トヨタ会長、エンジン開発の実情に「絶対にあってはならない」 “借金できない”発言が波紋
トヨタ自動車の豊田章男会長が12日に開幕した「東京オートサロン」(千葉・幕張メッセ)のあいさつで、エンジン開発の厳しい現状に言及し、波紋を呼んでいる。
ネット反響「これは、ホンダの技術者はトヨタに行っちゃうでしょ…」
トヨタ自動車の豊田章男会長が12日に開幕した「東京オートサロン」(千葉・幕張メッセ)のあいさつで、エンジン開発の厳しい現状に言及し、波紋を呼んでいる。
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「エンジンに携わる人たちは、最近、銀行からお金を貸してもらえないこともあるそうです。そんなこと、絶対にあってはならない」
電気自動車(EV)が普及すれば、部品が少なくて済む分、自動車産業に携わる人々は大幅に減ると見込まれている。豊田会長はそんな技術者の不安を払拭するかのように、力強い言葉で“死守”を約束した。
いまだ日本がEVにシフトしきれていないことへの逆風に触れるかのように、「カーボンニュートラル(脱炭素)の山の登り方は国や地域によって違います」と前置きすると、やり方は異なっても車への思いは共通だと強調。
「カーボンニュートラルはバッテリーEVだけじゃないと、3年前から水素エンジンにも取り組んできました。昨年は液体水素に挑戦したり、ルマンで走らせたり……。なぜここに力を尽くしてきたか? それは仲間と一緒じゃないと未来を作っていけないからです。(自動車産業に携わる)550万人の中にはエンジン部品を作っている仲間たちもたくさんいます。日本を支え、これからの日本を強くしていく技を持った人たちです。この人たちを失ってはいけません」と宣言した。
そして、「カーボンニュートラルに向けた現実的な手段として、エンジンにはまだまだ役割がある。だから、エンジン技術にもっと磨きをかけよう」と続け、トヨタ内にエンジン開発の新プロジェクトを立ち上げることを表明した。
大変革期を迎えている自動車業界で、“ガソリンエンジン”への風当たりは強まるばかり。プロジェクトの詳しい内容は不明なものの、時代に逆行するような発言とも受け取られかねない。
だが、どんな形であれ、「エンジン」維持への熱い思いを繰り返した豊田会長に、ネット上の自動車ファンからは「さすが豊田会長ちゃんと現状が見えてるな」「残りの人生トヨタと共にだ!」「環境に優しいエンジンを作れば問題ないんじゃ?」「水素エンジンとそのインフラが実用的になったら嬉しい」「これは、ホンダの技術者はトヨタに行っちゃうでしょ…」などの反応があった。
「エンジンを作ってきた皆さん、エンジンを作り続けましょう! これからもみんなの力が必要なんです。今までやってきたあなたたちの仕事を絶対に無駄にはしない。仲間たちにこの声がしっかり届いてほしいと思います」
「この3年間ぐらいは孤軍奮闘」 漏らしたリーダーの本音
その後、トークショーでも豊田会長は熱弁。
「仮にバッテリーEVだけ、電気自動車だけというのが選ばれちゃうと、部品点数が3分の1ほど減りますからね。そうすると、エンジンに関わってきて、ずっとそこにこだわって車産業に貢献してきた方々の人生って、一体何だったの。エンジンに関わり、エンジンが好きだって学校で勉強してきたのにそういうチャンスがないっていう人の夢をなくすには、ちょっと早いんじゃないの」と脱炭素がEVのみに集約されつつある現状をけん制した。
荒波の中、自動車業界のトップとして「この3年間ぐらいは孤軍奮闘で、結構大変でした」と葛藤があったことも明かした。
昨年トヨタ社長や日本自動車工業会の会長を退任。「ようやく普通のクルマ好きおじさんに戻ることができた」と身軽になった豊田会長は、どんな矢を放つのか。