宮沢和史、デビュー早々に急きょ取った休養 向かった先は父と通った「自分を取り戻せる」場所

シンガー・ソングライターで元THE BOOMの宮沢和史が19日、パシフィコ横浜で行われた『釣りフェスティバル 2024 in Yokohama』に登場。釣り文化の発展に寄与している人に贈られる表彰『ロイヤルアングラー賞2024』を受賞し、釣り愛好家が集まった会場で、アングラーとしての深い思いを語った。

フィッシング愛好家としてステージに登壇した宮沢和史【写真:ENCOUNT編集部】
フィッシング愛好家としてステージに登壇した宮沢和史【写真:ENCOUNT編集部】

のめり込んでいるのはフライフィッシング 釣りの師匠の存在も

 シンガー・ソングライターで元THE BOOMの宮沢和史が19日、パシフィコ横浜で行われた『釣りフェスティバル 2024 in Yokohama』に登場。釣り文化の発展に寄与している人に贈られる表彰『ロイヤルアングラー賞2024』を受賞し、釣り愛好家が集まった会場で、アングラーとしての深い思いを語った。(取材・文=吉原知也)

 宮沢は小学1年から釣りを始め、子どもの頃は父親と一緒に渓流釣りに出かけるなど、釣りに親しんだ。地元が山梨であることから淡水系を中心に釣行しており、近年はフライフィッシングに没頭しているという。

 表彰状とトロフィーを手渡されると、「表彰していただくことが人生で少ないものですから、照れくさいのとうれしいです」と照れ笑い。トークショーでは、自身の釣り歴や釣りに対する真摯(しんし)な考えなどを語り尽くした。

 幼稚園の予防接種で体が不調になるなど内向的で病院ばかり行っていた幼少時代。背も低くコンプレックスもあった。そんなあるとき、近所の友達が釣りが大好きで、下校時に声をかけてもらい、そこで釣りを始めたのがきっかけになった。ビニールハウスの骨組みを親に内緒で解体し、竿に見立てて川に行った。「これが、ものすごく楽しくて」。矢口高雄による釣り漫画の代表作『釣りキチ三平』にもハマっていったという。
 
 その友達とは高校からは学校が分かれてしまったが、大人になってから偶然、川でばったり出くわしたという。「彼が釣りがものすごくうまくて、さすが僕の師匠と思いました」。

 青春時代を迎えると、高校の部活や音楽活動に取り組むようになって一時期は釣り場から離れた。プロのミュージシャンになり、全国を回るようになってから「行く先々にいい川があるんですよ。あっ、やってる。うーん、となることが多くなりました」。こうした中で、青森・浅虫温泉でイワナ釣りをやってみる機会を得ることができた。そこで、尺サイズをいきなり揚げ、「それでもう、よみがえってきて」。情熱を取り戻し、本格的に釣りを再開したという。

 のめり込んでいるのは、フライフィッシング。司会からオススメの釣り場を聞かれると、「『ここ釣れるんだよね」という場所を言いますかね?(笑)」と話しながら、「山梨県は海がないので基本、淡水魚なんです。鮎以外の釣りはほとんどやりました。ルアー、エサ、ミャク釣り、ワカサギもやりました」。

 ここで、思い出深いエピソードを披露した。約35年前、何をしても「永遠に釣れる」という絶好スポットを見つけ、1人で釣りに興じているうちに魚をリリースするのも雑になってしまった。ふと我に返り、「何してるんだろう、俺は」とハッとなった。改めて生き物を大事にすることを見つめ直し、より自然環境を考え、フライフィッシングに絞って釣りを行うようになったという。

「子どもの頃に親が連れて行ってくれたコースを自分1人でたどってみようと」

 1日中歩き山を越えて川を渡るストイックな渓流釣りのスタイルは、ジーンズを切ってあしらえたホットパンツ姿で、「ギャルみたいな感じです(笑)。機能性優先の姿なので、とても見せられません」。意外な格好でロッドを振っていることを明かした。

 愛好家の宮沢にとって釣りとは何か。太公望としての考えを聞かれると、「子どもの頃から音楽の世界に憧れて、夢に手が届いて(業界に)入ってみたら、厳しい世界だということを思い知らされるわけです。お客さんが1人のライブもありました。ツアーの移動工程もきついです。田舎で育った釣りをしている人間が急にそういうところに行くと、歌の実力も通用しないという自覚もあって、曲も作れるのかなと不安にもなって。本当に嫌になってしまいました。デビューして早々なのですが、一番売り出していかないといけないときに休みをもらったんです。『1週間だけお願いします』と言って休みをとったんです」。

 知り合いから借りたジムニーにフライロッドを乗せ、ハンドルを握った。向かった先は、子どもの頃に父親と一緒に行った“あの場所”だ。「子どもの頃に親が連れて行ってくれたコースを自分1人でたどってみようと。そうして子どもの頃のポイントに行くと、いいイワナが釣れて…。とっても感動したんです。音楽のことなんか考えなくて、イワナのことしか考えてない。こういう時間は大切だなって」。大事なことに気付いた。「何年かして同じポイントにいくと、また魚がいてくれる。目まぐるしく変わる人生、疲れたり悩んだり、前に進めなくなったときに、知っている景色に行くと、自分を取り戻せるというか、『ここで10年前釣りしたよな。同じ石に座ってコーヒー飲んだよな』と実感して、すべてがリセットされる。この岩からまた立って東京に帰るか、と思えるんです。変わらない景色に戻ると、変わっていく自分がどれだけ変わったのか、変わっていないのか、知ることができるんです」。人生の大事な時間になっている――。感慨深げに語った。

 真剣な語りの中でも、聴衆をクスっと笑わせることを忘れない。「携帯電話が出た頃は『ここから先は圏外だ』と仕事の電話が来なかったのですが、今は(携帯の電波が)どこでも入るから」と冗談めかし、笑顔を見せた。

 最近は奄美大島でミナミクロダイを狙う、海のフライフィッシングの楽しさを知ったという。次なる目標は「釣りの北海道遠征」だ。そして、今年デビュー35周年を迎え、音楽活動にもさらなる力を入れていく意欲を示した。

 釣り・アウトドアブーム真っ盛り。これから釣りを始めたいと思っているビギナーに向けて、「僕が釣りを始めた頃とは環境も違いますし、自然もだんだん少なくなって、気候も不安定になっててきています。そんな中で釣りを始めるのは難しいとは思いますが、マナーもルールも今まで以上に守っていかないと、釣り場をキープできないと思います。いろいろなマナーを知っていていろいろな経験を積んでいて自然を愛している上手な方と出会って、その方と一緒に釣りをすることが一番だと思います」とメッセージを寄せた。

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