主人公のクズっぷりが気になるグルメ漫画たち 「食べ方が汚くて不快」と賛否分かれる

グルメ漫画の代表格と言えば、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載されている『美味しんぼ』(原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ)を思い浮かべる人が多いだろう。食を通じて新聞記者である主人公・山岡士郎と、彼の父親で銀座の料亭「美食倶楽部」を主宰する海原雄山との確執が描かれた作品だ。本来の「食」とは何だろうかと考えさせられる一方で、山岡のクズっぷりも注目される。本記事では、グルメ漫画に登場する料理を台無しにしかねない“クズ要素”を持つ主人公を3人を紹介しよう。

美味しんぼ(作:雁屋哲 画:花咲アキラ/小学館)
美味しんぼ(作:雁屋哲 画:花咲アキラ/小学館)

食欲をストレートに表現できるキャラたち

 グルメ漫画の代表格と言えば、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載されている『美味しんぼ』(原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ)を思い浮かべる人が多いだろう。食を通じて新聞記者である主人公・山岡士郎と、彼の父親で銀座の料亭「美食倶楽部」を主宰する海原雄山との確執が描かれた作品だ。本来の「食」とは何だろうかと考えさせられる一方で、山岡のクズっぷりも注目される。本記事では、グルメ漫画に登場する料理を台無しにしかねない“クズ要素”を持つ主人公を3人を紹介しよう。

『美味しんぼ』の主人公・山岡士郎は、東西新聞社の文化部に勤める記者。コミックス1巻「豆腐と水」で初登場した際には、前日に飲みすぎて会社に泊まる姿が描かれている。のちに妻となる新入社員・栗田ゆう子は彼の姿を見て、無神経でぐうたらな先輩がいるとあきれてしまう。

 ほかにも山岡には、社会人としてはあるまじき行為が多々見られる。コミックス2巻「手間の価値」では食事にいった中華料理店で、接客の態度や料理に対する不誠実さを感じ、店主にけんかを仕掛ける。コミックス12巻「暑中の味」では、勤めている東西新聞社が株の買占めにあい、社主の大原がダウンしてしまう。東西新聞社を守るため、文化部では会議が設けられるも、山岡はひとり居眠りをする姿を見せた。

 そんな山岡も、料理を通じて知り合った人たちとの交流を深め、ゆう子と結婚する。双子が生まれたのち、父親であり宿敵でもある海原雄山とも和解した。もし、料理がなければ、山岡は、ただのクズサラリーマンだったかもしれない。そう考えると、山岡は料理のおかげで一人前になれたといえるだろう。

『美味しんぼ』以外にもクズキャラが主人公の漫画がある。2016年より連載が始まった『月刊コミックゼノン』(コアミックス)で連載スタートした『めしぬま。』(作:あみだむく)の主人公・飯沼(いいぬま)だ。彼はさえないサラリーマンで、普段から食べることばかりを考えているせいか、仕事に身が入らないというキャラクター。

 飯沼の場合は、性格は真面目でクズ要素はないが、食べ方に問題があるようだ。料理を目にすると欲望を解放して、時にはよだれを垂らしながら大口を開けて夢中で食べてしまう。この食事描写が読者を惹きつける魅力ではあるが、SNSでは「好きだけど食べっぷりが汚い」「食べ方が汚くて不快だけどつい見ちゃう」との声が見られる。一方、「飯沼くんの食べてる表情が好き」「ご飯の描かれ方と主人公の食べ方が最高」との声もあり、ファンの間でも賛否が分かれている作品だ。

 また『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で1994年に連載スタートした『酒のほそ道』(作:ラズウェル細木)に登場する営業担当のサラリーマンである主人公・岩間宗達もネット上ではクズと呼ばれることが多い。作中では友人や同僚から食事に誘われても、出てくる料理などに文句を言い続け呆れられてしまうシーンが散見される。たとえ誘ってくれた相手が、友達以上恋人未満の気になる女性であっても容赦なく文句を言い続けるのだ。

 コミックス3巻「宗達流サイクリング」では、サイクリングをしながら12時間で10軒のお店を巡って酒を飲むなど、酒への尋常ではない執着もクズと呼ばれる理由のひとつだろう。

 SNS上では「酒が飲めない後輩に飲酒強要する話が好き」「主人公・岩間宗達のクズ具合が本当に面白い」とファンからは熱烈な支持を得ている。

 グルメ漫画の主人公がクズであるのは、もしかしたら本当の主人公は料理やお酒であり、人間はあくまでもそれを引き立たせる存在でしかないからなのかもしれない。そう考えると、彼らのクズっぷりも納得できるだろう。

次のページへ (2/2) 【写真】『美味しんぼ』山岡士郎&のちの妻・栗田ゆう子の初々しい2ショット
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