『ヒロシのぼっちキャンプ』驚きの舞台裏 キャンプ道具は私物、番組構成も“ぼっち”

お笑いタレントのヒロシが自然の中に一人、身を置き、たき火にあたりながら武骨に時を過ごしていく。見ていると、たき火の揺らめく炎やコッヘルから上がる湯気に癒やされ無になれる気がする。そんな番組として人気を得ているのがBS-TBS『ヒロシのぼっちキャンプ』(水曜午後10時)。人気の秘密を探るため伊藤正憲プロデューサーに番組の成り立ちや舞台裏、こだわりを聞いた。

キャンプをするヒロシ【写真:(C)BS-TBS】
キャンプをするヒロシ【写真:(C)BS-TBS】

原点は番組Pがスーパーカブ90で1人周った欧州とアフリカのキャンプ旅

 お笑いタレントのヒロシが自然の中に一人、身を置き、たき火にあたりながら武骨に時を過ごしていく。見ていると、たき火の揺らめく炎やコッヘルから上がる湯気に癒やされ無になれる気がする。そんな番組として人気を得ているのがBS-TBS『ヒロシのぼっちキャンプ』(水曜午後10時)。人気の秘密を探るため伊藤正憲プロデューサーに番組の成り立ちや舞台裏、こだわりを聞いた。(取材・文=中野由喜)

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 そもそもなぜソロキャンプなのか。尋ねると、よく飲食店の出前などで使われるスーパーカブ90と伊藤氏の学生時代の驚きの経験に企画の原点があった。

 伊藤氏「毎日、新聞配達をしながら4年間大学に通っていたので23歳で社会に出るとなった時、新聞配達以外に何の経験もしていないし、世の中を何も知らないと思ったんです。そこで1年間と決め、貯めたお金で中古のバイクのスーパーカブ90を買ってイギリスに船便で送り、イギリスから乗ってヨーロッパとアフリカをキャンプしながら1人で周りました。これが『ヒロシのぼっちキャンプ』の企画の根っこにある部分」

 準備もほどほどに地図も現地で調達した旅。1年間の一人旅で番組の根っことなる何をつかんだのか。

 伊藤氏「その日に何をするか毎日、自分で決めないといけません。つらいより楽しい方がいいので毎日、自分を楽しませる責任も生まれます。想定外のトラブルに次々と遭遇し、逆に助けてくれる人との予期せぬ出会いもありました。日々、その繰り返し。後で心から思ったのは、相当リッチな時間だったということ。自分でどっちに行くか決める自由の素晴らしさ。すべて自分の責任。その良さを忘れられず番組の企画書を書きました。自ら行き先を決めて道をつくる。かっこいいです」

 なぜヒロシなのか。

 伊藤氏「キャンプ雑誌の表紙に1人で写っている姿を見て、この人だと確信しました。お笑いタレントとしてブレーク後、テレビであまり見かけない時が長くあったかと思います。その時に1人でキャンプをしている写真を見て、その年月でヒロシさんが何をしてきたかが分かったような気がしたんです。ブレークが去った後も生き生きとしていたのは1人のいい時間を過ごしてきたからだと。私が自分の責任で自分を生かす良さを知ったように、ヒロシさんも1人の自分という人間を生かす術と良さを知っていると感じました」

『ヒロシのぼっちキャンプ』のタイトルロゴ【写真:(C)BS-TBS】
『ヒロシのぼっちキャンプ』のタイトルロゴ【写真:(C)BS-TBS】

 作り手のこだわりも聞いてみた。

 伊藤氏「一番の柱はヒロシさんにやりたいことをやってもらい、視聴者目線としてのカメラで自然体のヒロシさんを切り取ること。番組のスタート当初からゲストを招くこともしていませんし、形を変えずにやっています。形を変えないことがこだわりです。また、静かなドキュメンタリーでありたいと思っています。私は2人の主人公がいると考えていて、それはヒロシさんと自然。ヒロシさんは、テレビの枠にとらわれない素直な思いを語ってくれます。そのたたずまいと言葉。そこに自然の光やせせらぎ、たき火の音が入ってくる。2人の主人公をいいあんばいでくみ上げていきたいです。今の時代、緊張感に包まれて生きている人が多いと思います。今を生きる人たちの心が安らぐような番組でありたいですね」

 ヒロシの舞台裏の様子も気になる。

 伊藤氏「一般的な番組はディレクターが事前に構成を考えますが、この番組は一切をヒロシさんにゆだねています。番組が始まった時にヒロシさんが『1人の良さ、圧倒的自由』と言っていたその思いが基本にあります。また、ヒロシさんはカメラが回っていても、いなくても変わりません。芸人さんはカメラの前ではハイテンションでも楽屋で寡黙という方が意外と多いですが、ヒロシさんは変わらないんです。演じていません。裏表の無いのが魅力。ただ、忙しすぎると忘れ物が目立つようになります。キャンプでそれ忘れる? みたいなことがあります(笑)。実はテントやたき火台などキャンプグッズはすべてヒロシさんの私物です。メイクさんもスタイリストさんも入っていません。今日はこのたき火台でたき火メインにやろうとか、ヒロシさん自身で番組の構成を考えてロケ地に来てくれます」

 キャンプグッズや番組の構成などヒロシにゆだねる部分が多そうだが、制作陣はどんな様子なのか。

 伊藤氏「表向きはロケですが、日没後の真っ暗な自然の中での撮影は、我々もキャンプそのものの感覚です。ヒロシさんと同じ火にあたり、同じ鍋のにおいをかいで時々食べて…。朝は日が上がらないうちに森の中を動き出し、朝の美しい景色を撮影。ロケというよりキャンプしている感覚です」

 キャンプ前には地元の店で食材を調達している。こだわりがありそうだ。

 伊藤氏「できるだけ個人商店を選んでいます。その土地の人と話したいし、暮らしぶりや地元の食材など、その土地の特色を少しでも感じられたらと思っています。個人商店の方たちは一国一城の主なので気概があり、ヒロシさんに負けないエネルギーを持っています。だからヒロシさんと響き合うような対話が生まれる傾向があります」

 変わらないことが大事だとするが、最後に目指すことを尋ねた。

 伊藤氏「水曜日の放送なのでSNS上で、週の中日にこの番組が助けになっているという声を多くいただくんです。その癒やしがあって木、金曜を乗り切れるという声。世の中の人の心の安らぎに、少しでも寄与し続けられたらと思います」

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