青木真也、試合直前の相手変更はなぜ可能だったのか チャトリと交わした本音「お前と俺、友達だったじゃん」

“跳関十段”青木真也(40=日本)は格闘技イベント「ONE 165: スーパーレック vs. 武尊」(1月28日、東京・有明アリーナ/ABEMA PPV ONLINE LIVEで国内独占生中継)の第9試合でジョン・リネカー(ブラジル)と対戦。1R・一本勝ちを収めた。試合1時間前には急きょカードが変更となるハプニングがあった。そしてセコンドには憧れの存在であるケンドー・カシン。1004日ぶりのMMA勝利までの道のりどんなものだったのか。試合後の控室で話を聞いた。

チャトリCEOの発言に思わず笑ってしまう青木真也(左)【写真:山口比佐夫】
チャトリCEOの発言に思わず笑ってしまう青木真也(左)【写真:山口比佐夫】

チャトリ氏も本音「ここ数年誤解があったかもしれない」

“跳関十段”青木真也(40=日本)は格闘技イベント「ONE 165: スーパーレック vs. 武尊」(1月28日、東京・有明アリーナ/ABEMA PPV ONLINE LIVEで国内独占生中継)の第9試合でジョン・リネカー(ブラジル)と対戦。1R・一本勝ちを収めた。試合1時間前には急きょカードが変更となるハプニングがあった。そしてセコンドには憧れの存在であるケンドー・カシン。1004日ぶりのMMA勝利までの道のりどんなものだったのか。試合後の控室で話を聞いた。(取材・文=島田将斗)

 今回の試合のテーマは「引き際」だった。万全の状態でトップリーグで戦う最後の機会と明言して望んだ試合当日。しかし決戦のわずか1時間前に対戦予定だった元UFCファイターのセージ・ノースカット(米国)がドタキャン。まさかの事態にONEからバックアッパーとの試合を頼まれるも、当初は拒否した。

「俺、最後の気持ちできたよ。だから(試合を)やらないよって。それでもやってと言ってくるから『なんでお前の都合いいときばっかりファミリー的なこと言って、俺これで飲むの?』って」

 青木と団体代表のチャトリ・シットヨートン氏は、かつては選手とコーチという関係。そして2人は「友達」だった。「それが彼がビジネスを大きくするなかで雇用主と選手になっちゃったんですよね。関係が悪くはなかったけど、コミュニケーションを取れてなかったんですよ」と振り返る。

 MMAファイターであるのにも関わらず2023年は1度もMMAの試合が組まれなかった。その中で起きた今回のハプニング。青木も簡単に首を縦には触れなかった。

「お前(チャトリ)と俺さ、友達だったじゃんって。違うでしょ今は。俺、それじゃ嫌だよって。チャトリと青木真也、友達として必要だからお願いしますって言ってくれるならやる。でも、会社の社長として言うならやらないって」

 一方のチャトリも青木との関係が昔とは変わってしまっていたことを告白した。

「15年前は彼と関係がすごく近かった。ONEを始めてから、もちろん経営者としてそこに集中しなければならないし、学んでいかなきゃいけないことも多かった。社長として経営者として“プロ”でいる必要があった。そこに関しては友達としての概念ではできなくて、社長として接する必要があったんです」

 さらに「ここ数年は青木さんからしたら誤解があったかもしれない。今日、本音で話した。不仲っていうのは社長としての責任を果たすための行動だったと。いまでも青木さんのことが大好き。いまも昔も心からのリスペクトは何も変わりません」と続けた。

 心がすれ違ってしまっていた2人。青木は「僕はあなたの団体に必要ですか?」とストレートに問う。答えはもちろんイエス。「分かった。友達だからやるよ」――。リングに上がる1時間前に試合は成立した。

ケンドー・カシンと抱擁し幸せそうな青木真也(奥)【写真:山口比佐夫】
ケンドー・カシンと抱擁し幸せそうな青木真也(奥)【写真:山口比佐夫】

ケンドー・カシンからのセコンド受諾LINEに号泣「もうボロボロ泣いて」

 ウルフルズの楽曲「バカサバイバー」でいつものように入場してきた青木。セコンドにはプロレスラーのケンドー・カシンの姿があった。憧れ、なりたいものと位置づける存在。青木はセコンドを依頼することを何度も躊躇した。

「僕にとって本当に偉大。カシンに憧れて、カシンを始めて、もう直接会って頼めなかったんだよね。『先輩お願いできますか?』って夜にLINEで連絡した」

 すぐには返信は来なかった。寝てしまっているのかと思いを巡らせる。次の日の朝、届いたLINEに、ぱっと飛び起きた。

「開いてみたら『光栄です。承知しました』って。それだけ入ってきてて……。もうボロボロ泣いたんだよな。もうボロボロ泣いて。それで今回の試合いいって思ったんですよ」

 試合前のドタバタからもカシン“らしさ”を感じたという。

「相手が変わったときに『ちょっとギャラ上がったんでしょ?』って。『良かったね、持ってるな! (相手が)小さくなって、やることは変わらないからラッキーだよ!』って」

 結果、1R・一本勝ち。観客からはアオキコールの大合唱もあったが、青木の感想は「勝手にしろ」。5万ドル(約741万円)のボーナスも獲得した。その際もケンドー・カシンから「持ってるな~」と声をかけられたという。青木は「格闘技マインドじゃないんですよ。プロレスラーすぎるよね」と笑顔だった。

 435日ぶりの待望のMMA戦、急きょ相手は変更になったが、2021年4月29日のエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)戦以来、1004日ぶりの勝利。青木は「人の前で勝つとか、日本で勝つとかよりもケンドー・カシンの前で勝つことが俺にとって1番価値があるんだよな」とうなずく。

「抱き合って、写真撮れて。ボーナスも獲れたけど、そんなのどうでもいいんだよ。ボーナスもらって『コソボだよ』ってカシンのまねがしたいだけなの。それでうれしかった」と少年のような笑顔を浮かべていた。

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