20歳・窪塚愛流「逃げ道がなくなって責任感が増した」 注目度上昇も忘れぬ謙虚な気持ち
俳優の窪塚愛流は2024年、さらに飛躍しようとしている。昨年は日本テレビ系連続ドラマ『最高の教師』での多感な高校生役を演じた。今月26日に全国公開されたゾンビサバイバル映画『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』(菅原伸太郎監督)に主要キャストで出演し、その後は主演作の公開が控えている。着実に出演作品を重ねている20歳の思いを聞いた。
公開中の映画『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』に出演
俳優の窪塚愛流は2024年、さらに飛躍しようとしている。昨年は日本テレビ系連続ドラマ『最高の教師』での多感な高校生役を演じた。今月26日に全国公開されたゾンビサバイバル映画『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』(菅原伸太郎監督)に主要キャストで出演し、その後は主演作の公開が控えている。着実に出演作品を重ねている20歳の思いを聞いた。(取材・文=大宮高史)
――『君と世界が終わる日に』は、『きみセカ』と呼ばれるシリーズ。ウイルスが蔓延した世界で、人がかまれると「ゴーレム」という化け物になってしまう設定の人気作です。公開がかなった今の思いは。
「高校時代にテレビで見ていた『きみセカ』に出演できて、素直にうれしいとともにプレッシャーもあります。Season1から3年間続いてきたシリーズなので、『ずっと見てきたファン、菅原監督やプロデューサーの期待に応えないと』という責任感がありました。とにかく悩んで、分からないことは何でも現場で確認していきました」
――「悩んだ」ということは、「役作りに苦労した」ということでしょうか。
「僕が演じる藤丸礼司は、ワクチンを求めて竹内涼真さんが演じる間宮響に付いていく弱気な青年です。台本を読み進めていくと、僕は礼司ほど自己愛が強くないというか、『自分の欲求に正直ではない』と感じました。僕自身は他者を押しのけるほどしたたかな貪欲さがないので、『自分に足りないものを役で表現する』という難しさがありました」
――その難しさをどのように解決していきましたか。
「演技については自分で考えてみるのですが、同時に考えすぎずに分からないことは何でも菅原監督に聞きました。演技のことだけでなく、作品への想いも話していただきました。僕は劇場版から『きみセカ』に参加したので、新しい風を入れるというよりは、『皆さんが作りあげてきた空気感を理解してなじんでいこう』としました」
――撮影現場の雰囲気は。
「なんだか部活のような温かさでした。竹内さんが部長のように頼もしくて、『行くぞ!』と声を掛け合って、気勢を上げる一体感がありました」
――仲良くなった共演者の方はいますか。
「松山寿人役の橘優輝くんです。彼の方が1歳年上で『最高の教師』でも共演しているのですが、初めて現場で顔を合わせた時、(橘は)松山として顔にタトゥーのメイクをして武器も持ったままでした。ちょっと怖かったです(笑)。でも、話をすると優しくて僕の緊張もほぐしてくれました。そんな役と人柄のギャップが魅力的でした」
フォロワー激増も「いただいた恩を返しきれていない」
――昨年10月3日に20歳になりましたが、新成人となった心境は。
「10代の頃はまだ親の庇護下にありましたが、今は『10代だから』という逃げ道がなくなって、責任感が増したなと思います。重荷ではなくて、『胸を張って役者の仕事を誇れるようになりたいな』というポジティブな思いの方が勝ります。その分、自分の足りないところにも向きあっていかないといけません。自分の弱点を痛感しています」
――今、どんなところを「弱点」と実感しているのでしょうか。
「『言葉で伝える力』です。インタビューをしていただく機会も増えましたが、こういう場でも気持ちだけが前のめりになってしまって、思考や感情を整理して伝えるのが苦手です。竹内さんはそんな自分と正反対です。自然に僕らを楽しませてくれたり、場を和ませてくれました。僕は竹内さんという太陽の周りを回る惑星のようでした」
――それでも、言葉を選びながら、役、経験、考えをしっかりと話されている印象です。
「『もっともっと話したいし、話せるはずだ』というもどかしさがあります。語彙(ごい)力やユーモアも鍛えて、ファンの方や一緒に作品を作っていく皆さんにも、素直に感情を伝えられるようになりたいです。10代の頃よりも今の自分自身を俯瞰したり、周りを観察できるようになっての発見でした」
――多くの若手俳優がいる中、昨年もドラマ『最高の教師』、映画『少女は卒業しない』など、多くの作品に出演されています。
「『最高の教師』に出演してから街で声をかけられることが増えたり、SNSのフォロワーも増えて驚いています。注目されている実感もあります。ただ、うれしさとともに『いただいた恩を返しきれていないな』と思います。緊張して話し下手になってしまうこともその一因です……。応援や期待を無駄にしないように、謙虚に人としての魅力を高めていきたいです」
――そんな中で迎えた2024年ですが、正月はいかがでしたか。
「実は風邪気味でした。でも、早く治したくて『病は気から』とも言いますから、いつもよりもテンション高めに家族に接してみました。そうすると、本当に気分が良くなったんです。ただ、調子に乗って部屋で音楽をかけて踊ってみたら、さすがに風邪がぶり返して熱が出ました(笑)。『メンタルが体調に影響するんだな』と実感しつつ、若さに任せてはしゃぐのはほどほどにしておきます(笑)」
――今年は蒔田彩珠さんとのダブル主演映画『ハピネス』などの公開が控えています。俳優としての目標は。
「まだアクション映画の経験がないので、思いきりアクションで躍動してみたいです。今回演じた藤丸礼司はゴーレムと戦う仲間に助けられてばかりだったので、竹内さんが響として見せてくれたように、命をかけて戦う頼もしい姿もお見せしたいなと思います。同じ場にとどまっていないで、俳優としての目標やハードルをさらに上げていくことが大切です」
――あらためて、2024年の抱負を。
「『きみセカ』はゾンビサバイバル映画であるとともに、人の愛の強さを実感できる作品です。むしろ、『愛』や『絆』の方がシリーズの主題だと思います。振り返ると、僕も昨年は俳優として未熟なところばかりに目が向いて、へこむ時期がたくさんありました。いろいろ方からの愛に助けられてきました。今年はもらった愛を返す年にしたいなと。自分ではない『どんな存在にもなれる俳優』の醍醐味を余さずに生かし、一つひとつの作品から丁寧に学んで成長していきます」
□窪塚愛流(くぼづか・あいる)2003年10月3日、神奈川県生まれ。18年に映画『泣き虫しょったんの奇跡』で俳優デビュー。21年に日本テレビ系『ネメシス』でドラマ初出演。23年は日本テレビ系連続ドラマ『最高の教師』や映画『少女は卒業しない』などに出演。今年3月1日には映画『愛のゆくえ』、5月17日には、初めて主演を務める映画『ハピネス』が公開。
スタイリスト:上野健太郎
ヘアメイク:小嶋克佳