堀ちえみ、舌がん手術で人生一変 体調安定の秘訣は食事と断酒「バタッと飲めなくなって」

歌手でタレントの堀ちえみが、2019年の舌がん手術から22日で5年を迎えた。ステージ4を宣告され、舌の6割超を切除。同年4月には食道がんの手術も受けた。「人生が終わったと思いました」と絶望の日から、堀はどのように気持ちを保ち、逆境を乗り越えてきたのか。5年という節目を迎えた心境について聞いた。

2019年の舌がん手術から5年を迎えた堀ちえみ【写真:ENCOUNT編集部】
2019年の舌がん手術から5年を迎えた堀ちえみ【写真:ENCOUNT編集部】

人生が“終わった”…どん底だった手術室に入る前 訪れた心境の変化

 歌手でタレントの堀ちえみが、2019年の舌がん手術から22日で5年を迎えた。ステージ4を宣告され、舌の6割超を切除。同年4月には食道がんの手術も受けた。「人生が終わったと思いました」と絶望の日から、堀はどのように気持ちを保ち、逆境を乗り越えてきたのか。5年という節目を迎えた心境について聞いた。(取材・文=水沼一夫)

「5年はあっという間でしたけど、長いといえば長かった。でも、がんというのは、部位だけで完結するものではなく、体全体のこと。緊張感は全然変わっていなくて、5年たとうが10年たとうがリハビリは続きますし、いろんな意味でトラウマとして、がん告知を受けた経験というのは残っています。がんと闘っていきたいと思う気持ちには変わりはないので、安心はしてないですね。今後もちゃんと検査は受けて、早期に発見したら早期に治療ができるように、いつ顔出しても負けないぞという意気込みで気をつけていこうという気持ちは変わらないです」

 堀は気を引き締めつつ、引き続きがんとの闘いに打ち勝つ意思を示した。

 5年前のことは、今でもはっきりと覚えている。手術室に入る前、堀は絶望の淵にいた。

「覚えています。人生が“終わった”と思いましたので。手術し終わるまでは、もうおしまいだと思って覚悟はしていました」

 がんの告知により一変した人生。心を整理する余裕は全くなかった。家族のこと、子どものこと……。幸せにあふれた日常ががらがらと音を立て、今にも崩れようとしていた。

 動揺を隠せず、生きる希望さえ失っていた。しかし、手術が終わると、堀の気持ちに変化が訪れる。

「手術が終わってからは、『もうなったことはしょうがない。あとは前を向いて頑張って生きていこう』という気持ちに切り替わりました。諦めないという前向きな気持ちしかありませんでしたね。残った人生をおおいに楽しんで、自分らしく生きていこうと生き方を変え、いい部分にだけ目をやって生きていこうと思うようになりました」

 手術前はネガティブなことを気にしてしまうこともあったが、そこに留まる時間を惜しんだ。「プラスのことだけに目を向けて頑張っていこうと思うと、ずいぶん人生が楽になりました」。病気と向き合いながら前だけを見つめ、仕事を両立した。一昨年にはデビュー40周年の節目も迎え、昨年記念ライブを行った。

 手術の影響で、発語に後遺症が残り、リハビリは今でも毎日行っている。「時間のないときには1日5分ぐらい、時間があるときは30分と決めてやっています。ちょっとでもいいから毎日リハビリをやらないと退化というか、後ろに戻ってしまうので」

 歌手にとって、言葉がスムーズに出ないことの影響は少なくない。それでも堀は歌うことをやめなかった。「今まで歌はうまく歌わないといけないと思っていたんですけど、こうなってしまった以上、魂を込めて歌うとか誰かの力になれるように歌いたいと思うようになったのです」。歌を通じて伝えたいことは、歌のうまい下手ではなくなった。ステージに立ち、自らが歌う姿を見て、何かを感じてもらえたら。昨年末のディナーショーでは、「それが伝わっているというふうに相手からおっしゃっていただけたので、すごくうれしかったです」と、堀は喜んだ。

ステージで躍動する堀ちえみ【撮影:キシノユイ】
ステージで躍動する堀ちえみ【撮影:キシノユイ】

「病気になったからこそ、逆に意欲的に」 創作活動に意気込み

 公開中の映画『巡る、カカオ ~神のフルーツに魅せられた日本人~』では初のナレーションにも挑戦している。1か月にわたって、発語の特訓をした成果だった。「監督さんの指示の通りに言葉を発することができるようにリハビリを一生懸命やりました。ナレーションをやることを言語聴覚士の先生に伝えて、言語のリハビリを強化していただいて。特に『っ』とか『ず』『す』、さ行が結構大変なので、きれいにスムーズに音が出るように手直しをしていただきました」と、一語一語を見直した。

 病気と闘い抜くことを決めてから、この5年間で、人生の景色は明らかに変化した。

「もう神様からいただいたおまけの人生。(デビュー40周年の)ライブも達成でき、ナレーションもでき、本当に夢のようなことがご褒美としてあったので、生きているって素晴らしいなと思いました」と、笑顔を見せる。

 今年も4月20日に東京・日本橋三井ホールを皮切りに、ライブを開催していく。

「今年は作詞とか、そういう作家活動もやってみたいなと思っています。作詞をして、新しい曲を出したいですね。病気をして、心の中にいろんな思いというものを経験することができたので、何か形に残していければいいかなと。自分の子どもや孫たちに残していきたい思いがあります」

 特に伝えたいのは、平和への願いだという。

「いろんな国でいろんな痛ましいことが起きている中で、本当に優しい気持ち、人を思いやる心とか、そういうものをメッセージとして残していきたいなと。自分のことばかりになってしまう世の中で、お隣の人のことも少し考えて生きていけるような、そんな温かさみたいなものを詩の中に入れていきたい」と、訴える。

 意欲的な裏には、体調の安定もある。秘けつの一つは、食事だ。

「食事の制限はありませんので、本当においしいと思えるものを食べています。好きなものを偏らずに、適量で。野菜を多めに取ろうということはちょっぴり心がけて」

 好きなものを食べているから、ストレスもたまらない。一方で、飲酒は控えており、「自分ではお酒好きだと思っていたんですけど、ある日、病気の前にバタッと飲めなくなってしまって、今はにおいをかいでもダメで、ノンアルコールのものを摂取してもクラクラしちゃうぐらい、全くダメです」とのことだ。

「病気になったことは一つもいいとは思っていませんけど、でも、いろんなことを学ぶことができたので、悲観的になっていたのも、これでよかったんだなと思えます。病気になって、できないと思って諦めたことがいっぱいあったんですけど、病気になったからこそ、逆に意欲的になれた。いつでもできると思いながらもなかなかできなかったことが、病気になったことで、『今やるしかない』『今がやるチャンスだ』と考えられるようになりました」

 そして闘病中も応援してくれたファンの存在は大きな支えだ。「ライブは皆さんと一緒に歌えたらいいかなと思っています。やんわりと肩の力を抜いていきたいので、ファンの皆さんも力を抜いてお越しいただけたら」と、堀は結んだ。

◆堀ちえみライブ情報「CHIEMI STYLE 2024~come to my room~」
https://www.shochikugeino.co.jp/?p=124975&preview=true

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