「ゴミ屋敷は誰にでも起こりうる」 掃除のプロが絶句した今年最悪の汚部屋 「周りにばれないようにしてほしい」のワケ

今年も残りあとわずか。たまった1年の汚れを落とすため、大掃除をしている家庭も多いだろう。手間がかかるあまり、敬遠されがちな大掃除だが、「ゴミ屋敷は誰にでも起こりうる」と警鐘を鳴らすのは、不用品回収ゼロの永留統道代表だ。掃除をさぼるとどうなるのか。食事中の人は閲覧注意。2023年に目撃した恐ろしい現場を語ってもらった。

今年も大掃除の時期がやってきた(写真はイメージ)【写真:写真AC】
今年も大掃除の時期がやってきた(写真はイメージ)【写真:写真AC】

40代女性の部屋が阿鼻叫喚 急きょゴミ収集車が出動

 今年も残りあとわずか。たまった1年の汚れを落とすため、大掃除をしている家庭も多いだろう。手間がかかるあまり、敬遠されがちな大掃除だが、「ゴミ屋敷は誰にでも起こりうる」と警鐘を鳴らすのは、不用品回収ゼロの永留統道代表だ。掃除をさぼるとどうなるのか。食事中の人は閲覧注意。2023年に目撃した恐ろしい現場を語ってもらった。

 6年前から関西でゴミ屋敷や孤独死宅の清掃を請け負っている永留さん。清掃・ハウスクリーニングを行った現場は年間100軒に上るが、今年も忘れられない強烈な現場があった。

「最初はゴミ屋敷とは聞いていませんでした。電話を受けたら、『荷物を回収してほしいです』と依頼されたので、1人で行かせていただくと、入り口のドアを開けた瞬間に強烈な臭い。しかも、エアコンがついていなかったんですね。扇風機で温風と一緒にゴキブリの臭いとかバーッと出てきて、鼻を突き抜けた感じでした」

 大阪市内のマンションで、40代とおぼしき中年女性が暮らしていたのは、文字通りのゴミ屋敷だった。

「入り口の周辺は膝ぐらいのところだったんですけれども、奥の方はもう自分の身長ぐらいあったので、170センチほどゴミが積み上がっていました」

 間取りは2K。掃除を頼まれたのは、奥の1部屋を除くすべてだった。ゴミを外に出し、破棄する作業を任された。

「もちろん、足の踏み場もなく、奥にも進めない状況ではあったのですが、依頼の内容がゴミを片付けてほしいということでした」

 しかも、「周りにばれないようにしてほしい」との条件がつけられた。集合住宅であの部屋はゴミ屋敷だと分かれば、どんな目に遭うか分からない。とても1人で片付けられる量ではなかった。永留さんはスタッフ数人を呼び寄せ、1日がかりで清掃にあたった。

 洗面台や風呂場は髪の毛が詰まり、黒ずんでいる。トイレは使い終えたトイレットペーパーの芯が山積みになって、便器の周囲を覆っていた。

 最も戦慄したのは冷蔵庫の周辺だった。

「冷蔵庫を動かしたときが一番やばかったです。最初にドアに開けたときのゴキブリの臭いが予想的中しまして、キッチンの床と壁にびっしりついていました。最初はちょこちょこ踏みつぶされたゴキブリがいたんですけど、死骸を合わせたら、おそらく500匹ぐらいいたと思います」

 マスクをせずに作業を始めるなどこの手の現場には慣れている永留さんだが、さすがに面食らった。

「お客様の前ではもちろん真摯(しんし)に対応させていただいているんですけど、僕も別に得意ではないので、急きょゴキジェットを買ってきて全部ちりとりに入れました。確かに、なんかいっぱい上にいるなと思っていたんです。本当すごかったですね。雑誌類を除けば、ゴミは食べ物関係やワイン関係、お酒関係だったので、ゴキブリの大好物がそろっているような感じの場所ではありました」

 そんな劣悪な環境の中で、ゴミを一つ一つ運び出した。

「半透明の袋に入れたり、ダンボールで物を見えないように梱包して出していく形だったんですけど、荷物の量が多すぎてトラックに入らない。1台や2台では入らない状況だったので、大阪市のパッカー車(ゴミ収集車)と提携させていただいているので、急きょパッカー車も呼んでという対応を取りました」

 悪臭が服について取れないこともあり、コンビニで売っている簡易的なレインコートをはおって作業したスタッフも。代金は女性の要望をすべてかなえた結果、50万円だったというが、決して高くはないだろう。

 永留さんによると、ゴミ屋敷の特徴には、ある共通点がある。

「ゴミ屋敷の方は90%以上はゴミ箱がないですね。一応最後にアドバイスはするので、『分かりました』とそのときは返事はしてくれるんですけど、結局皆さん、汚れがひどいので自炊とかできない状況じゃないですか。コンビニで1食分の食べ物、お茶を買って、食べたらその袋にくるんで、それをそのまま(床などに)捨てるという感覚でやっている。面倒くさくなってどんどんどんどんゴミがたまっていっている印象です」

プロが伝授する効果的な清掃方法とは?

 このようなゴミ屋敷は近年は空き家の増加もあって、社会問題化している。「私は掃除もしているし、大丈夫」と思っていても、当事者になる可能性は誰にでもあると、永留さんは指摘する。

「やっぱり話を聞くと、家は昔はきれいだったとか、こんなことになるとは思っていなかったという声が多いですね。ということは、誰にでも起こりうることだと思います。恋人の別れであったりだとか、仕事が忙しくなったストレスであったりだとか、それで物欲が増えてお金を使うところが(衛生面ではなく)そっちに回ってっていうのは、住民さんの声としてはありますね」

 ゴミ屋敷の依頼が増えるのは夏ごろが多いという。腐敗物から異臭が立ち上り、ゴミの中で生活している住民もさすがに耐えられなくなってくるようだ。

 普段から丁寧に掃除している人や、また大掃除でまとめてきれいにしようと思っている人に対し、永留さんが助言するのは、継続の必要性だ。

「定期的に日課作業と週課作業を決めてやることが重要です。例えば、食べたものはその日のうちに片づけましょう。排水溝の掃除は週に1回やりましょうということでもいいと思います。共働きの方だったら、旦那さんか奥さんか担当を決めてもいい。風呂場の排水溝を放置しておくと黒カビが出てしまったり、ピンクカビと呼ばれるピンク菌が出てしまう。定期的に掃除しないといけないですね」

 家庭での汚れは大きく分けて、アルカリ性と酸性の2種類と説明。「基本的にアルカリ性の汚れには酸性の洗剤、酸性の汚れに対してはアルカリ洗剤を使う形になります。家庭で使う洗剤としては重曹、炭酸ソーダ、クエン酸の3つがあれば問題ないです」

 大掃除は新年を気持ちよく迎えるための大切な準備。空き時間を見つけて、しっかりと取り組みたい。

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