『ゴールデンカムイ』ヒロインの23歳・山田杏奈、原作再現で「画像フォルダが変顔だらけ(笑)」
「ちゃおガール☆2011オーディション」から10歳で芸能界入りした俳優の山田杏奈が、今月19日公開の映画『ゴールデンカムイ』(久保茂昭監督)にヒロインのアシリパ役で出演している。マンガ・アニメとヒットが続いた作品の実写化。大役を演じるまでになった23歳の思いを聞いた。
原作通りの変顔&アクションにも挑戦
「ちゃおガール☆2011オーディション」から10歳で芸能界入りした俳優の山田杏奈が、今月19日公開の映画『ゴールデンカムイ』(久保茂昭監督)にヒロインのアシリパ役で出演している。マンガ・アニメとヒットが続いた作品の実写化。大役を演じるまでになった23歳の思いを聞いた。(取材・文=大宮高史)
『ゴールデンカムイ』は明治時代末期の北海道を舞台に、隠された金塊のありかをめぐって男たちが争奪戦を繰り広げるバトルアクション。西部劇を彷彿とさせるロマンあふれるストーリー、派手なアクションや北海道の歴史へのち密な考証が人気を博している。野田サトル氏の原作漫画は単行本累計2700万部を突破した。文字通り、多くのファンがいる大作。山田は重圧があったことを正直に明かした。
「こんなにゴージャスな作品に出演できることも初めてですし、アシリパというたくさんの人から愛されるキャラクターを演じさせていただけることにも責任感でいっぱいでした」
その上で「もし、他の誰かに決まっていたら絶対悔しさを感じていたと思うので、『私がベストのアシリパだった』と思っていただけるようにお芝居をしてきました」と充実の笑みも浮かべた。
主人公は日露戦争から帰還した元陸軍兵士の杉元佐一。雪山でヒグマに襲われた杉元を助けたアイヌの少女のアシリパは、杉元の相棒として金塊をめぐる争奪戦で活躍しつつ、お互いに理解を深め合っていく。
「アシリパは少女とは思えないほど人生経験があって、『自分はこうだ』というしっかりした価値観を持っています。その芯の強さに私は愛着を感じて、『アシリパに寄り添って頑張ることで、スクリーンでの彼女をより魅力的にお見せしたい』と思いました。壮絶な経験をしてきたのにコミカルなシーンもあって、作品の面白さにもなっています」
原作同様、アシリパの愛きょうある“変顔”の再現にも挑戦した。
「思い切ってやってみました。スマホ内のカメラで撮って練習していたので、画像フォルダが変顔だらけです(笑)。『ギャグとシリアスのバランスが絶妙だな』と原作を読んだ時から思っていて、生身の私たちがそれをどう面白く見せるかを俳優・監督と話し合って作ってきました」
雪中シーンの9割は冬の北海道での撮影。過酷な環境で、漫画さながらのアクロバティックなアクションに挑んだ。
「雪に転んでばかりでしたし、手洗い場の石けんが凍ったり、いすが雪に埋もれてしまうほどでした。その環境で初めてのアクションでしたが、アシリパたちが経験したであろう自然と寒さの中で撮影できたこともありがたかったです。アクション担当の方からは『身のこなしは、決まり過ぎない方がいい』とアドバイスをいただきました。その方が山で駆け回ってきた彼女としては自然な動きなのかなと思って、振る舞いに少し抜けている感覚も込めました」
アシリパが育ったアイヌ文化へのち密な考証も『ゴールデンカムイ』のみどころだ。山田は五感で作品世界の感覚をつかんでいた。
「アイヌ語・文化監修の中川裕先生から、言葉づかいから習俗まで教わりつつ、神話集も読んできました。アシリパの装束を着た身体に自分の手でじかに触れて、彼女が生きた世界を私の身体感覚になじませてきたかなと思います」
そんな現場で、杉元を演じる山崎賢人が頼もしく、気の置けない存在だったという。
「山崎さんは芝居の細かいところをおざなりにしないで、突き詰めて役を作っていく役者さんでした。なのに天真爛漫なところもあって、近くにいると(周りが)放っておけない人なんですよ」
「理解するのが難しかった」…主演映画で苦戦した経験
2011年に『ちゃおガール』オーディションに合格し、誌面モデルとして活動。13年から俳優の道を歩き始めた。『ゴールデンカムイ』でもアシリパの人物像に寄り添い、「演じる人物の一番の理解者になること」を信念にしている山田だが、「経験した難役」に3年前の主演映画『ひらいて』で演じた木村愛を挙げた。同級生への恋心で嫉妬する高校生の設定だった。
「彼女の性格にどうしても共感できなくて、むしろ嫌いになったまま演じていたんです。それを首藤凜監督にお話したら、『理解できないまま演じることも俳優の役作りです』と言っていただけました。それまでの私なりのやり方が通じなかった難しい経験をしました」
俳優歴も12年目。今回、大役を演じきったことも心身とも財産になった。「続編」が制作された場合の出演にも意欲を示した。
「アシリパが劇中の大人の男たちと違うのは、冒険を重ねて劇中で成長していくところなんです。『私も一緒に大きくなっていかないと』と愛を持って演じることができました。(原作では)もっと過酷な場面が続きますし、死別したとされるお父さんとの関係も描かれて序盤の『アシリパ像』が揺らいできます。シリアスなシーンを経験する分だけ彼女の内面により迫ることができると思うので、(続編は)やりがいがあります。俳優同士で『マンガで人気の描写を生身の私たちでどう演じるか』をプレッシャーに感じつつ、他ではできないマンガ的なアクションができることを楽しんできました。派手さも会話のコミカルさもキャラクターたちの魅力も、ゴールデンカムイらしい面白さをギュッと詰め込んだ映画です。私も『どんな役でも任せたい』と(続編出演の)オファーをいただけるように努力し続けます」
アシリパとはアイヌ語で「未来」「新しい時」を意味する。活発なヒロインに触発されて、自身の未来も切り開いていく。
□山田杏奈(やまだ・あんな)2001年1月8日、埼玉県出身。11年、『ちゃおガール2011☆オーディション』でグランプリを受賞し、芸能界入り。13年にTBS系ドラマ『刑事のまなざし』で俳優デビュー。18年に『ミスミソウ』で映画初主演。23年は映画『山女』での演技が評価され、第15回TAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。に日本テレビ系『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』でヒロイン役を演じた。159センチ。血液型A。
ヘアメイク:菅長ふみ スタイリスト:中井彩乃
※山崎賢人の「崎」はたつさき
※アシリパの「リ」は小文字が正式