コロナ禍で“強さの象徴”になった林下詩美、戻ってきた観客に伝えたい思い「私はプロレスでしか表現できない」

11.28後楽園ホール大会で2か月ぶりに復帰、4日後の12.2愛知・ドルフィンズアリーナ大会ではタッグチーム「AphroditE(アフロディーテ)」のパートナーである上谷沙弥とともに、見事ゴッデス・オブ・スターダム王座を3年ぶりに獲得した林下詩美。2023年はベルトに縁がなかったが、ここに来て一気に巻き返しを図っている。林下はコロナ禍の20年11月からの1年強の間、スターダムの最強の証であるワールド・オブ・スターダム王座を9回防衛した「強さの象徴」でもあった。その林下に、声援が戻って来た会場で試合をする思いを聴いた。

“スターダムの逸材”は迫力満点【写真:橋場了吾】
“スターダムの逸材”は迫力満点【写真:橋場了吾】

今ベルトを持ったらもっとお客さんから力をもらえる

 11.28後楽園ホール大会で2か月ぶりに復帰、4日後の12.2愛知・ドルフィンズアリーナ大会ではタッグチーム「AphroditE(アフロディーテ)」のパートナーである上谷沙弥とともに、見事ゴッデス・オブ・スターダム王座を3年ぶりに獲得した林下詩美。2023年はベルトに縁がなかったが、ここに来て一気に巻き返しを図っている。林下はコロナ禍の20年11月からの1年強の間、スターダムの最強の証であるワールド・オブ・スターダム王座を9回防衛した「強さの象徴」でもあった。その林下に、声援が戻って来た会場で試合をする思いを聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 林下は頸椎ヘルニアを発症し、2か月の欠場を経験した。場所が場所だけに、復帰に際し恐怖感はなかったのか。

「もちろん、体がついていけるのか、また怪我をしてしまうのではという不安はありました。首は再発する可能性がゼロではないのですが、それ以上に『早くプロレスラー・林下詩美に戻りたい』という気持ちが強かったですね。特に私は昔からプロレスファンで、プロレスラーはなりたいと思ってもなれないスーパーヒーローのような存在だったんです。その存在にやっとなれたので、そんな簡単にはやめられない……そう思わせる魅力が、プロレスにはありますね」

 12.2では相手の誤爆のスキをつき、ジャーマン・スープレックス・ホールドでメーガン・ベーン(パートナーは舞華)をフォールしゴッデス王座決定戦を制した林下。2021年12月にワールド王座を失って以降、実に2年間もベルトから遠ざかっていた。コロナ禍で声援がなく拍手だけの中、ワールド王座を1年以上に渡り防衛していた彼女にとって、今の声援が戻った会場はどう見えているのか。

「私が(ワールドの)チャンピオンのときは、今ほどお客さんも多くなかったですし静かな環境でしたが、その中で自分で言うのもなんですが、いい試合をしてスターダムを引っ張ってきたという自負はありましたね。特に岩谷麻優(2011年にスターダムでデビューし“スターダムのアイコン”と呼ばれる)から獲ったベルトなので、それに恥じない防衛ロードを歩もうと頑張っていました。今私がベルトを持って戦っていたら、お客さんの声援も全然違うので、当時よりももっと力をもらえるんだろうなと思います。ここ最近ベルトを持って防衛戦ができる選手に対して、羨ましいという思いはありますね」

 とはいえ、11.28後楽園ホール大会で林下が会場に登場したときの湧きようといったらなかった。

「本当にありがたいことですね。プロレスラー林下詩美は、ベルトをなかなか獲れなくても、ユニットメンバーにも見放されそうになっても(笑)、ファンの方々には『林下詩美は強い』『林下詩美は凄い』と思ってくれていることは嬉しいです。『林下詩美はダメだな』とならないのは、ベルトを持っていたときに頑張っていたことが伝わっていたのかなと思いますね」

パワー全開で赤いベルトを再び巻く日はいつか【写真提供:スターダム】
パワー全開で赤いベルトを再び巻く日はいつか【写真提供:スターダム】

赤いベルトが一番似合うのは林下詩美だ

 昨今の女子プロレスラーは、意外に細身の選手が多い。その点、林下はプロレスラーらしいがっちりした体つきをしている。

「そうなんですよ、スターダムも細い選手はいます。私は柔道もやっていましたしパワーファイターなので、特に下半身のトレーニングには力を入れています。やはり『見た目からプロレスラー』というのは目指しているところで、私はプロレスでしか表現できないですし、もっとわかりやすいパワーファイターになるための努力はしていますね。お客さんにも『この選手は力が強いんだな』と思ってもらいたいですし」

 ここ最近スターダムのリングには、IWGP女子王座(現王者は岩谷麻優)とSTRONG女子王座(現王者はジュリア)が誕生した。ともに新日本プロレスが管理している王座ではあるが、日本人選手ではスターダムの所属選手だけが戴冠・挑戦している。「強さの象徴」ともいえる林下に、この状況について聴いてみた。

「私は……やっぱり赤(ワールド王座)を巻きたいです。ベルトが増えるとどれが一番凄いんだ、という話になると思うんですが、私としては赤いベルトが一番です。スターダムの最強のベルトは、赤いベルトであるべきだとも思いますし、IWGPやSTRONGは”特別枠”のようなベルトで、赤いベルトと比較するものでもないかなと」

 最後に「赤いベルトは詩美さんに似合いますよ」と言うと……。

「私もそう思います(笑)。『王者』『強い人』というのがパッと見てわかるのが赤いベルトだと思うので、一番似合うのは私だと思います……!」

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