PRIDEでも輝いたアレクサンダー大塚の今、52歳でも貪欲「もっとファイトしたい」

「リアル1・2の三四郎」アレクサンダー大塚といえば、PRIDE.4(1998年10月)で「ヒクソン・グレイシーが対戦を避け続けた男」「路上の王」と恐れられたマルコ・ファスを下した男。高田延彦がヒクソンへのリベンジに失敗したこの大会で獲得した金星は、今でも光り輝いている。

浅草の街が似合うアレクサンダー大塚【写真:柴田惣一】
浅草の街が似合うアレクサンダー大塚【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新、柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.177】

「リアル1・2の三四郎」アレクサンダー大塚といえば、PRIDE.4(1998年10月)で「ヒクソン・グレイシーが対戦を避け続けた男」「路上の王」と恐れられたマルコ・ファスを下した男。高田延彦がヒクソンへのリベンジに失敗したこの大会で獲得した金星は、今でも光り輝いている。

 そのアレクが2024年1月15日、東京・浅草花劇場で「浅草三人祭 Total 110th Anniversary~いと~」を開催する。実は3年前、デビュー25周年記念大会の開催をコロナ禍で見送っており「モヤモヤが消えず、何かやりたくて」と「浅草三人祭」を企画したという。

 アレクサンダー大塚として28年、別人格のふんどしキャラ・男盛として18年、そしてお世話になっている浅草の町中華「末ッ子」の創業64年。三つ合わせて110年とあって「浅草三人祭」というわけだ。

「区切りとしては中途半端かもしれないけど、トータル110周年! 盛り上げていく」とにっこり。プロレスとお笑いを一度に楽しめる大会をプロデュースである。

 メインイベントはアレク、間下隼人、三州ツバ吉組とスーパー・タイガー、山本SAN、浦野裕太組の対戦。格闘家のそして格闘スタイルのアレクが披露されそうだ。

 第3試合には男盛がリッキー・フジと組み、黒潮TOKYOジャパン、立花誠吾組と激突する。こちらでは、黒潮のジャケットプレーに負けないふんどしプレーが披露される。

 他にもよしえつねお、アマレス兄弟が登場するなど、浅草に相応しい明るくにぎやかなラインアップとなっている。

「苦しい経験もあったし、様々なことがあった。25周年は過ぎてしまったけど、自分の足跡を振り返りながら、お世話になった皆さんに感謝の気持ちを伝えたい」と神妙だ。

 1995年に藤原組でデビューしたアレク。バトラーツ時代の98年から格闘技イベントにも参戦。PRIDE.4でのファス戦の勝利はとてつもなく大きかったが一番の思い出は「佐山(聡=初代タイガーマスク)さんとの初めてのシングルマッチ」と振り返る。99年から参戦したUFOで、マスクを脱ぎ捨てた佐山に勝利した一戦を「忘れられない」と今でも興奮を抑えきれない。

 プロレスラーとして格闘技イベントで存在感を示していたが、PRIDEに専念する時期もあった。所属団体がゴタゴタし「自由な闘いをしながら、実は不自由なことが多かった」時に誕生したのが、男盛だった。

 みちのくプロレスのリングで誕生したふんどしキャラ。今では様々なマットでも活躍している。2013年のメキシコ「ドラゴンマニア」ではアレナ・メヒコを大熱狂させた。「あの時の会場中に鳴り響いた歓声とブーイング、今でも耳に残っている」と嬉しそうだ。

 実はもう一つの顔「盛林(もりりん)」もあるという。「オファーがあれば、いつでもOK」と、またまた笑みがこぼれた。

 アレクといえば、入場テーマも名曲だと人気が高い。「♪さぁ~て、そろそろ青コーナーから~♪」で一気に盛り上がる。

スマイル全開のアレクサンダー大塚【写真:柴田惣一】
スマイル全開のアレクサンダー大塚【写真:柴田惣一】

赤コーナーから登場し、「何だ、赤じゃねーか!」とヤジられた過去も

 以前に某団体に参戦した時。テーマ曲が流れ会場の雰囲気が最高潮になったが、アレクが出て来たのは赤コーナーだった。「何だ、赤じゃねーか!」とヤジられた。「はい、そんなこともありましたね」と苦笑い。

 この曲はいつも胸の中にあるという。今ではその定義が曖昧になっている団体もあるが、元々は挑戦者や後輩、格下等が入場するのが青コーナー。「いくつになってもキャリアを積んでも、いつでも挑戦者の気持ちを持ち続けたい。心は常に青コーナーです」と力説。大切にしている曲だという。

 ぶ厚い体を維持しコンデションも上々。「もっとファイトしたい」と太い腕を撫す。格闘技イベントで活躍した知名度はまだまだ健在。ある時、都内繁華街を大型で実力のあるレスラーと一緒に歩いていたアレク。プロレスファンに興奮気味に声をかけられた。

「わ~! こんなところでお会いできるなんて。一緒に写真を撮って下さい!」

 アレクはにこやかに応じた後「こちらは○○選手ですよ」とソフトな口調で写真撮影を促した。ファンは知らないのか、興味がないのかはわからなかったが、アレクに言われ、せっかくだからという感じでもう一枚撮った。普通はそのままやり過ごすところだが、その選手の顔も立てるというアレクの細やかな心配りに感心した。

 ゴツゴツした厳しいファイトを得意としているかと思えば、男盛のコミカルなファイトも自在にこなす。本当に幅が広い。

 そしてリング外では、いつ何時でも穏やかで優しい。「人間は一生、勉強です。知らないことを学ぶ。知識が広がるのは楽しいし嬉しい」史跡を訪れ、歴史の研究をするなど自分磨きも欠かさない。

 24年はもっと会場で「♪青コーナーから~♪」を聞きたい。

次のページへ (2/2) 【写真】スカイツリーを背中にアピールするアレクサンダー大塚
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