中村勘九郎&七之助、父・勘三郎さんの13回忌追善で全国巡業「2024年は“追善期間”」
歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助兄弟が11日、都内で行われた十八世中村勘三郎十三回忌追善『陽春歌舞伎特別公演2024』『春暁歌舞伎特別公演2024』の合同取材会に出席した。
父が「あれはできねぇ」と語った雪達磨に勘九郎が挑戦
歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助兄弟が11日、都内で行われた十八世中村勘三郎十三回忌追善『陽春歌舞伎特別公演2024』『春暁歌舞伎特別公演2024』の合同取材会に出席した。
同公演は、中村屋一門が2005年から毎年行っている全国巡業。東京の歌舞伎座まで歌舞伎を見に行くことができない地方の人々のために始まった公演で、時期によって「陽春」「春暁」「新緑」「錦秋」などと銘打ち、毎年欠かさず行ってきた。20年は新型コロナウイルスの影響でやむなく中止となったが、22年には全国47都道府県すべての都道府県での開催を達成。今年で20年目を迎える。また、今年は12年に亡くなった父・十八世中村勘三郎さんの十三回忌追善興行として行われる。
陽春では『鶴亀』『舞鶴雪月花(ぶがくせつげっか)』を全国6か所で(3月26日~4月1日)、春暁では『若鶴彩競廓景色(わかづるいろどりきそうさとげしき)』『舞鶴五條橋(ぶがくごじょうばし)』を全国15か所(4月4日~24日)で上演する。春暁では、現在も使われている7か所の芝居小屋もまわる。
勘九郎は、「この特別公演もおかげさまで20回目を迎えることになりました。20回目の公演で、父の十三回忌追善を兼ねてやらせていただいます」とあいさつ。「13っていう数字を聞いた時は、『もう13年……、いや、まだ13年』といろんな気持ちがありました。父の思い、父が愛した歌舞伎、芸というものをつないで、全国の皆さまに楽しんでいただける公演にしたい」と意気込んだ。
七之助も、「2月の歌舞伎座の追善に引き続き、3月、4月と記念すべき20回目の巡業と合わせて十三回忌追善をやらせていただきます。襲名(披露公演)では何か月も全国の都市をまわりますが、追善ではあまりまわることないので、2024年は10月まで“追善期間”。1年を通して父の追善をできるのは役者冥利に尽きます」と感謝した。
両公演の『舞鶴雪月花』と『舞鶴五條橋』の「舞鶴」は、祖父・十七中村世勘三郎の俳名で、両演目ともに十七世勘三郎の求めに応じて作られた新作舞踊。『舞鶴雪月花』は一幕の中で季節の移ろいを表しており、桜の精や松虫、雪達磨が登場する。『舞鶴五條橋』は、五條橋での牛若丸(源義経)と弁慶の出会いに、常盤御前と牛若丸の親子の物語を取り入れた作品。
勘九郎は「今回は父の追善ということで、中村屋にゆかりのある踊りを選びました。その中でも『舞鶴』のついた踊りというのは祖父のために作られたもの。曲は杵屋六左衛門先生が、振付は藤間勘祖先生がお作りになって、どれもこれも素晴らしいものだらけ」と説明し、「とても人間味、情にあふれた踊りなので、中村屋らしい踊りなんだなと改めて思います」と語った。
七之助は、「雪月花はとてもきれいで、様式美も高い。桜が春、松虫が秋、雪達磨が冬。一幕を通して季節の移ろいを描いていて、視覚的にもきれいです。雪達磨はユニークな踊りで、いろんな舞踊の面白さが詰まった、見応えのある作品です。五條橋は、すごく有名な五條橋の踊りがベースです。その前に『母親の常盤御前と牛若丸の別れ』と、その後の『弁慶との出会い』を描いているのが、普段の五條橋と違うところ。親子の愛や憂い、その後の弁慶との出会いの立ち回りのすごさを、両方味わえます」と魅力を語った。
勘九郎は、雪月花で祖父と父が演じた雪達磨を初役で演じる。白塗りの顔に太く黒い眉や目、口を大きく描いたインパクトのある見た目が特徴。祖父や父の雪達磨から参考にした点を聞かれた勘九郎は、「父もこの雪達磨は1回しかやっていないんです。やらなかった理由は、(祖父の雪達磨姿を見て)『あれはできねぇ』って(笑)」と明かし、「でも、すごくチャーミングでかわいらしい。そういうところを、少しでもいい方向に作っていけたらいいなと。歌舞伎は『当て振り』といって、歌に合わせて振りにして踊るのがメインなので、言ってみればパントマイム。その表現方法をうまくできたらいいなと思います」と語った。