TBS上村彩子アナ、東京五輪延期で落胆も励まされた選手たちの姿勢「プラスに考えている」

リモートインタビューの可能性を実感「距離や時間の壁を越えることもできた」

――リモートでのインタビューはどうでしたか

上村アナ「取材をする側としてはやりづらいという人も多かったですが、私は結構やりやすかったです。インタビューを録る時って、現場にはインタビュアーの他に、ディレクターもいて、カメラマン、音声、それにマネージャーや関係者などたくさんの方がいるんです。すると、どこかで選手は緊張するというか、壁を作ってしまっていると思うんですよね。自宅でパソコンに向かってだと、いつもより選手がリラックスした空間で話しやすいのかなというのを感じました」

――リモートインタビューは、これからスタンダードになってくるのでしょうか

上村アナ「なると思います。この時期にもたくさんの選手が生出演してくださいました。バレーボールの石川祐希選手や、Bリーグの富樫勇樹選手、NBA下部リーグに所属している馬場雄大選手。「SUPER SOCCER」も担当しているのですが、「SUPER SOCCER」でもヨーロッパでプレーしている選手に何人もリモートで出演していただきました。普段だったらシーズン真っ只中ですし、距離や時間の問題もあって選手がスタジオで生出演する機会はなかなかありませんでしたが、リモート出演という環境が整ったからこそ、その距離や時間の壁を越えることもできたと思っています。放送時間も遅いですし、普段なら出演が難しくても、みなさん、今見ている人に伝えたいことがあるから出演を引き受けてくれたと思うんです。ありがたかったです」

――自粛期間を経て、スポーツへの向き合い方に変化はありましたか

上村アナ「伝えるということのベクトルについて考えるようになりました。今までは『勇気を与えられるプレーをしたい』とか、『感謝を伝えられるプレーをしたい』という風に、選手がファンに向けてプレーしている姿をメディアの私たちが間に入って、つまり、選手からファンへのベクトルをより大きく広げる感覚でやっていました。ですが、無観客試合の取材を通して、スポーツはファンが選手のパワーになるという側面があることを今までよりも強く感じるようになりました。選手から観客へのベクトルで伝えることばかりを気にしていましたが、私たちの仕事は一方通行ではなくて双方向の橋渡しを担っている職業なんだと意識するようになりました」

――学生時代はビールの売り子をされていたと伺ったのですが、売り子と言えばスタジアムの熱気を感じる仕事。無観客試合だとスタジアムの熱気が恋しくなってきますよね

上村アナ「なりますね。ビールを売る時ってグラウンドに背を向けてお客さんたちを見ているんですよ。だから、いいプレーや、ホームラン性の当たりとかが観客のリアクションでわかったんです。今はそれがないだけで、同じプレーでも見え方が随分違いますよね。アルバイトをしていた時には『ボールに声援が乗っているな』と感じるときがあって、それに後押しされて、スタンドに届いたんじゃないかなと思えることもありました。声援ってこんなにも大事なものだったんだなと実感しましたね」

――プロスポーツも徐々に始まります。直接現場にいけるのはわくわくしますね

上村アナ「そうですね。この間に選手からの発信も増えていました。パラ競泳の一ノ瀬メイ選手にリモートインタビューをしたのですが、『トレーニングや、自己メンタルのこと、食事の面。自分たちが当たり前のように持っている知識は、今自粛しないといけない人たちにとって必要な知識。ちょっとでもできることをと思ってSNSで発信している』と話していました。確かに、その知識は全部、今必要なもので。アスリートたちの情報を直接受け取れるとてもいい機会になったなと思うんです。家で選手のみなさんのSNSなどに目を通すのは、それはそれで楽しかったのですが、実際の試合や競技がない毎日が続くとやはり寂しいです。現場に行けるようになるのは自分の中でもより張り合いが出てくると思いますし、楽しみです」

◆上村彩子(かみむらさえこ) 千葉県出身。1992年10月4日生まれ。専大松戸高校卒業後、上智大学に進学。2015年にTBSに入社。現在は「S☆1」(土曜深夜0時30分、日曜深夜0時)、「SUPER SOCCER」(日曜深夜0時50分)を担当中。

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