ばれるネクストブレイク候補の素顔とは。

2ndシングル『Curse of Love』で日韓ミックスの歌詞に挑戦したSG【写真:近藤俊哉】
2ndシングル『Curse of Love』で日韓ミックスの歌詞に挑戦したSG【写真:近藤俊哉】

「今、最も勢いのあるシンガーの1人」SGの半生に迫る

 TikTokフォロワー数85万人、YouTube登録者数が42万人超の日韓ミックスのシンガー・ソングライターSG(エスジー)が、次世代アーティストとして注目を集めている。2020年、TikTokに公開したJ-POPの日本語カバーシリーズが女性ファンを中心に人気を博し、23年にEXILEらが所属する大手芸能プロLDHのレーベルからメジャーデビューを果たした。2月7日にリリースしたセカンドシングル『Curse of Love』では、日本語と韓国語をミックスした曲にチャレンジ。「今、最も勢いのあるシンガーの1人」と呼ばれるネクストブレイク候補の素顔とは。(取材・文=福嶋剛)

 SGは韓国人の父親と日本人の母親の間に生まれ、韓国で育った。

「母と祖母は昔ソプラノ歌手をやっていた人で、子どもの頃に母の歌う姿を見て『自分もやってみたい』と言い、歌やピアノを教えてもらいました。父は生態学を研究する学者です。韓国は勉強熱心な家庭が多いんですが、うちは『やりたいことは自分で見つけなさい』という家庭でした」

 日韓ミックスという理由で、イジメを受けていた時期があった。

「日本人の血が流れているというだけで意味もなく嫌われました。特に小学校、中学校では、イジメに遭っていてつらかったです。『母の生まれた日本はそんなに悪い国なんだろうか』。その理由が知りたくて中学生の時、初めて日本に行きました。実際行ってみると、持っていた日本の印象が大きく変わりました。人も文化もめちゃくちゃ良くて、日本の文化に一目惚れしました。国境、人種、習慣の違いで線を引いてはいけないという思いが強くなり、日本への留学を決めました」

 留学をきっかけに得意な歌を生かし、バンド活動を始めた。

「70年代、80年代の歌謡曲やロック、90年代のJ-POPも大好きで日本の音楽がどんどん好きになり、『もっと日本文化に触れよう』とアニメをたくさん見ていたら、アニメの主題歌を歌っていたヴィジュアル系バンドの音楽に衝撃を受けました。それがきっかけでバンドで活動を始め、『いつかチャートで1位を獲ってやる』と目標を掲げました」

 バンド活動に励む毎日が続いたが、コロナ禍で全てが変わってしまった。

「ライブができなくなり、2020年に活動を休止しました。『これからどうやって活動していこうか』と考えた時、得意だった歌をSNSにアップしてみようと考えました」

 親からの仕送りは「残り1年」と告げられ、コンビニのアルバイトだけでは生活が苦しかった。そんなある日、TikTokに公開したJ-POPの日本語カバーシリーズが話題となり、SGの名前がネット上で広まった。

「TikTokを始めて2本目でOfficial髭男dismの『I LOVE…』を歌ったらバズりました。早速、シリーズ化しようと思い、YouTubeも同時に始めたら2か月後には動画収入だけで生活できるようになりました。バンドは5年間活動してもなかなか結果を出せなかったけれど、『歌で生活できるなんて奇跡だ』と感じました」

 SNSを始めてから約半年。YouTubeチャンネル登録者数が10万人に達した。

「父には『もう、仕送りは大丈夫だよ。ありがとう』と伝えました。人の曲を歌って認められたことについては不安もありましたが、『自分の声を評価いただけたことに感謝しなければいけない』と言い聞かせて、オリジナル曲も同時に出していきました」

 シンガー・ソングライターとしてソロで活動していくことを決意。インディーレーベルからオリジナル曲を次々と発表した。21年4月にリリースした『僕らまた』は、“令和の卒業ソング”とメディアに取り上げられた。LINE MUSICチャート1位をはじめ、各音楽チャートにもランクイン。23年11月には、LDH Recordsからメジャーデビューを果たした。

「実はメジャーデビュー直後が人生一番の大きな挫折でした。SNSを始めた頃から『みんなに好きだと言ってもらえる音楽を作らないといけない』という思い込みが強過ぎて、『自分がやりたいこと』と『今、やっていること』がどんどん離れていきました。メジャーデビュー発表ライブでも満足いく結果が出せず、自分で自分を追い込んでしまいました。結局、夏のデビュー予定が11月に延期になりました。でも、延期した時間は、今の自分にとってとても大切な時間でした」

「音楽で日本と韓国をつなげていきたい」【写真:近藤俊哉】
「音楽で日本と韓国をつなげていきたい」【写真:近藤俊哉】

SGが思う日本と韓国の音楽の違いとは?

 デビューまでの間、SGは自分のやりたい音楽と徹底的に向き合った。結果、気持ちが楽になり、ファーストシングル『Palette』は、自作の中で最も等身大の自身を表現できた曲になった。放送中の読売テレビ連続ドラマ『好きやねんけどどうやろか』(木曜深夜0時54分)のエンディング主題歌にも起用。『ドラマがきっかけでファンになりました』といった多くのメッセージがSGに届いた。

「『結果はあとから付いてくる』と言い聞かせ、今まで着飾っていたものを全部脱ぎ捨てました。すると、本当にやりたいことにだけ集中できて、『Palette』が完成した瞬間は『やったー!』でした(笑)。うれしかったです」

 今月7日にリリースした第2弾シングル『Curse of Love』では、SGのルーツである日本語と韓国語の2つの言葉を歌詞にした楽曲に挑戦した。

「『Palette』を書き上げた時、『これからは自分にしか書けない曲を書こう』と思い、『次は母国の日本と韓国の両方の言葉を使いたい』と考えました。新曲『Curse of Love』は、メインは日本語でラップが韓国語のバージョンとその反対のメインが韓国語でラップが日本語の2タイプを作りました。英語が分からない人でも洋楽を楽しめるように、韓国語が分からなくても、音楽として自然に楽しんでいただけたらうれしいです」

 日本と韓国の文化を見てきたことで、“音楽性の違い”も感じてきた。

「日本と韓国の関係はどうしてもその時代の政治に左右されてしまいます。今は日本の音楽が韓国の音楽番組でもよく流れていて、若者を中心にJ-POPやシティポップがすごく評価されています。その理由を僕なりに考えてみたんですが、J-POPとK-POPはそもそも立ち位置が違う音楽です。K-POPは何もかも全てがパーフェクトで非の打ち所がない完ぺきな作品を求めているのに対して、日本の音楽は人間味とか言葉の行間を読むような繊細さや情緒みたいなものを感じます」

 違いが生まれた理由も分析し、自分の果たすべき役割も口にした。

「その違いは文化の違いも影響していると思います。韓国はものすごく慌ただしい毎日を送る人が多くて、日本もそうですが、世界から見ると韓国よりも比較的落ち着いて生活している印象です。そんな日本の文化に憧れを持つ韓国の若者が増えています。僕にとって韓国料理はソウルフードで当然大好きですし、日本料理も焼き魚、みそ汁、白飯と明太子も最高です。でも、『韓国料理と日本料理どっちが好き?』という質問はナンセンスです。音楽も同じでこれからも政治に左右されず、好きだと思った音楽を純粋に楽しめる文化であってほしいですし、僕も『ミュージック・ハズ・ノー・ボーダーズ(=音楽に国境はない)』という精神で日本と韓国をつなげていきたいと思います」

□SG(エスジー) 日韓ミックスのシンガー・ソングライター。J-POPとK-POPの垣根を越えて、日本語と韓国語を織り交ぜて歌う独自のスタイルを構築。TikTokフォロワー数85万人、YouTube登録者数42万人、総再生回数5億回を突破。2023年11月にメジャーデビュー。

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