葉加瀬太郎、平均年齢60歳の新バンド結成「言うことを聞いてくれない」「大変だけど面白い」

バイオリニストの葉加瀬太郎がKRYZLER&KOMPANY(クライスラー・アンド・カンパニー)以来となる新バンド・TARO HAKASE&THE LADS(タロウ・ハカセ・アンド・ザ・ラッズ)を結成し、今月6日、7日に東京・南青山のブルーノート東京でデビューライブを行った。ロック、ジャズ、ラテンなどさまざまなジャンルをミックスした新曲と葉加瀬の奏でるバイオリンの音色に超満員の観客はくぎ付けとなった。葉加瀬は「今年はバンド活動に力を入れていきます」と宣言。6日の終演後、その思いを聞いた。

葉加瀬太郎が新バンドを結成し、ブルーノート東京でお披露目ライブを開催【写真:佐藤拓央】
葉加瀬太郎が新バンドを結成し、ブルーノート東京でお披露目ライブを開催【写真:佐藤拓央】

25年前に結婚披露宴を挙げたブルーノート東京でお披露目ライブ

 バイオリニストの葉加瀬太郎がKRYZLER&KOMPANY(クライスラー・アンド・カンパニー)以来となる新バンド・TARO HAKASE&THE LADS(タロウ・ハカセ・アンド・ザ・ラッズ)を結成し、今月6日、7日に東京・南青山のブルーノート東京でデビューライブを行った。ロック、ジャズ、ラテンなどさまざまなジャンルをミックスした新曲と葉加瀬の奏でるバイオリンの音色に超満員の観客はくぎ付けとなった。葉加瀬は「今年はバンド活動に力を入れていきます」と宣言。6日の終演後、その思いを聞いた。(取材・文=福嶋剛)

――新バンド結成の経緯を教えてください。

「KRYZLER&KOMPANYでデビューして10年やってみて『バンドって大変だな』っていう思いがずっと僕の中にありました。ところが、4年前にその考えが大きく変わりました。新たにベテランミュージシャンたちをサポートメンバーに加えてツアーを回ったとき、みんな僕の指示通りに演奏してくれないのに、僕の想像を超えるような演奏が全国各地でできました。今まで僕が持っていた音楽観を見事にぶち壊してくれたことが、とてもうれしかったんです。それからの4年間は『2度とこんな素晴らしいメンバーと出会えない』という奇跡を感じながら、一緒にワクワクするようなライブをしてきました。そして、徐々に『このメンバーと運命を共にしたい』という衝動が抑えきれなくなってきたんです。例えるなら『4年間の交際を経て、今日(2月6日)無事に入籍しました』ですかね(笑)」

――メンバーの平均年齢は60歳だそうですね。

「そう。メンバー10人(※)のうち5人が60代で平均年齢が60歳。だけど、バンド名は『若者たち』というスラングで『THE LADS』にしました」

(※)バンドメンバー(年齢順):天野清継(67、ギター)、田中倫明(64、パーカッション)、羽毛田丈史(63、ピアノ)、渡辺等(63、ベース)、屋敷豪太(61、ドラム)、八巻誠(57、マニピュレータ)、葉加瀬太郎(56、バイオリン)、柏木広樹(55、チェロ)、大島俊一(55、キーボード)、田中義人(50、ギター)

――「バンドをやろう」と言ったときのメンバーの反応は。

「2022年全国ツアーの千秋楽の日にメンバーの前で『2024年に活動を始めましょう。そして、これからは僕のためじゃなくてバンドのために全員で曲を書きましょう』と話しました。そしたら、みなさんすぐにいろんなタイプの曲を書いてきて、67歳で最年長の天野さんは7曲も書いてくれました。羽毛田さんのサポートをしている天野さんの息子さんから『久しぶりに元気な親父を見ました』と言われました(笑)。リハーサルが始まるとみんな止まらなくなっちゃって、どこの現場でも軽音楽部みたいなノリになります。もう1度青春を味わっているみたいな感覚です」

――どんな音楽を目指していますか。

「1970年代のジャズとロックをミックスした『クロスオーバー』と呼ばれる音楽を意識しています。その中でもアメリカ南部のルーツミュージックやブルーブラス、ラテンなどメンバーそれぞれ演奏してきた音楽背景をぶつけ合いながら、誰も聴いたことのないバイオリン音楽を作ってみたいと思います」

平均60歳の新バンド・TARO HAKASE&THE LADS【写真:佐藤拓央】
平均60歳の新バンド・TARO HAKASE&THE LADS【写真:佐藤拓央】

葉加瀬太郎にとって新バンドは「新しい旅立ちの一歩」

――新曲は葉加瀬さんの全国ツアー中に作ったそうですね。

「昨年秋の全国ツアー中のリハーサル時間を使って新曲を作りました。みなさん、ベテランだからリハーサルはサウンドチェックくらいで終わり。あとは本番で演奏するだけなので、残りの時間を使って開演直前までステージ上で『ああでもない、こうでもない』と言いながらセッションを繰り返しました。でも、相変わらずみんな僕の言うことを聞いてくれないんです。やっぱりバンドは大変ですけど、今回は『だから、バンドは面白い』ってこのメンバーに出会って思えるようになりました」

――お披露目ライブは、みなさんカジュアルでリラックスしたムードのステージでした。ジャズとロックをミックスした曲では葉加瀬さんとメンバーのコーラスもあり、普段は聴けないようなスリリングで躍動感のある演奏に感じました。

「ブルーノート東京は僕にとって24年ぶりのステージで、新しい旅立ちの一歩だと腹を決めて臨みました。無事に初日を終えて、今はとてもうれしい気分です。若い頃は夢中になって演奏技術の勉強をしていたけれど、ここ10年くらいは、今の自分に必要なもの以外はあまり挑戦してこなかったので僕にとっては学びもあるし、これからもっと面白い演奏をしたいです」

――ブルーノート東京では、奥さま(高田万由子)と結婚披露宴(99年)もされています。今回も契りを交わす重要な場所になりました。

「そうですね(笑)。ブルーノート東京がオープンして間もない時にライブをやらせてもらい、『結婚式を挙げるならここでやりたいね』と妻と話をしていたら、お店の方が『どうぞ』と言ってくださって披露宴を行いました。妻は一番前の席に座っていて、僕はステージの上で司会進行役をしながら、先輩や仲間たちと最後までずっと演奏をしました。これも大変でしたね(笑)」

――最後にバンド・TARO HAKASE&THE LADSの活動予定を教えてください。

「新人バンドのTHE LADSは、3月からレコーディングに入って夏か秋にはアルバムを出したいと思っています。それを引っ提げて9月から全国ツアーを回る予定です。僕自身は4月からピアノ、チェロ、バイオリンによる室内楽と映像を融合したNH&K TRIOでの春の全国ツアーがスタートしますし、その後、京都の上賀茂神社と東京の明治神宮外苑総合球技場で恒例の野外フェス『葉加瀬太郎音楽祭』と活動が続きます。今年は僕のバイオリン人生においてもとても重要な年になります。平均年齢60歳の若者たち(=LADS)の活躍をぜひ見に来てください」

□葉加瀬太郎(はかせ・たろう)1968年1月23日、大阪・吹田市生まれ。90年、バンド・KRYZLER&KOMPANYのバイオリニストとしてデビュー。セリーヌ・ディオンとの共演で世界的な存在となる。96年、バンド解散後にソロ活動を開始。2002年、自身が音楽総監督を務めるレーベル“HATS”を設立。07年秋、「原点回帰」をテーマにロンドンへ拠点を移す。22年4月、東京藝術大客員教授就任。

※高田万由子の高ははしごだか

葉加瀬太郎公式HP:https://taro-hakase.com/

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