松尾芸能賞大賞に中村時蔵、難役に挑み「歌舞伎界を代表する女形として実力を発揮」

『第45回松尾芸能賞』の受賞者が14日に発表され、歌舞伎俳優の五代目・中村時蔵が大賞に選ばれた。また俳優の佐藤B作、古田新太、歌手の由紀さおりらも各賞を受賞した。

『第45回松尾芸能賞』の受賞者【写真提供:松竹株式会社】
『第45回松尾芸能賞』の受賞者【写真提供:松竹株式会社】

優秀賞に佐藤B作、古田新太ら、特別賞は由紀さおり

『第45回松尾芸能賞』の受賞者が14日に発表され、歌舞伎俳優の五代目・中村時蔵が大賞に選ばれた。また俳優の佐藤B作、古田新太、歌手の由紀さおりらも各賞を受賞した。

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『松尾芸能賞』は、日本の文化・芸能の保存・向上に寄与した芸能出演者や、演出・音楽・劇場芸能に高い技術を持つ方々を表彰する賞。1979年3月に、「日本の伝統ある劇場芸能を助成、振興し、日本独自の文化、芸能の保存及び向上に寄与すること」を目的として、公益財団法人松尾芸能振興財団を設立。同財団が80年に松尾芸能賞を創設し、毎年その年に活躍した舞台や芸能関係者を顕彰している。過去には、故・藤山寛美さん、故・橋田寿賀子さん、故・森光子さんらが大賞を受賞している。

 今回大賞を受賞した時蔵は、初舞台から芸歴64年の女形。81年、26歳から43年間『時蔵』を名乗り続け、2024年の『六月大歌舞伎』で初代中村萬壽(まんじゅ)を襲名する。23年9月には国立劇場で女形最高峰の難役『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の太宰後室定高(だざいこうしつさだか)を初役で勤めた。また、国立劇場養成所の主任講師として、後進の育成にも熱心に取り組んでいる。今回は「歌舞伎界を代表する女形として実力を発揮してきた。古風な中に艶やかさと鷹揚(おうよう)さがあり、どのような役を演じても時蔵ならではの味わいを見せてきた」と評価された。

 優勝賞には、演劇部門で佐藤と古田、邦楽部門に米川文清、文楽部門に豊竹呂勢太夫が選ばれた。また新人賞には歌舞伎俳優の中村児太郎、特別賞には由紀、功労賞には元歌舞伎俳優で俳優、日本舞踊『林流』の宗家・林与一が選ばれた。

 贈呈式は3月29日に行われる。受賞者と受賞理由は以下の通り。

○大賞 演劇 中村時蔵
「26歳の若さで五代目中村時蔵を襲名して以来、歌舞伎界を代表する女形として実力を発揮してきた。古風な中に艶やかさと鷹揚(おうよう)さがあり、どのような役を演じても時蔵ならではの味わいを見せてきた。2023年は、初役ながら『妹背山婦女庭訓』太宰後室定高で情理を弁えた演技で立女形の風格を、『鎌倉三代記』三浦之助義村では凛々しさの中に義太夫歌舞伎らしいコクを表現した」

○優秀賞 演劇 佐藤B作
「コメディを主眼にした俳優活動は多くの観客に支持され、舞台、テレビ、映画、バラエティ、ドラマと幅広い。主宰する『劇団東京ヴォードヴィルショー』の三谷幸喜作『その場しのぎの男たち』は、再演を繰り返す代表演目となっている。外部出演も数多く舞台を活性化させている。自らの活動に限らず劇団員や劇作家に機会を与え育成し、日本の喜劇を発展させたことは余人を以て代えがたい偉業である」

○優秀賞 邦楽 米川文清
「幼い頃から名流米川文子(初代・二代)の側近で育ち、二代目に師事して本格的に生田流の古典に専念し修業を重ねてきた。その成果はほぼ毎年、自身の演奏会で披露され、23年の第16回演奏会では師匠の助演から離れて独自自在の境で大曲『七小町』『笹の露』『竹生島』に師承の芸の底力を遺憾なく発現させ、古典力の豊かな輝きをみせて聴く者を感動させた」

○優秀賞 演劇 古田新太
「『劇団☆新感線』の看板俳優として約40年、活躍を続けている。『五右衛門ロック』『髑髏城の七人』といった長年の人気シリーズでは主演を続け、ひょうひょうとしてコミカルなキャラクターからは想像もつかないシャープな殺陣を見せてきた。23年『天號星』でもその魅力は健在である。気さくな善人から底知れない悪役までこなす演技の幅広さで、舞台、映画やテレビ出演も数えきれず、得難い俳優である」

○優秀賞 文楽 豊竹呂勢太夫
「若い頃から個性的な声で頭角を現し端正な語りに磨きをかけ、古典、新作に実力を発揮し、活躍は目覚ましい。師匠の厳しい教えに真正面から向き合った本人の努力の賜物である。人間国宝 鶴澤清治に薫陶を受け17年になる。この一年は、初役ながら『菅原伝授手習鑑 宿禰太郎詮議の段』『仮名手本忠臣蔵 塩谷判官切腹の段』の大曲で成果を見せた。円熟期を迎える今後の大成を期待する」

○新人賞 演劇 中村児太郎
「6歳の初舞台から10代後半までは『沓手鳥孤城落月』の裸武者といった立役を数多く演じ、着実に進境を重ねてきた。24歳の時に坂東玉三郎の指導を得て『壇浦兜軍記』の琴・三味線・胡弓を弾きこなす難役『阿古屋』を史上最年少で演じた。芸への覚悟と執念が歌舞伎俳優として大きく成長させ、23年は『神霊矢口渡』の娘お舟、『助六由縁江戸桜』の三浦屋揚巻を初役で演じ高い評価を得た」

○特別賞 歌謡 由紀さおり
「幼い頃から姉・安田祥子と共に童謡歌手として活躍。『夜明けのスキャット』『手紙』の大ヒット以来、歌手の他に司会、バラエティ、女優、ナレーター等、幅広い活躍は長年に亘る。特に11年、ピンク・マルティーニとコラボでリリースした『1969』は世界50か国以上で大きな評価を得た。国際的な知名度も高く歌謡曲のみならず、ポップス、ジャズ、アニメ主題歌と歌唱は多岐にわたり日本の音楽文化発展に大きく貢献した」

○功労賞 演劇 林与一
「若手歌舞伎俳優時代から70年近く、歌舞伎、新派をはじめ松竹、東宝等の商業演劇の世界で数多くの記憶に残る舞台をみせてきた。テレビや映画での出演も含めれば多彩な『芸能史』への功績は多大なものがある。傘寿を越えた現在も色気と風格を体現する身ごなしとメリハリある台詞回しを見せ、舞台には瞠目すべきものがある。近年は後進俳優たちへの助演、助力も惜しまず健闘している」

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