JAL機の全員生還、元CAの識者「ものすごい功績」 世界から称賛のメッセージ「日本航空の訓練のたまもの」

日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、JALの客室乗務員(CA)の仕事ぶりに称賛の声が相次いでいる。機内がパニック状態となり、自らにも命の危機が迫る中、冷静な対応で乗客367人全員を18分で脱出させた。元CAの識者は「犠牲者を1人も出さなかったというのは、ものすごい功績」と驚きを込め、今回CAが取った行動が航空業界にとって今後の大きな模範になるとの見方を示した。

日本航空の客室乗務員の冷静な対応が光った(写真はイメージ)【写真:写真AC】
日本航空の客室乗務員の冷静な対応が光った(写真はイメージ)【写真:写真AC】

操縦席からのコールボタンは何を意味したのか

 日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、JALの客室乗務員(CA)の仕事ぶりに称賛の声が相次いでいる。機内がパニック状態となり、自らにも命の危機が迫る中、冷静な対応で乗客367人全員を18分で脱出させた。元CAの識者は「犠牲者を1人も出さなかったというのは、ものすごい功績」と驚きを込め、今回CAが取った行動が航空業界にとって今後の大きな模範になるとの見方を示した。

「事故の映像を見ていたんですけど、最初は相当数が犠牲になると思っていたんですね。だけど、全員助かったというニュースを聞いて、安堵(あんど)とともに、普段の訓練のたまものだと思いました。CAって、みんなすごく憧れとか、制服がかっこいいとかっていう人たちもいると思うんですけど、そうではなくて、セキュリティーの部分が重要。JALの訓練は相当きっちりしているなと感じました」

 こう話したのは、元外資系CAで「航空安全とCAの使命」と題した講演を全国で行っている小澤朝子さんだ。

 乗客が機内で撮影した動画を見て、小澤さんが挙げたポイントがある。

「よく機内でコールボタンと言って、コックピットから鳴る音があります。あれが1回だと何、2回だと何という合図があるんです。動画を見ていると、音が3回鳴っていました。3回というのは、コックピットからの緊急の知らせを意味しています。もちろん乗客には分からないことですけれども、CAからすると、これは緊急のサインであるということが、機長と交信ができなくても音だけで分かります」

 3回というのは、上空で乱気流を通過するときにも使われる合図だという。今回の事故では衝突後、操縦席から機内への連絡はほぼ途絶えていたことが分かっている。

 乗客の安全な脱出は、CAの判断に委ねられる状況だった。

「何回かにわたって音が繰り返し繰り返し鳴っていたので、操縦室からも連絡をしたかった、コンタクトを取りたかったけれども取れなかったという状況だったと思います。でも、その音でJALのCAは、『これは緊急に間違いない』と判断して、目視で炎を確認し、安全なドアだけを選んで開けた。訓練は何回もやりますけど、 普通はこういうことを(実務で)経験しない。実際に起きたとき、あれだけ冷静にやったということは、本当に素晴らしい。同じようなことが、例えば(1996年6月に福岡空港で起きた)ガルーダ・インドネシア航空で昔あったと思うんですよ。あのときは、CAが荷物を持って先に出ていってしまった。犠牲者も出ました。最後まで乗客を誘導し、そして最後に機長が全員、脱出したかどうかを確認してから客室乗務員と一緒に降りたということを聞いて、やはりJALはオーガナイズされている、危機管理に関しての訓練をきちっとしているんだなと思いました」と、続けた。

海外から称賛相次ぐ 「日本人として誇りに思います」

 小澤さんによると、安全面の教育はどのCAも、同じ内容の訓練を受ける。

「安全面ということに関しては、どこの会社も同じです。サービス面では日本の会社はおもてなしという部分では厳しいとは思いますけれども、 安全という側面で考えたら、特にIATA(国際航空運送協会)に加盟している会社は全て同じマニュアルでやります」

 一方で、緊急時の対応は機種によって異なるという。

「飛行機の機種によって操作が違います。衝突した飛行機はエアバスA350で、JALが今主力としている大型機です。エアバスの場合は、(ボーイングなどと比べ)ドアの開け方も違いますし、これから(エアバス本社のあるフランスの)トゥールーズから日本に入ってくるというときに、ちゃんと訓練ができているか不安もあったんですけど、JALはきちっと何か月にわたって訓練をしていたということが、これで証明されたなっていうふうには思いました」

 事故後、小澤さんのもとには、世界中のエアライン関係者からJALの対応をたたえるメッセージが寄せられた。「JALのアクシデントがあったけれども、全員が助かったのは称賛すべきことです」「これはもう、日本航空の訓練のたまものです」という声や、「やっぱり日本人はセーフティーに関しては素晴らしいものを持っている」という反応もあった。

 それだけ、世界が重大事故と認識している証左だった。

「私は日本航空の社員ではないですけど、日本人として褒められる。犠牲者を1人も出さなかったというのは、ものすごい功績だと思います」と、目を細めた。

 乗客全員が生還を果たしたことは、海外メディアも「奇跡」と報じている。その中で、CAが大きな役割を果たしていた。

「これはずっと後世に語り継がれていくと思います。機内のパニックコントロールもそうですし、大きな声を張り上げて乗客を落ち着かせたというのもあります。いろんな面で、CAの力が大きかったなと思いますね。世界中の人から称賛される理由が分かりますし、日本人として誇りに思います」と、小澤さんは結んだ。

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