ラーメン業界から悲鳴 鶏油が「手に入らない」 名店はどうしている? 試行錯誤の実情
いまや日本を代表する料理・ラーメンでよく使用されている鶏肉を巡り、店主たちを悩ませる事態が起きている。がらやチャーシュー、鶏油(ちーゆ=鶏を加熱して得られた油)などラーメンに使用されている食材として枚挙にいとまがない。しかし、国内外での鳥インフルエンザの流行などにより鶏が高騰、入手困難となっている。そんな国民食の“生命線”を仕入れるために各店はどう立ち向かっているのか。「JAPAN BEST RAMEN AWARDS 2023」2位に輝いた「らぁ麺 飯田商店」(神奈川・下足柄郡)の店主・飯田将太氏に実情を聞いた。
使用している食材を公式サイトで公開
いまや日本を代表する料理・ラーメンでよく使用されている鶏肉を巡り、店主たちを悩ませる事態が起きている。がらやチャーシュー、鶏油(ちーゆ=鶏を加熱して得られた油)などラーメンに使用されている食材として枚挙にいとまがない。しかし、国内外での鳥インフルエンザの流行などにより鶏が高騰、入手困難となっている。そんな国民食の“生命線”を仕入れるために各店はどう立ち向かっているのか。「JAPAN BEST RAMEN AWARDS 2023」2位に輝いた「らぁ麺 飯田商店」(神奈川・湯河原町)の店主・飯田将太氏に実情を聞いた。
「値上がりはもちろんしていますね。一気にドンっていうよりは、10年前ぐらいから徐々に徐々に上がってきているという感じでしょうか。ただここのところはその値上がり幅がより大きいなというのはあります」。飯田氏は鶏肉を仕入れる際の現状を明かした。
2004年に店を立ち上げた飯田氏は17年に「TRYラーメン大賞」を受賞。「JAPAN BEST RAMEN AWARDS 2023」も21年から2年連続で1位に輝いた。こだわり抜いた鶏肉のみを使用するラーメンはたちまち多くのラーメン好きを魅了。約5年前の19年5月には、レシピを大幅にリニューアルし、現在では豚と鶏を掛け合わせた一杯を提供している。
飯田商店はかねて使用している食材を公式サイトで公開している。現在使用している丸鶏は黒さつま鶏黒王、比内地鶏、名古屋コーチン、山水地鶏の4種類。ガラは黒さつま鶏黒王、比内地鶏、名古屋コーチンの3種類だ。
「やはりコロナが大きかったですね。まず鶏が売れなくなってしまいましたし、その影響で生産が落ち込み、どんどん市場が小さくなっていってしまっていると感じます」。
人気レビューサイトでも1位を獲得するなど、人気と実力を兼ね備えた名店の味に欠かせないのは鶏油だ。鶏油も丸鶏やガラと基本的に変わらない材料を使用しているという。「うちは鶏からそのまま出てくるやつしか使いません」とこだわりを改めて口にしたうえで、「鶏油の方が全然手に入らないと思います」と断言した。
鶏油を一切使わないラーメンも考案
鶏油なら何でも良いというわけではない。こだわった食材のみを使用する飯田商店で求められる、ハイレベルな鶏油をどうやって確保しているのか。「それはやっぱり業者さんとの長年のお付き合いですよね。欲しい時だけとか、あっちもこっちも、といろんなところと取引したりとかっていうことはしません」。これまで築き上げてきた食材業者との関係性がカギになると力説した。
困っているのは他店も同じだ。鶏を使用している他のラーメン店でも、対応に追われているとの声を耳にするという。「なかなかちょっと手に入りづらくなりましたよね、みたいな話はします。もうどうしようもないから、いろいろなところに声をかけてかき集めているという状況ということもよく聞きますね」と業界を取り巻く現状を語った。
もちろん現状を憂うだけでなく、飯田氏はきちんと対策を講じている。鶏肉からの“脱却”だ。「背脂からラード(豚の脂肪から作られた食用油脂)を抽出するうまいやり方をちょっと考えました。上質できれいな豚の油が取れるようになったので、そういう魅力もいいかな、と。実際に一部のラーメンで使用していますよ。あとは本店のラーメンに関しては変わらないけども、支店のラーメンの一部で鶏油を一切使わないラーメンというのを作っています」と自ら考え、編み出した新アイデアを明かした。もともと飯田氏の頭の中に鶏油を使用しないラーメンのイメージがあり、入手困難になった現在の時代背景とマッチし生まれたという。昨年の夏ごろから製作に取り組んでいて、1月から塩ラーメンとして販売されるとのことだ。
また、「他の支店では、スープはガラや丸鶏からとっているのですが、鶏油を使わないため、浮いてきた油をとって別店舗に送る、といった形でやっています」と他の店舗と併せて鶏油問題を乗り越え、やりくりしている。
ラーメン業界を取り巻く鶏問題。各店が趣向を凝らし、試行錯誤を重ねている。こうした中で、業界のトップランナーはその障壁すらも逆手に取り、新たな時代の潮流を生み出そうとしている。